J-MONEYカンファレンス「2025年の市場変動と新時代のポートフォリオとは?」 【パネルディスカッション】リスク分担型に移行した日立建機企業年金基金の哲学と行動投資機会を柔軟に取り込む体制が重要~ボラティリティ拡大期における資産運用を考える
J-MONEYカンファレンス「2025年の市場変動と新時代のポートフォリオとは?」(主催:J-MONEY)が2025年1月23日、東京・日本橋のベルサール東京日本橋で開催された。当日のパネルディスカッションでは、「ボラティリティ拡大期における資産運用」をテーマに、日立建機企業年金基金の佐々木良二常務理事、マーサージャパンの五藤智也取締役、そしてJ-MONEY論説委員の阿部圭介氏が熱い議論を交わした。その内容をダイジェストでお伝えする。

【パネリスト】
日立建機企業年金基金
常務理事
佐々木 良二氏

【パネリスト】
マーサージャパン
取締役 ウェルスビジネス代表
五藤 智也氏

【コーディネーター】
J-MONEY 論説委員
(朝日新聞企業年金基金・前常務理事)
阿部 圭介氏
DC移行も広がる中、なぜ「リスク分担型」?
阿部 米国でトランプ新大統領が就任した。関税の強化や戦争の終結などを唱えて、世界経済の変動要素が大きくなる見通しだ。そういった中で、企業年金はどういう対応をしていけばいいのか。本日のパネルディスカッションでは、そこを大きなテーマに見据えながら、個別の企業年金の具体的な投資哲学や対応を、ベテランのコンサルタントと一緒に考察していきたい。
本日お呼びした日立建機企業年金基金は、いわゆる「リスク分担型」に移行した日本ではまだレアケースのDB(確定給付企業年金)だ。制度変更の結果、投資方針にも変化があったという。
今日は次の4つのテーマに区切って議論を進めていきたい。①日本の企業年金がDBからDC(確定拠出型)に移行している状況 ②日立建機の制度変更の背景と実施状況 ③ボラティリティ拡大期における投資のあり方 ④日立建機企業年金基金の投資哲学や具体策――。まず①の状況について、五藤さんからご説明いただきたい。
ジョブ型雇用への変更など、人事面でDC移行が主流に
五藤 2024年3月末時点の日本のDBは約1万1800制度。それに対してDCは約7200規約で、だいぶ近づいている。過去10年で見ると、DBが約2500減った一方、DCは約2850増えており、伸び率にすると65%と急増している。
DBが減ってDCが増えているのは、各企業の母体サイドにおける財務的な理由と人事的な理由の2つがあるようだ。財務面では基金の積立状況が悪化したとき、追加の掛金を払いたくない。つまり財務リスクを削減したいということ。人事面では昨今、メンバーシップ型からジョブ型の雇用形態への移行が増えたり、転職する例が多くなったりして「終身雇用」を前提としてきたDBが、母体にとってアンマッチと受け止められるようになってきた。
かつては財務的な理由がDCへの移行の一番の理由だったが、最近は人事的な理由が主流という印象だ。
「CBP水準低下問題」解消とセット。リスク分担型制度を導入
阿部 それでは日立建機の佐々木さんに、リスク分担型への制度変更の背景や狙い、実施状況などを説明いただく。
佐々木 当基金は2023年度に【図表1】のように1基金2制度体制に変更した。
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