「機関投資家ゼロからの資産運用」第6回は、やや「番外編」的な内容です。これまで5回の連載で、債券の基本的な仕組みを多角的に解説してきました。今回は、日本が「金利のある世界」に戻りつつある中で、改めて注目を集めている日本国債にフォーカスを当てます。低金利が続いた中でも、「日本国債は安定資産だから」と一定割合を保有し続けてきた機関投資家は少なくありません。しかし、その「安定性」を鵜呑みにしていいのか。過去に遡って、ファクトで検証したいと思います。いわば「マーケット温故知新」。ラッセル・インベストメントの金武伸治さんに、歴史をひもときながら解説してもらいます。

大きいヘッジコスト、日本国債の魅力は上昇

これまでの連載で、債券の基礎的な知識について、機関投資家としての「初心者マーク」を取れるところまでは来たと思います。そこで今回は債券マーケットの過去から、現状や今後を洞察する視座を提供したいと考えました。

題材は日本の国債です。為替のリスクはないし、保有者の多くは国内。「安定資産」と一般的にみなされていますが、本当にそうか。「落とし穴」はないのか。元ジャーナリストの端くれとして、今回はあえて「常識」を問い直してみたいと思います。

とは言っても足元、主要な投資先である米国と日本との金利差が大きく開き、それに伴って為替のヘッジコストが拡大しています。機関投資家の目が日本国債に再び向けられるのは自然なのでしょうね。

金武 確かに現状、5%程度まで広がったヘッジコストの高さは、ヘッジ外債の投資魅力度を大きく低下させてしまいました。しかし、この後に予想される利下げ局面では、価格上昇によるキャピタルゲイン獲得のチャンスが生まれることも十分予想されます。

一方、国内金利については直近、10年物長期国債の発行利回りが1%を上回るなど、金利上昇局面に入ってきました。インカムゲイン(利子収入)のチャンスが広がる半面、金利上昇によるキャピタルロス(価格低下)の可能性も予見されるわけです。この点には注意が必要です。

また、市場が何らかのショックに見舞われたときのことを想像してみましょう。金利が相当に高くなっている米国債などは、金利低下の余地イコール債券価格の上昇余地があります。一方で、国内債券は依然として金利低下余地が乏しいわけですから、価格上昇の余地もそれだけ少ないということになります。

「資金運用部ショック」と「VaRショック」

では逆に、何らかのショックで国内金利がこの先に大きく上昇するような可能性はあるのでしょうか。

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