2018年5月に発行された『フィデューシャリー・デューティー・ワークショップ 金融における顧客本位な働き方改革』では、金融機関が顧客本位のサービスをいかにして実現すべきかの道筋を描いている。同書を通じて金融業界に何を伝えたいのか、編著者の1人である地域共創ネットワーク代表取締役の坂本忠弘氏に聞いた。(取材日:2018年6月5日)

坂本 忠弘氏
地域共創ネットワーク
代表取締役
坂本 忠弘

同書では「顧客本位の業務運営」をめぐり、3人の編著者がそれぞれの立場から、金融機関は何をなすべきかを語っている。編著者はHCアセットマネジメント代表取締役社長の森本紀行氏、地域共創ネットワーク代表取締役の坂本忠弘氏と、ライフワークサポート代表取締役の谷崎由美氏。

坂本氏は同書の意図を「脱標準化」と語る。「これまでの金融機関は、規制行政の影響もあってサービスの差別化がなされず、規模の拡大のみで競争してきた。フィデューシャリー・デューティー(FD)は金融機関が古い『標準』から脱却し、顧客に合った最適なサービスを提供することを求めている。今後は各金融機関が、個性を持った独自のサービスで競争するような業界になってほしい」(坂本氏)

同書では金融機関のビジネスのみならず、職員の働き方にも言及していると坂本氏は語る。「金融機関は『販売代理』ではなく『購買代理』の立場であるべきだ。商品ありきの営業ではなく、顧客一人ひとりの人生設計に合わせた金融サービスを提案する。顧客本位のサービスを徹底すれば、必然的にそこで働く役職員も多様性が求められる。その要請に応えるには、役職員に対して自主的、自律的な働き方を推奨するよう、『働き方改革』に踏み込む必要があるのではないか」。

坂本氏は同書の参加型読書会を各地で開催している。FDに対する理解を深めたいという金融機関の担当者は、地域共創ネットワークに問い合わせてほしい。