日本銀行の政策修正は後ずれへ
日本銀行はゼロ回答
日本銀行は2023年12月18、19日に開いた金融政策決定会合で、金融政策の維持を決めた。一部で予想されていたフォワードガイダンス(政策方針)の修正も行わなかった。対外公表分の「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」との記述は、緩和バイアスのフォワードガイダンスである。現状では追加緩和の可能性が小さいことを踏まえると、これは実態に沿っていないように思われる。
しかし、この文言を削除して緩和バイアスをやめると、金融市場はそれをマイナス金利政策解除の強いシグナルと受け止めてしまうだろう。そのため、日本銀行は近い将来、マイナス金利政策解除など本格的な政策修正に動くことを決めた時点、あるいは政策修正と同時にフォワードガイダンスを修正するだろう。
マイナス金利政策解除やそれを示唆するメッセージを日本銀行が送ると期待していた向きにとって、今回の決定会合で、日本銀行は「ゼロ回答」であった。決定会合後の総裁記者会見でも、近い将来のマイナス金利解除を示唆する発言は聞かれなかった。
チャレンジング・ショックは終息
総裁記者会見の中で最も注目されたのは、金融市場が足もとで早期のマイナス金利解除の観測を強めるきっかけとなった、「チャレンジング発言」についての説明だった。総裁が国会で、「チャレンジングな状況が続いている。年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になるとも思っている」と発言したことを、年末あるいは年初に日本銀行はマイナス金利解除に動く考えを示唆した、と金融市場は受け止めた。その解釈は誤りであると筆者は考えていたが、記者会見では植田総裁自身がそうした観測を強く否定した。
植田総裁は、この発言は「仕事の取り組み姿勢一般についての議員の質問への回答であり、2年目も一段と気を引き締めて職務に取り組む意思を示したもの」と説明し、金融政策変更を示唆したものとの市場の解釈を明確に否定したのである。さらにこの質問をした議員に対しては、金融政策について、「粘り強く、金融緩和を継続する」と答えたことを強調している。
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