会員限定
マクロ経済 日銀は「ニューノーマル」に移行できるのか
政策調整に対する市場期待は後退
植田和男総裁就任以来、日銀政策調整に対する市場期待は後退している。これは、好調な経済指標や企業の継続的な値上げとは相反する。期待の後退は、日銀の情報発信がハト派的であることに起因している。
日銀のハト派姿勢は、インフレ上昇は一時的との見方を反映している。日銀は、2022年からインフレ見通しを継続的に上方修正してきたが、2%目標の持続的達成はまだ見込めないとしている。しかし、世界的インフレショックから1年が経過してもインフレ減速の兆しはまだ見えていない。むしろ、インフレは足元加速し、日銀が注目するコア指標は40年来の高水準まで上昇した。日銀のインフレ見通しのさらなる上方修正は不可避だろう。
市場の政策修正期待の形成過程では、日銀が「2%目標の持続的な達成」を認めるかに重きが置かれる傾向がある。これは日銀の情報発信を素直に受け止めるということだろうが、経済・物価は日銀が設定した閾値(しきいち)を超えると何かが急激に変化するといったものではない。日銀は現在、今後3年間の平均インフレ率を約1.8%と見込んでいるが、これは新型コロナウイルスのパンデミック前の平均実績を1%ポイント以上上回る。日銀は、目標達成を認めていなくても、インフレ基調の変化は既に見込んでいる。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。