春闘は約30年ぶりの高い伸び、実質賃金は年度内にプラスへ
2023年6月16日の金融政策決定会合では大方の予想通り金融政策の現状維持が決定された。4月の消費者物価は生鮮食品を除いたベースで前年比プラス3.4%、生鮮食品とエネルギーを除いたベースでもプラス4.1%と歴史的とも言うべき伸び率にあり、なおかつその瞬間風速(両者とも前月比の伸び率はプラス0.5%と直近1年で最大)は加速基調にあるが、日銀は「物価上昇は一時的で、持続的な賃金上昇を伴っていない」との見方から金融緩和の継続が適当であると判断した(図表1)。
実際、植田総裁は「物価は2023年度半ばにかけてはっきり下がっていく見通し」、「金融緩和を続けることは長い目でみると生産性向上に資する」、「金融引き締めに転じると健全な企業にも負担をかける」などと事前に発言していた。また今回の現状維持を正当化した1つの材料として、5月の債券市場サーベイで(債券市場の)機能度判断指数(DI)がマイナス46(4月はマイナス64)に改善していたこともある。
では日銀はいつ緩和修正に着手するだろうか。結論を先取りすると筆者は10~12月期に日銀が現在のYCC(長短金利操作)の修正に踏み切ると予想している。またその予想は賃金データの加速と為替次第で前倒しされる可能性が高まると判断している。
まずは賃金動向から確認してみたい。約30年ぶりの高い伸びで着地した春闘の後、その結果が初めて反映された4月の毎月勤労統計によると、現金給与総額(≒基本給+残業代+賞与)は前年比プラス1.0%となり3月から伸び率が縮小した。このうち基本給に相当する所定内給与はプラス1.1%へと加速したものの、期待していたような鋭角な伸びではなかった。
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