マクロ経済 個人消費は上向くも下振れリスクに要注意
持ち直しの動きが続く個人消費
新型コロナウイルスの感染が一服したことで個人消費が持ち直している。新規感染者数は2022年2月上旬をピークに減少に転じ、3月22日に「まん延防止等重点措置」が全面的に解除されたことで人々の外出行動が回復しているためだ。
人の移動の変化を指数化した「グーグル・コミュニティ・モビリティ・リポート」によると、小売店・娯楽施設への訪問者数のベースラインからの変化率は、2022年1月に大きく落ち込んだが、2月中旬からは徐々にマイナス幅が縮小した。
日本銀行が作成している「消費活動指数」をみると、外出行動に左右されるサービス消費は、2022年2月まで減少した後、外出行動の回復とともに3月には前月比プラスに転じた。4月中旬の人出は回復一服となったものの、4月のサービス消費は回復基調を維持している(図表)。
【図表】小売店・娯楽施設への訪問者数のベースラインからの変化率と実質サービス消費指数の推移
5月のゴールデンウイークは3年ぶりに規制のない連休となったこともあって、観光地を中心に人出はコロナ前を上回るレベルまで回復した。2022年4~6月期は旅行や外食など対面型サービスを中心に個人消費は大きく回復すると予想される。
感染再拡大への警戒感は根強く、外出行動の回復ペースは緩やか
ただ、新型コロナウイルスは今後も感染一服と再拡大を繰り返す可能性があり、新たな変異型の出現など感染状況によっては個人消費が下振れするリスクは残る。
実際、ゴールデンウイーク後の人出は再びベースラインを割り込むなどコロナ前の生活習慣を取り戻せていない。大規模イベントの人数制限など感染拡大防止のための制限措置が残っていることが一因に挙げられる。
感染再拡大への警戒感も依然として根強い。特に、日本は感染に伴う重症化リスクの高い高齢者が多く、このことが外出行動の本格回復を妨げる要因となっている。ちなみに、2020年時点の日本の65歳以上人口比率は28.9%で、米国の16.6%、ドイツの21.7%を大きく上回っている。
インフレと供給制約が個人消費のリスク要因
ワクチン接種が進んだことから、今後の感染拡大局面における自粛行動は限定的にとどまると想定しているが、個人消費の本格回復に向けた懸念材料は少なくない。
すでに影響が広がっているのが物価の上昇である。2022年1~3月期のGDP(国内総生産)統計をみると、名目ベースの個人消費は前期比1.0%増加したが、個人消費デフレーターの上昇によって実質ベースの伸びは0.1%増に押し下げられている。米国のように耐久財やサービスまで幅広く物価上昇圧力が高まっているわけではないが、食料とエネルギーを中心とした物価上昇だけでも個人消費の回復にとって逆風となる。
供給制約も当面の個人消費の回復を抑える要因となる。半導体不足の影響に加え、中国・上海のロックダウン(都市封鎖)による部品供給の遅れで自動車メーカーは減産を強いられており、契約済みの自動車の納車が大幅に遅れている。
2022年4~6月期の個人消費は前期比プラスが確実視されるが、物価上昇や供給制約の影響などで想定していた回復ペースを下回る可能性は小さくないと考えている。