フォントベル・アセット・マネジメント 専門性の高い運用子会社の強み生かす、「マルチブティック・モデル」を提案
スイスで長年「マルチブティック・モデル」をベースにした運用を展開してきたフォントベル・アセット・マネジメントが、このたび助言・代理業として東京に拠点を開設した。パンデミック下の船出となる日本ビジネスの展望などについて、日本における代表者の吉野剛司氏に話を聞いた。
(取材日:2020年12月24日)
日本の投資家の運用機会を拡大する
──このタイミングで東京支店を開設した背景は。
吉野 スイスの金融グループを母体とする当社は、これまで欧州を中心にビジネスを展開してきた。しかし昨今、成長期待の高まりや大規模な機関投資家の存在などから、アジア地域への進出を進めている。
特に日本は機関投資家向けビジネスの市場が大きい。当社はコンサルティング会社の一定の評価がある運用成績が良好な戦略を多く揃える。これまでのように香港支店から手を伸ばす方法では一部のクライアントにしかリーチできないと考え、東京に拠点を構えた。
新型コロナウイルスの感染拡大真っただ中での支店開設になったが、こうした時期だからこそ我々の日本市場へのコミットメントの強さを示せると思う。
──運用サービスにおける強みは。
吉野 昨今のように様々な変化を見せる投資環境で力を発揮するマルチブティック・モデルでの資産運用・提案をしっかり遂行する土壌があることが挙げられる。
傘下に特定のアセットクラスや運用戦略に特化するなど専門性に長けたブティック(運用子会社)を複数抱えるマルチブティック・モデルでは、本社のCIO(最高投資責任者)の方針ではなく、各ブティックの責任で運用を行う。
ブティック単位で運用カルチャーの持続性や自立性が担保されることから、提案できる運用戦略の多様性が確保されるのが利点だ。それゆえ、投資環境の変化と顧客ニーズに合わせて、最適な運用アイデアを提案できると考える。
特に日本に代表されるローカルな地域では、小さなブティックがオフィスを開くのは難しい。当社のようなブティックを束ねる会社が営業拠点を開くことで、日本の顧客が幅広い運用機会に繋がるサポートができる。
ベストな提案のためには営業担当者が各ブティックの良さ・強みをどれだけ知っているかが非常に重要になる。当社では年に何度も営業向けの勉強会を実施したり、毎日ブティックの情報が入る仕組みを作ったりするなど、理解の深化を徹底している。
多様な資産への分散投資
──引き合いの強いブティックは。
吉野 香港から日本へサービスを提供してきた際には、「クオリティ・グロース」という成長株運用ブティックの人気もさることながら、長引く低金利環境の影響から、英国の運用会社TwentyFour社が行う債券運用や「マルチアセット」など、多様な資産への分散投資に資するブティックへの引き合いが強い印象があった。
東京への拠点開設に伴い、今後はこうした戦略をより詳細に、広く提案できるようになる。特に「マルチアセット」は、スイスにおいて安定したリターンの獲得を目指すクオンツ運用で優秀な実績を残すべスコア社が運営しており、こうした選択肢を広く日本に紹介していきたい。
日本でも盛り上がりをみせるESG(環境・社会・企業統治)・サスティナブル投資の分野も、当社は1994年から関与してきた実績がある。ESG投資はリターンの不透明感から敬遠する動きも強いが、米国バイデン政権の誕生など追い風が吹く。実際に当社のESG分野に関連するファンドも良好なパフォーマンスを発揮しており、社会貢献とリターンの両方を同時に達成するような提案もできるようになってきたと感じる。
日本の顧客にも、ぜひESG投資の魅力を伝えていきたい。特に環境対策へ注力している銘柄に投資する当社の「クリーン・テクノロジー・運用戦略」は、ベンチマークを構成する銘柄の10%ほどが日本企業であり、親しみを感じてもらえるはずだ。
──読者へのメッセージを。
吉野 当社は日本市場に新参者として参加したが、本国スイスでは長年の実績と運用戦略への高い評価がある。
特にスイスは日本よりも先にマイナス金利に突入し、低金利環境の下で長期的なリターンの確保・成長戦略が課題となってきた。こうした中、低金利での資産運用について知見を深めながら、傘下のブティックを含め当社でよく用いられる「確信を共有化する」という言葉通り、自分たちが強く確信が持てる分野で、細心の注意を払いながら地道に運用を行ってきた。
同じように低金利にあえぐ日本の投資家にも、我々の知見を活かした提案ができ、長期的なお付き合いをさせていただけると考えている。まずは親しみを覚えていただくため、日本語での情報発信などに注力していきたい。
東京はフォントベルとしても成長を強く望む拠点だ。本国からの手厚いサポートも期待できる。興味を持っていただいたならば、気軽にお声かけいただければ幸いだ。