「隣の企業年金」第47回 弁理士企業年金基金──常務理事は「何でも屋」〜業界全体と「運命共同体」。予算決算や退職金規程作りまでサポート
今回は弁理士企業年金基金を訪ねました。弁理士は知的財産権である特許権や意匠権、商標権などを扱うプロ。基金には、特許事務所や知的財産事務所が加入しています。総幹事の信託銀行出身の後上勝(ごがみ・まさる)常務理事は当初こそ、全く畑違いの弁理士業界に戸惑ったものの、今では加入事務所のあらゆる悩み事に対応する「何でも屋」を自任。「業界の発展イコール企業年金基金の発展」と考え、着任15年を超えた今も全国の事務所を訪問し続けています。

弁理士企業年金基金の概要
- 所在地/東京都港区西新橋3丁目
- 発足年月/1993年、厚生年金基金設立。2017年7月、解散して企業年金基金
- 資産総額/136億円
- 加入者/4567人 受給者/467人
- 予定利率/2.0% 期待運用収益率/2.5%(いずれも2026年3月末現在)
知的財産の「プロ」=特許事務所など加入
不勉強で申し訳ありませんが、そもそも「弁理士」はどんな仕事をされているのですか。
後上 一言で言うと「知的財産のプロ」です。特許権や実用新案権、意匠権あるいは商標権など、弁理士法で規定された知的財産権の取得や活用をサポートする仕事です。基本的に特許事務所や知的財産事務所に所属していますが、弁護士などと同様に企業内で活躍するケースもあります。
こちらの基金に加入されているのは、そうした事務所の方々でしょうか。
後上 その通りです。現在、249の事務所が加入しています。大きな事務所では弁理士や事務職員あわせて250人といったケースもありますが、弁理士1人に事務職員が2、3人という小規模の事務所が大半です。人事総務、経理の専門担当者が不在といった事務所も珍しくありません。そういった場合は、企業年金の給付、加入者対応の相談はもとより、事務所の就業規則や賃金規程、退職金規程のメンテナンスまでサポートすることもしばしばです。
年金「ワンストップサービス」と人事労務「よろず相談」
えっ、そんなことまでされるのですか。
後上 私が信託銀行から基金に移ってきたのが2010年。まだ厚生年金基金の時代でしたが、こうした小規模の事務所はなかなか年金基金に加入してくれませんでした。そこで企業年金基金への移行を契機に、企業年金基金に加入するメリットを打ち出そうと考えました。まず基金のロゴとキャッチコピーを公募し、「あなたの未来にゆとりをプラス」に決定しました。そしてさらに、上で述べたようなサポート体制を前面に打ち出して、「弁理士業界で働く仲間の私的年金のオープンプラットホーム」というキャッチフレーズを作成したのです。DBそしてDCの「ワンストップサービス」と、人事労務管理の「よろず相談」に対応することで、小規模事業所の弱い部分をサポートする。これが私たちの主要な業務ということを、積極的にアピールしてきたわけです。
常務理事、加入勧誘で全国行脚
基金事務局が「ワンストップ」かつ「よろず相談」で窓口をオープンにしている間にも、常務理事は全国を行脚しているとか。
後上 はい。主な目的は基金への加入の勧誘です。しかし、これが簡単ではない。人員的にも資金的にも余裕の乏しい事務所がほとんど。そこに対して企業年金に加入するメリットを説くのは、結構な難事業です。業界の会合など、さまざまな機会をとらえて各地へ出向きます。合間の時間などを使って直接説明し、アピールするわけです。企業年金の「枠」を大きく超えて、加入事務所の運営そのものをサポートしている実態が大きな「説得材料」になっています。
弁理士業界の衰退=企業年金の衰退
お話を伺っていると、企業年金基金のことだけを考えているのではなく、むしろ弁理士業界全体のサポートが主眼のようにも見えてきます。
後上 そう思っていただいても構いません。弁護士や税理士など他の「士」業も同様ですが、日本全体の人口減少トレンドに加え、昨今のAIの進展もあり、業界全体の「パイ」が縮小気味です。その中で、手数料を下げるなどの価格競争も激しくなっており、お互いの足を引っ張り合いながら弁理士業界が沈んでいく恐れさえ感じています。業界が衰退すれば、企業年金も衰退する。悪循環です。業界と企業年金はまさに「運命共同体」で、そのために「ウイン・ウイン」となるよう業務展開しています。
年金運用は一貫して保守的
ここからは、資産運用について伺っていきます。【図表1】でこの3年間の収益率の推移を見ると、多くの企業年金がマイナス運用に陥った2024年度末もプラスを維持するなど、好調じゃないですか。
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