マーサーの頭脳に聞く グローバル資産運用・コンサルティングの焦点 【第1回】複雑化・大規模化する運用と、拡大するOCIOの意義ミック・デンプシー インベストメント・アンド・リタイアメント部門プレジデント
世界有数のコンサルティング会社であるマーサーの資産運用部門の首脳3氏に、J-MONEYはインタビューする機会を得た。「マーサーの頭脳に聞く グローバル資産運用・コンサルティングの焦点」と題し、3回に分けてその内容を紹介する。第1回は、投資・退職給付(インベストメント・アンド・リタイアメント)部門を率いるミック・デンプシー氏。地政学リスクやAIの台頭でポートフォリオが複雑化・大規模化するなか、増大するガバナンス負担や投資運用業務の複雑化、高度化を背景に拡大するOCIO(運用業務の外部委託)の意義や、日本市場での展開、運用へのAI活用などについて聞いた。

インベストメント・アンド・リタイアメント部門プレジデント
ミック・デンプシー氏
ポートフォリオ全体を支える運用支援に引き合い
マーサーはグローバルの運用トレンドをどのように見ているか。また、それを今後の経営やソリューションの方針にどう反映していく考えか。
我々はいま、大きな変化のただ中にいる。貿易の分断や紛争といった地政学(ジオポリティックス)・地経学(ジオエコノミクス)上の不確実性に加え、AI(人工知能)の急速な進展やエネルギー転換といったメガトレンドが同時に進行している。これらは経済環境を巡る大きなテーマであると同時に、投資ポートフォリオがますます複雑化するこの時期に重なって起きている点が重要だ。
複雑化の大きな要因の一つは、機関投資家が検討すべきアセットクラスの幅が著しく広がったことであり、それに伴って各アセットクラスやマンデートを担う専門のマネジャーの数も増えている。さらに、年金基金や保険会社をはじめとする機関投資家の運用資産は、10年前、20年前と比べて規模そのものが大きく拡大している。
ここで重要な論点になるのが、ポートフォリオ運用に伴うガバナンス負担の増大だ。ここで言うガバナンスとは、運用に費やす時間・リソース・コストを指す。すなわち、意思決定を行い、それをポートフォリオに反映・実行していくという運用の実務面だ。市場やクライアントは、かつてより複雑で大規模になった今日のポートフォリオに、より適した投資・ガバナンスの枠組みをどう実装するか、頭を悩ませている。
こうした変化を受け、多くのクライアントがマーサーに対し、ポートフォリオ全体または一部の運用を支える追加的なサポートを求めるようになった。その結果として伸びているのがOCIOのようなサービスであり、グローバルの機関投資家市場で大きく成長する分野となっている。
さらに、ポートフォリオ構築上の論点として、パブリック市場とプライベート市場をどう統合するか、モニタリングとリスク管理をどう高度化するかも重なっている。市場の混乱が見られる現在の環境では、マネジャー間のリターンの格差が大きく開いており、勝者を見極めて敗者を避ける力がいっそう重要になっている。
こうした状況はアセットオーナーに大きな責任と負荷を課しており、それが各種の規制の変化にも表れている。日本でも、ガバナンスの高度化に関する指針を示した「アセットオーナー・プリンシプル」はその一例だ。
OCIOは「支援の拡張」
ポートフォリオの複雑化・大規模化は、国内外の機関投資家に共通する課題でもある。こうしたなかで、機関投資家が特に注目すべき問題はどこにあると考えるか。
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