ヌビーン「NWQフレキシブル・インカム戦略」運用担当者インタビュー 資産配分ではなく「資本構成」から考える。割高でボラタイルな市場でこそ問われる規律
米国教職員退職年金/保険組合(TIAA)の資産運用部門、ヌビーン傘下のヌビーン・アセット・マネジメントが手がける「NWQフレキシブル・インカム戦略」は、資産配分を起点とせず、まず投資妙味のある有望企業を個別に選定したうえで、その資本構成のなかから投資適格社債・ハイイールド社債・転換社債・優先証券・普通株式など最も投資妙味のある証券を選び抜くボトムアップ型のマルチアセット戦略だ。来日した同戦略の運用担当者で、債券資産クラス担当のスージー・ブディマン氏と株式担当のジム・ステファンソン氏に、戦略の設計思想と株式・債券両市場の現状認識を聞いた。(インタビュー:2026年6⽉2⽇)

ポートフォリオ・マネージャー兼クレジット・アナリスト
スージー・ブディマン氏(右)
ポートフォリオ・マネージャー兼エクイティ・アナリスト
ジム・ステファンソン氏(左)
インカムを軸に、債券から株式まで資本構成間を柔軟に行き来可能
多くのマルチアセット戦略がアセットアロケーションを起点とするなか、「NWQフレキシブル・インカム戦略」は、企業の資本構成のどこに投資機会があるかに着目する。いまの運用環境でどのように活きるのか。
ブディマン トップダウン型のマルチアセット運用者の多くは、ヒストリカルなトレンドをもとにアセットアロケーションを決めることを出発点にする。しかし足元のように、スプレッドがタイトでバリュエーションも割高、株式の側も割高という環境では、トップダウンで「どこに投資すべきか」を決めるのは容易ではない。一方、銘柄単位で見れば、指数の構成銘柄のなかに魅力的な投資対象が埋もれていることがある。トップダウンで見ていると、こうした個別の機会は見逃してしまいかねない。
ヌビーンは、クレジット性資産とエクイティ性資産の双方にまたがるリサーチ・プラットフォームを持っている。これを活用して企業レベルのファンダメンタルズを理解し、その企業に投資する論拠(テーゼ)を固めたうえで資本構成の各パーツを点検する。そこから最良のリスク・リワードを探すのが、私たちにとって最も理にかなったやり方だ。
意思決定は、私たち2人だけで閉じず、その時々で最も適切なリサーチ・アナリストを呼び込み、セクターごとの知見を投資判断に反映させている。
ステファンソン ある企業について、債券アナリストと株式アナリストの双方から見方を得られることは、個別証券の選択において大きなアドバンテージになる。
経験上、債券アナリストはダウンサイドの分析に長けており、株式アナリストは将来を見据えて企業が生み出し得るアップサイドを捉えるのが得意だ。この両者を一体で機能させ、ダウンサイド・プロテクションを伴ったリスク・リワードを追求することが我々の焦点だ。
ブディマン 同じ企業でも投資のテーゼは変化する。ある企業の成長期待が高まり、債券のポジションにとどまるよりも株式投資のほうが大きなアップサイドを取れると判断すれば、同じ企業のなかで債券から株式へ一部ポジションを移すこともある。また、私たちはしばしば、市場の恐怖や価格の歪み(ディスロケーション)を逆手に取り、資本構成のなかを上下に動く。資本構成起点(トップダウン型)のマルチアセット戦略には、このようにフレキシブル(柔軟)に、いわばオポチュニスティック(機動的)に運用することが欠かせない。
ただし、NWQフレキシブル・インカム戦略の投資テーマはあくまで高位なインカム・リターンの獲得であり、どこに投資すれば最もインカムが高まるかを第一に見る。成長やアルファ(超過収益)もある程度追求するが、優先するのはインカム・リターンの確保だ。
ダウンサイド管理は「ファンダメンタルズ」と「バリュエーション」の二段構え
ダウンサイドを固めながら安定したインカム・リターンを追求する設計は、日本の機関投資家が好むリスクの取り方に通じる。ダウンサイドリスクのプロテクションで、とくに重視している観点は。
ブディマン 第一の防衛ラインは、企業のファンダメンタルズを十分に理解すること。ここは、運用会社のリサーチ・プラットフォームの甲乙が出てくる部分だろう。
当戦略の場合、ファンダメンタルズ分析の観点では、とりわけ2つ重視する観点がある。1つはキャッシュフロー創出力、つまり景気循環を通じて、その企業がどれだけ安定的にキャッシュを生み出せるか。もう1つはバランスシートで、レバレッジと流動性の両面から、サイクルを通じて耐えられる体力があるかを見る。
その次に重要なのがバリュエーション評価だ。ファンダメンタルズが盤石でも、バリュエーションが割高であれば、それ自体が大きなダウンサイド要因になる。逆に、債券であれ株式であれ、割安な水準で買うことができれば、投資する前の段階で多くのリスクを抑制させ、勝率を自分たちに有利に傾けられる。このファンダメンタルズ分析とバリュエーションの評価こそが、私たちのリスク管理の中心にある。
クレジット市場——投資適格は「ハイブリッド」、ハイイールドは「シングルB」に妙味
運用者の立場から、各アセットクラスの投資妙味をどう見ているかも伺いたい。まずクレジット性資産についてはどうか。
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