
宅森 昭吉
2025年12月8日公表の2025年7~9月期実質GDP第2次速報値は、前期比年率▲2.3%と、第1次速報値の▲1.8%から下方修正となった。法人企業統計などが基礎統計に加わったため、設備投資の前期比は+1.0%から▲0.2%へと増加から減少に下方修正されたことが主因であると、マスコミ報道などで報じられた。
7~9月期GDP第1次速報値での民間企業設備の推計過程では、供給側推計値は名目原系列前期比+6.8%の増加、また、供給側推計値の情報を用いて仮置きした需要側推計値は名目原系列前期比+12.4%の増加であった。
需要側推計値・名目原系列前期比+12.4%を法人企業統計調査に当てはめると、前年同期比は+5.1%になった。実際の7~9月期の法人企業統計調査・全産業(金融業・保険業を除く)の設備投資(ソフトウェア投資額を除く)の原数値ベースの前期比は+10.0%、前年同期比は+2.9%で仮置き値より低い伸び率にとどまったことが、設備投資の下方修正の主因である。
また、サービス産業動態統計でソフトウェア関連データの前年同月比が第1次速報値で使われた7月、8月分より、9月分が低い伸び率であったことも下方修正要因になった。
しかし、7~9月期 GDP第2次速報値公表時に、2020年基準改定が実施され、2025年7~9月期の名目GDPは第1次速報値の635.82兆円から、第2次速報値は665.0兆円へと29.2兆円増加した。内訳の需要項目で個人消費は10.6兆円増加したが増加幅は第2位で、設備投資が12兆円増加と第1位であった。増加幅の構成比をみると、設備投資が41.1%、個人消費が36.2%である。この2項目で8割近くになる。設備投資は2025年7~9月期の第2次速報値では名目GDPの水準押し上げ要因の第1位であり、ソフトウェア投資をはじめとして設備投資の基調は強いとみられる。
なお、日銀短観2025年12月調査で、2025年度の全規模・全産業のソフトウェア・研究開発を含む設備投資額(除く土地投資額)前年度比は+9.5%の増加だが、そのうち全規模・全産業のソフトウェア投資の前年度比は+12.2%と2ケタの増加率である。

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2025年12月15日には、日本経済研究センターが取りまとめている「ESPフォーキャスト調査」も公表された。12月調査では、GDP統計は2020年基準の最新データを反映している。
特別調査として、2025年11月21日に閣議決定された経済対策の効果について尋ねている。実質GDP押し上げ効果の総平均予測は、政府試算の+1.4%ポイントを下回るものの、年成長率換算で+0.43%ポイントのプラス効果を見込んでいる。また、消費者物価指数・総合の上昇率の押し下げ効果の総平均予測は、①ガソリン暫定税率廃止で▲0.24%ポイント、②電気・ガス料金補助で▲0.41%ポイントになった。
2025年10~12月期の実質GDP成長率・前期比年率の総平均予測は+0.84%となり、7~9月期GDP速報値公表前であった11月調査の+0.60%から上方修正となった。前期比年率▲2.3%のマイナス成長だった7~9月期から10~12月期はプラスに転じる予測である。2026年1~3月期の総平均予測は+1.05%で、以降は2026年度いっぱい+1%程度での推移の予測である。
12月調査の年度の実質GDP成長率・総平均予測は2025年度が+0.91%、2026年度が+0.80%で、11月調査の2025年度+0.78%、2026年度が+0.74%から上方修正された。また、名目GDP成長率・総平均予測は2025年度+3.89%、2026年度+2.77%で、11月調査の2025年度+3.59%、2026年度が+2.54%からこちらも上方修正された。
消費者物価指数・生鮮食品除く総合の前年同期比・総平均予測は、2025年10~12月期は+2.69%と、11月調査の+2.55%から上方修正となった。2026年1~3月期以降は+1%台で推移し、2027年1~3月期に再び+2%超まで上昇する見通しである。政策効果で+1%台になるのが11月調査より、1四半期早くなった。2025年度・総平均予測は+2.74%、2026年度+1.81%で、11月調査の2025年度+2.75%、2026年度が+1.75%から若干変化した。

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