知りたい!隣の企業年金・第32回 南都銀行企業年金基金 一 オルタナティブの分散に注力〜生保・一般勘定をリスクのクッション役に
この2月に奈良市で新本店が完成し、移転したばかりの南都銀行の企業年金基金を3月末に訪問しました。橋本雅至(はしもと・まさし)常務理事は「ご卒業」直前という絶妙なタイミング。4月から、南都銀行グループで障害者雇用などを促進する「なんとチャレンジド株式会社」の代表取締役社長に就任されています。オルタナティブ投資の収益源泉拡大などに注力してきた4年間を振り返ってもらいました。

登録文化財の旧本店から奈良市役所近くに移転
南都銀行は奈良県内でメインバンク企業数6割、融資シェア6割、また預金シェア3割という圧倒的な存在の地方銀行だ。南都銀行の旧本店は、JR奈良駅近くの場所に1926年、旧六十八銀行(南都銀行の前身の1つ)の奈良支店として建設された。国の登録有形文化財にも指定された由緒ある建築物だったが、付随するビルともども老朽化したため2025年2月、近鉄新大宮駅近くで奈良市役所のそばに新本店を建設・移転した。
南都銀行企業年金基金の概要
- 所在地/奈良市大宮町4丁目
- 設立年月/厚生年金基金(1969年設立)の代行返上で2004年4月に設立
- 資産総額/422億円
- 加入者/2243人 受給者/1963人
- 予定利率/3.0% 期待運用収益率/3.0%
(いずれも2024年3月末現在)
金融機関初のリスク分担型
不勉強で知らなかったのですが、南都銀行企業年金基金は金融機関としてはリスク分担型への移行第1号だったのですね。
橋本 2018年4月です。厚生労働省が2017年に制度を創設してまもなくでした。
なぜ、それほど早いタイミングでの導入となったのでしょうか。
橋本 私の着任前だったので詳しいことは分かりませんが、当時は多くの企業年金同様、運用状況が厳しかった。そのため、経営陣が「長期的に持続可能な制度としたい」と判断し、労働組合とも合意した結果だったと認識しています。
そしてもう1つ驚いたことがあります。リスク分担型に移行した企業年金は多くの場合、加入者つまり現役社員が新制度に移行し、受給者は閉鎖型DB(確定給付型企業年金)という振り分けが多いと聞いています。しかし、南都銀行の場合は受給者も含めていますよね。OBの人たちへの説明や説得など、随分苦労されたのではないですか。
橋本 県内各地で説明会を開き、退職された受給権者の方々に集まってもらったと聞いています。確かに相当大変だったようです。
高い株式比率がパフォーマンスに寄与
ここからは運用について伺っていきます。
橋本 【図表1】が直近4年間の運用成績です。2024年度は2025年2月末までの数字となっています。
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