新企画「機関投資家ゼロからの資産運用」債券編の第3回です。学校法人、金融法人はもちろんのこと企業年金などは、日本国内の機関投資家であるのに運用資産の多くを海外の債券に投資しています。中でも米国の国債が大きな比重を占め続けています。なぜなのでしょうか。ラッセル・インベストメントの金武伸治さんに伺います。

利回りとリスク、大きい分散効果

日本の機関投資家は日本の国債や社債が基本の投資先と思っていましたが、違うのですね。なぜ海外の債券、とりわけ米国債に多く投資するのですか?

金武 確かに、初めて資産運用の担当になられた方は驚くかもしれませんね。主な理由は分散効果です。

また、この分散効果には2種類あり、1つ目は多様な債券種別への利回り分散効果です。債券には国債以外にも、政府機関や地方政府、国際機関などが発行する政府関連債、企業が発行する社債、住宅ローン債権などを担保とする資産担保債、それに新興国が発行するエマージング債など様々な種別があります。これら国債以外への分散投資には、利回り向上効果が期待できます。そして種別の多様性が最も大きいのが、米国債券市場または米ドル建て債券市場です。一方で国内債券市場の場合、9割以上が国債や地方債、政府保証債で、多様性や分散効果に乏しいのです。ただし社債やエマージング債は、株式と一定程度の連動性があることに注意が必要です。

2つ目は株式とのリスク分散効果です。これは主に国債投資を想定しています。前回お話ししたように、株価の下落時には金利が低下し、そのことで債券価格が上昇する、という効果です。例えば米国は相当程度に金利水準があるため、株価が下落した時の金利低下余地が十分にあります。これに対して日本の場合は金利水準が非常に低いため、金利低下余地に乏しく、株式との分散効果に乏しいのです。

金利水準や上昇タイミングの違いも重要

であれば、すべて米国に投資すればいいのではないでしょうか。

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