石川 康氏
日興アセットマネジメント
オルタナティブ運用部長
グローバル・マルチアセット共同ヘッド
石川 康

日興アセットマネジメントは、人材投資効率に着目した「日本株CSV戦略」を開発した。設定した経緯について、日興アセットマネジメント オルタナティブ運用部長 グローバル・マルチアセット共同ヘッドの石川康氏は、「労働人口の減少が予想される日本では、限られた人的資源を効率的に活用し、いかに労働生産性を向上させるかが重要な課題。労働者の賃金上昇を通じ物価が力強く上昇すれば、企業は付加価値増大が容易になり、労働生産性のさらなる改善に繋がる好循環が期待される。こうした課題意識の下、効率的な人材投資により労働生産性を向上させる能力を有する企業を投資対象とする株式戦略の開発に取り組んだ」と語る。

「日本株CSV戦略」の銘柄選定プロセスでは、主要日本企業群を投資対象に一定のネガティブ・スクリーニングを行った後、定性的CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)スコアと定量的CSVスコアを合成した値に基づき個別銘柄ウェイトを決定する。定性的CSVスコアは、各社のESG課題への取り組みが本業の競争力にもたらす相乗効果をアナリストが定性的に評価し算出する。一方、定量的CSVスコアは、定量的に推定された各社の「人材投資効率の高さ」と「労働生産性の低さ」を基に算出する。

企業の人材投資効率を推定する上で着目するのは、従業員の増減とその後の労働生産性の変化の関係だ。従業員を増やした後に労働生産性が向上している企業は、人件費の増大分を上回る付加価値を生み出している。そのような人材投資効率が高い企業は、その後の株式リターンが高い傾向を持つ。また足元の労働生産性が低い企業は、その後の株式リターンが高い傾向がある。つまり、定量的CSVスコアの役割としては、「人材への効率的な投資で労働生産性を改善できる企業を労働生産性が低いうちに『青田買い』するイメージ」と石川氏は語る。主要日本企業を対象とした実証分析では、定量的CSVスコアが有意な水準の超過リターンを生むことが確認されている。