• 財務省は2022年10月24日に円買い介入を実施
  • 127円から133円の綱引き相場が続く年初来のドル円
  • 日銀の緩和修正とFedの利下げ転換は二律背反
  • 中国の資産・負債バブル崩壊はドル円急落のトリガー

財務省は2022年10月24日に円買い介入を実施

梅本徹
J-MONEY論説委員
梅本 徹

2023年2月7日に財務省が発表した外国為替平衡操作の実施状況(日次ベース)によれば、同省が2022年10月中に実施した6.3兆円のドル売り円買い介入は21日に5.6兆円、24日に0.7兆円が実施されていたことが明らかになった(図表)。

【図表】2022年におけるドル売り円買い介入とドル年相場
2022年におけるドル売り円買い介入とドル年相場
出所:財務省

また、2023年2月10日に同省が発表した国債及び借入金並びに政府保証債務現在高によると、2022年12月末現在の政府短期証券残高は93.4兆円と、同年9月末対比11.7兆円の減少となった。

したがって、当該ドル売り円買い介入による外貨準備取り崩しの結果、介入額のほぼ全額が外国為替資金証券(為券)の償還に充当されたと推察される。

127円から133円の綱引き相場が続く年初来のドル円

2023年のドル円相場は130円台で始まった。年初にはリスクオンの動きが一時的に強まり134円台まで反発した後は、日銀による再度の緩和修正期待から1月16日には127円台まで下押しした。

しかし、18日に金融政策決定会合での現状維持が報じられると131円台までの急反発となる。その後は、米国景気の減速とFed(米国連邦準備制度)の利上げ早期終了観測が強まり、2月2日には、再び128円台まで下押しとなった。

同日には、Fedによる利上げ幅は0.25%まで縮小されている。しかし、3日に発表された1月の米雇用統計が事前予想を大幅に上回ると、Fedによる金融引き締め長期化観測が再浮上し、ドル円相場は6日に132円台まで反発した。その後は日銀総裁後任人事をめぐり、為替市場では一喜一憂した動きが続いた。

日銀の緩和修正とFedの利下げ転換は二律背反

換言すれば、年初の薄商いの中一時的に付けた134円台を除けば、年初来のドル円相場は日米の金融政策をめぐる思惑から130円を中心に127円から133円までのレンジで方向感なく取引されたといえよう。

これはいたって当然のことのように思われる。例えば、今後日銀が緩和修正を進めるためには、日本におけるインフレ圧力の高進が前提となるが、それには米国の景気拡大とインフレ継続が不可欠であろう。

しかし、そのような状況下では、Fedは利上げを継続する公算が高い。一方近い将来、Fedに利上げを強いるような米国景気の後退とインフレ圧力の急低下が起きれば、わが国でも景気の悪化とデフレの再燃が懸念されることになり、日銀は緩和修正どころではなくなる。おそらく、日本の長期金利は再びYCCの下限に張り付くことになろう。

結局、日銀の緩和修正にはFedによる継続利上げが、逆にFedによる利下げには日銀の現状維持が伴われる可能性が高く、ドル円相場は綱引きを継続する可能性が高い。

中国のバブル崩壊はドル円急落のトリガー

やはり、ドル円相場のレンジブレークには、中国経済の動向がカギとなると考えられる。同国経済がゼロコロナ、対不動産・ハイテク産業政策の転換によって急回復を見せるのであれば、日銀には緩和修正の余地が出てくるかもしれない。

あるいは、中国が同内の資産・負債バブル崩壊による世界金融不安の発信地となるのであれば、ドル円相場はリスクオフの中、キャリトレードの巻き返しが進展し、昨年後半来の行き過ぎたドル高円安の修正相場が本年も継続すると考えられる。