消費者物価上昇率4%でも
継続される金融緩和

日銀は出口に向かうのか。結論を先取りすると2023年後半~2024年前半にその機会が訪れると筆者は予想する。

日銀の金融政策を取り巻く環境については米国の景気後退、中国のゼロコロナ戦略など海外に由来する不確実性が強く、また総裁人事すら決定していない現段階で予想を示すことは困難だ。賃金上昇率の底堅さが見込まれる中、食料・エネルギー以外の物価が安定的に上昇すれば、日銀は出口戦略を実行に移すと判断する。

なお、本稿では黒田東彦総裁の後任として日銀出身の雨宮正佳副総裁、中曽宏前副総裁のどちらかが新総裁に就任すると仮定する。

金融政策のカギを握るのは消費者物価、そして国内の賃金上昇率であろう。現在、消費者物価上昇率は日銀の物価目標2%を大きく上回り4%近傍にある。にもかかわらず、頑なに金融緩和を継続しているのは「良性インフレ」に必要不可欠な賃金上昇率が不十分であるからにほかならない。

この点は黒田総裁を含め、ほぼ全ての政策委員が共通の認識を有しているとみられる。なお、ここで言う良性インフレとは賃金上昇を主な「原因」とし、物価上昇がその「結果」になるものだ。黒田総裁は2%の物価目標達成のために必要な賃金上昇率は3%程度であるとしている。

代表的な賃金指標である毎月勤労統計に基づくと、2022年10月の現金給与総額は前年比プラス1.8%と比較的高い伸びが実現し、また基本給に相当する概念である所定内給与もプラス1.3%と安定的に1%を上回っている。

前年比上昇率は比較対象となる2021年の値が抑制されていたことによって誇張されている点を割り引く必要があるほか、物価上昇を加味した実質賃金が大幅なマイナスであることを踏まえる必要がある。しかし、人手不足感が深刻な下で、企業収益が底堅さを維持していることに鑑みると、2023年以降も現在の比較的高い伸び率が維持される可能性はある。

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