世界的なインフレ・金利上昇・地政学リスクの高まりのなか、欧米以外の5つの注目国の経済はどのような可能性と課題を抱えているのか。JBIC(国際協力銀行)の現地駐在員に聞いた(記事内容は2022年6月2日現在)。
ブラジルの金融環境について。
2022年4月の対前年比の物価上昇率は12.13%と、ブラジル中銀が設定する2022年のインフレ目標中央値(3.5%プラスマイナス1.5ポイント)を大幅に上回っている。そのため、同年5月の金融政策委員会では、インフレ抑圧のため10会合連続利上げで政策金利を12.75%に引き上げた。
ただ機関投資家にとっては看過できない金利水準であり、資源国通貨の側面も相まって、結果としてブラジルの株と通貨は買われている。
注目の産業・セクターは。
ブラジルは農畜産ビジネスがGDP(国内総生産)の3割弱を占め、関連産業への従事者も多い。社会情勢の安寧のためにも「サステナブルな農業・畜産業」の確立がポイントだ。カギは2つあり、第1が肥料の安定調達である。ブラジルは肥料の8割が輸入で、うち約3割はロシア産とベラルーシ産だ。
ブラジルがウクライナ侵攻をめぐるロシアの経済制裁に賛成しない背景には肥料の問題がある。一方で2022年3月に国家肥料計画を施行し、2050年までに肥料の輸入比率を45%まで低下させることを目指している。第2が「脱炭素」だ。ブラジルは国内のCO2(二酸化炭素)排出量に占める農畜産業の比率が他の主要国に比べ際立って高い(図表)。
農畜産物輸送はトラックが中心だが、CO2排出量が相対的に少ない鉄道にシフトさせるため国家物流マトリクス計画を打ち出すなど、鉄道網の建設に力を入れている。
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