株式、債券市場における資金フローの変化
次に投資家に必要とされる対応を考える前に、株式、債券市場における資金フローの変化を見ておきたいと思います。図表4は米国の株式ファンドおよびETF(上場投資信託)の資金フローの推移を2016年からの累積で見たものです。「ゴルディロックス相場」を背景に長らく続いたグロース優位、バリューからの資金流出傾向がここもと反転していることが分かります。
株式投資を考えるうえでは、これまで続いていたファクターに対するアプローチや個別銘柄選択におけるポイントなど、特にアクティブ運用の観点で再考する動きが強まっています。図表5は米国の株式ファンドおよびETFの資金フローの推移を2016年からの累積で見たものです。
全体として順調な流入傾向に足元変化が起きています。特に金利上昇の影響を直接受けやすい国債等、景気減速の影響を受けやすいハイイールド社債からの資金流出が強まっていることが見て取れます。債券投資においては、単に株式投資からの分散や安全資産としての国債への投資、また単に利回りを追求することを目的としたハイイールド社債投資に再考が入り始めているように見えます。
株式ウエート引き下げやコモディティの組み入れなどでインフレタカ派相場対応を
最後に筆者が投資家として有用と考える対応です。コロナ禍やウクライナ情勢を背景とした供給制約、そしてインフレ懸念により我々投資家にとって局面が大きく展開しつつあることを覚悟する必要がありそうです。資産配分においては、株式のウエートの見直し(引き下げ)がまず焦点になります。
インフレ対応としては、可能であればコモディティなどインフレ対応資産の組み入れもありますし、本邦投資家にとっては外貨の組み入れ(為替ヘッジしない海外資産への投資)も選択肢です。ただし後者は世界で類を見ない現在の日本銀行の金融緩和政策がどこまで持続可能かに留意する必要があります。株式運用においては、ファクター戦略や個別銘柄選択など、特にアクティブ運用について、その手法や組み合わせを再点検する時期が来ていると考えます。
そして債券運用においては、国債に比べて金利上昇の影響をある程度緩和しつつ、ハイイールド社債などに比べて景気減速の影響を相対的に受けにくい投資適格社債への投資が有効ではないかと筆者は考えています。
横谷宏史
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社
運用部 マネージング・ディレクター
2021年8月より現職。日本における債券運用およびビジネスの統括責任者。2018年5月、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズへ入社。ストラテジストとして債券を中心に日本及びアジアにおける運用戦略の立案やビジネスの推進を担当、統括