マクロ経済 設備投資の回復を背景に2四半期連続のマイナス成長は回避へ
2021年4~6月期のGDPはプラス成長の公算
2021年4~6月期の日本経済は、3度目の緊急事態宣言による活動制限の影響で低調な動きが続いたものの、当研究所では2四半期連続のマイナス成長は回避できると予測している。筆者もフォーキャスターとして参加しているESPフォーキャスト調査の最新予想(7月8日公表)を見ても、4~6月期のGDP(国内総生産)成長率は前期比年率で0.19%とプラスが見込まれている。緊急事態宣言の発令を受けて、対面型サービスを中心に個人消費の減少が続くものの、輸出や設備投資の増加が見込まれるためである。
中小企業の設備投資に回復の兆し
GDPベースの設備投資は2021年1~3月期に前期比1.2%減少したものの、足元では回復の動きが強まっている。設備投資の一致指標である投資財出荷指数(除く輸送機械)を見ると、2021年4~5月の平均は1~3月期を7.4%上回っており、4~6月期のGDPベースの設備投資は2四半期ぶりのプラスかつ高めの伸びが見込まれる。
こうした動きの背景にあるのが設備投資のすそ野の広がりである。これまでは輸出回復を背景とした大企業製造業の投資回復に偏っていたが、最近では中小企業にも投資再開の兆しが見え始めている。
7月1日に発表された日銀短観6月調査によると、2021年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比7.1%増が見込まれているが、注目されるのは中小企業全産業の投資計画が同0.9%増となったことである。中小企業では計画が固まっていないなどの理由で通常は前年度比マイナスとなるが、今回は6月調査の時点でプラスの計画が示された。
中小企業の投資計画は調査が進むごとに上方修正される傾向が強く、仮に過去と同じペースで修正されると実績段階では前年度比23.9%増と高い伸びになる(図表)。大企業の投資計画は年度後半にかけてやや下方修正されるものの、中小企業の投資意欲が上向いてきたことは、設備投資の回復に向けた明るい材料といえる。
【図表】企業規模別の設備投資計画
リスクは新型コロナの感染再拡大
投資マインドが上向いてきた要因として挙げられるのがワクチン接種の進展による景気回復期待である。5月の連休明けから本格化したワクチン接種は徐々に加速し、7月5日には接種回数が5000万回、人口100人当たりワクチン延べ接種回数は40回に達した。米欧主要国のように、ワクチン接種の進展を背景に日本国内の経済活動も上向くとの期待が高まっている。
もっとも、ここにきてワクチンの供給不足に直面しており、感染抑制効果が出始めるとみられる接種回数(100人当たり60回程度)に達するのは8月、現在の米国と同等の水準(同100回)に到達するのは11月頃にずれ込むとみられる。2021年の夏場についてはワクチンによる感染抑制効果は期待できず、すでに東京都を中心に新型コロナの感染が再拡大している。4回目の緊急事態宣言の発令は東京都だけだが(沖縄県は宣言延長)、感染が全国に広がるようだと上向き始めた投資マインドが再び慎重化すると考えられる。
中小企業の投資は規模が小さく、小回りが利く分、先行き不透明感が強まる局面では手控えられやすい。設備投資は年度下期にかけて回復ペースを高めるとの見方をメインシナリオにしているが、下振れリスクも依然として大きいと想定している。