為替などのマルチバンク・ストリーミングサービスを手掛けるFXスポットストリームが、2016年5月に東京オフィスを開設した。このほど来日した同社CEO(最高経営責任者)のアラン・シュワルツ氏と、東京拠点のアジア・パシフィックセールス責任者であるキャンベル・クレーランド氏にサービスの特徴などを聞いた。(取材日:2016年7月28日)

FXスポットストリーム

FXスポットストリームは、リクイディティマッチの子会社として2011年12月にニューヨークで誕生。「FX取引の透明性と効率性の向上、そして銀行やお客様のコスト削減が設立の目的」と同社CEOのアラン・シュワルツ氏は明かす。

この目的を実現する仕組みの1つが、ECN(Electronic Communications Network、電子証券取引ネットワーク)上で取引するのではなく、同社のリクイディティプロバイダーである複数の銀行のなかから顧客が取引相手を選ぶマルチバンクのストリーミングサービスである。

ECNは約定するまで取引相手は分からない。しかし、同社のサービスであればプライスと相手を見たうえで約定することができるため、「取引の透明性と効率性が高い」とキャンベル・クレーランド氏は解説する。

もう1つの仕組みが固定フィーだ。固定フィーを取り入れることで、銀行にとっては取引量が増えれば増えるだけ1取引に対するフィーが割安になり、結果的に顧客側も有利なプライスで取引できるようになる。

さらに顧客側にはもう1つのメリットがある。通常は1つの銀行と取引すれば1行分のコストがかかるため、例えば12行と取引すればコストは12倍になる。「しかし、我々のサービスであれば1つの接続先を通じて複数の銀行と取引ができるので、12行と取引した場合、単純計算でコストは12分の1に抑えられる」とシュワルツ氏は話す。

2015年2月にはロンドン、2016年5月には東京にオフィスを開設した。「世界三大為替市場を中心にビジネスを展開しているが、現在は取引の半分以上がアジア市場に集中している。当社は大手銀行や地方銀行、運用会社、ヘッジファンド、FX会社、事業法人など、さまざまなお客さまとの取引がある」( クレーランド氏)

リクイディティプロバイダーリクイディティプロバイダーは2015年に三菱東京UFJ銀行やスタンダード・チャータード銀行、クレディ・スイス銀行の3行が加わったことで、全部で12行に拡大。対応商品は現在、APIやGUIを通じたFXのスポットやフォワード、スワップ、または貴金属(金・銀・プラチナ・パラジウム)だが、「2016年第4四半期から2017年第1四半期までにニューヨークでNDFの取引も開始する予定だ。その後、他の地域にも展開していく」とのビジョンをシュワルツ氏は描いている。