宮園 雅敬
年金積立金管理運用独立行政法人
理事長
宮園 雅敬

新型コロナウイルス感染症の感染拡大は社会経済の在り方を大きく変えることとなった。感染症との闘いはいまだに続いているが、年金制度の財政の安定、ひいては国民生活の安定に貢献するというGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の使命は今後も変わらない。この場を借りて、年金制度におけるGPIFの役割について改めて説明したい。

日本の公的年金制度は、社会全体で連帯し、現役世代の保険料負担で高齢者世代を支えるという「賦課方式」を基本としている。しかしながら、現在よりもさらに少子高齢化が進む将来に備えるため、保険料のうち年金給付に充てられなかったものを年金積立金として運用し、年金財政の安定化に活用することとされている。

厚生労働省による公的年金の財政検証によれば、前提としている概(おおむ)ね100年間の平均で年金給付財源の内訳をみると、保険料収入と国庫負担で9割程度が賄(まかな)われており、積立金から充てられる財源は1割程度となる。また、今後50年程度は積立金を取り崩す必要は生じない。

この年金積立金を運用する組織として、GPIFには「年金事業の安定に資するよう、専(もっぱ)ら被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的な運用を行う」ことが要請されている。GPIFが2001年度に現在のような運用を開始して以来、2020年12月末時点の累積収益額は約85兆円、平均収益率は年率3.37%、運用資産額は約178兆円となっている。

このように運用資産額が大きいため、GPIFは国内外の株式を5000銘柄以上、債券を1万4000銘柄近く保有している。また投資期間も長期にわたるので、GPIFは典型的な長期分散投資家といえる。こうした特性を鑑みれば、資本市場全体の持続可能性向上は我々の長期的なリターン確保のために大変重要であり、投資において環境・社会・ガバナンス(ESG)を考慮するESG活動に継続的に取り組んでいくことで、被保険者の皆様からの負託に応えていきたい。

今後も年金事業の安定、ひいては国民生活の安定に貢献するというGPIFの使命を全うすべく、役職員一同、全力で取り組む所存である。もっとも、GPIFは法令によって株式への直接投資ができないこともあり、運用の大半を外部の運用会社に委託している。我々が与えられた使命を果たすためには、運用業界の皆様との連携が欠かせない。今後とも皆様のご理解、ご協力を賜れれば幸いである。