AMC4社は、不良債権の杜撰な管理や巨額の貸出、頻繁な違反行為などを抱える

中国の銀行不良債権の受け皿である4大国策資産管理会社(AMC=asset management companies)の1つで、信用不安に陥っていると報じられた中国華融(Huarong)資産管理が注目の的になっている。市場では暗黙の政府保証がAMC4社に対して履行されることへの懸念が強い。

投資家は華融のファンダメンタルズにほとんど目を向けず、国有企業のうち国務院国有資産監督管理委員会が直轄し、政府の揺るぎない支援を受ける「中央企業」と同等に位置付けて華融債に資金を注いできた。それが、今になってとんでもないつじつま合わせの頭の体操を始めている。華融を中国長城(Great Wall)資産管理、中国信達(Cinda)資産管理、中国東方(Orient)資産管理と別扱いしようというわけだ。

これからの債券投資を考える

ところが他のAMC3社に関する現状評価をしてみたら、そのような考えは到底成り立たない。華融については、不良債権の杜撰な管理、巨額の貸出とシャドーバンキング(影の銀行)へのエクスポージャー、様々な金融業免許の取得、信頼性に乏しい金融資産の評価、頻繁な違反行為などが指摘されている。それらの問題のほとんどは、他の3社が抱える問題とまさに同じである。

不良債権処理会社として発足したが、金融業免許をかき集めて総合金融会社へ

4大AMCは、国有メガバンク4行(中国銀行、中国農業銀行、中国工商銀行、中国建設銀行)の上場を控えて、各行の不良債権処理を目的として1999年に設立された。以来、中国の金融システムにとって重要な機関と長らく見られていた。しかし時間経過とともに、AMC4社は事業範囲を不良債権処理から拡大し、総合金融会社への移行に踏み切った。その結果、当初唯一の存在理由であった不良債権業務は全体から見ればマイナーなものになり下がった。

華融はここ最近、不良債券処理離れしているとかなり酷評されていたが、2019年末の総資産に占める不良債券の割合は31.5%(REDD調べ、以下同)とAMC4社の中では2番目で、他と著しく異なるわけではない。格付け会社はAMCを中国の金融システムにおいて重要な機関とみなしてきた。しかし、4社全体で同割合が50%を切った段階からは、その重要性が意味するものは戦略的役割や機能から企業規模と政府出資企業という特性に変わってきたように思える。

4大AMCは、当初10年を期限とする不良債権処理会社として発足したが、2009年に期限を迎えると金融業免許をかき集め、総合金融会社へと軸足を移し始めた。中国では規制監督機関が業態別に縦割りで分かれているため免許集めは大変だったが、一方で中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)と中国証券監督管理委員会(証監会)の連携は限定的であるため、規制アビトラージの余地も得た。

銀保監会は2018年に銀行と保険の各監督監理委員会が統合されて発足したものだが、証監会は引き続き銀行業からは切り離されたままである。

国有企業以外が金融業免許を集めるのは、かつてはご法度だった。劉士余証監会主席(当時)は2016年、不動産最大手の万科企業に敵対的買収を仕掛けた宝能集団の姚振華董事長(会長)を公然と非難しとがめた。姚氏による敵対的買収の資金源は、自身が経営トップを務めた宝能傘下の生命保険会社「前海人寿」の保険料収入であったと一般的に考えられている。証監会が2017年に、姚氏に対し今後10年間、保険事業に関わることを禁止する処分を下したのはこのためだったようである。

金融資産は、シャドーバンキング向けを暗に指す「その他」まで多岐にわたる

巨大総合金融会社となったAMC4社のバランスシートに載る金融資産の種類は多様化した。手がける事業は、純粋な貸出に加えて、金融リース、信託、資産運用商品、富裕層向け資産運用、さらに通常はシャドーバンキング向けを暗に指す「その他」まで多岐にわたる。この複雑性はAMCが取得した様々な金融業免許に起因しており、各社の資産内容や事業の足取りを分析するのがますます困難になっている。

4大AMCの総資産に占める銀行部門全体の比率は25~30%であり、もはや不良債権処理会社と銀行からなる複合企業の様相である。華融の総資産に占める銀行部門全体の比率は2019年時点で26.14%と4社の間では2位だったが、東方に比べれば明らかに低い。4社の銀行部門の比率は過去数年確実に減り続けている。

華融を含めた4社のシャドーバンキングへのエクスポージャーの実態を評価するのは極めて難しい。それぞれ資産の分類方法が異なり、それが既に何年にもわたるため、各社間の比較をするのは容易ではない。そこでREDDでは株式、債券、資産運用商品は計算の対象外にして単純化し、比較可能性を確保するようにした。

バランスシート上では最もリスクの高い資産で、価値評価はもろい仮定と経営陣の裁量に左右されるレベル3資産の各社別比較は、特に興味深いものだった。ここでもまた華融が保有する非常に毒性の強いレベル3資産は総資産の22.63%と、他からかけ離れているわけではなかった。2019年末時点で東方は18.69%、信達は26.36%だった。

華融の自己資本比率は2018年以来、他の3社同様に改善している。自己資本を引き上げるために資本性債券を大量に発行したからである。華融の自己資本比率は、2018年は4社中3位だったが、2019年には2位に浮上したようだ。しかし、自己資本の中身をさらに深く見ていくと、2019年の普通株式などコアTier1比率は9.6%しかなく、信達の11.2%、長城の11.24%よりは低い(東方はデータなし)。

中国ではコアTier1自己資本比率の最低水準は9%と規定されている。参考のために、バーゼル銀行監督委員会の「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)」リストに入っている中国最大の商業銀行である中国工商銀行(ICBC)を例に挙げると、最低満たさなければならないコアTier1比率は8.5%であるが、実際には13.2%(2019年末)だった。

華融とその複数の子会社は、頼小民華融元董事長(会長)による収賄事件(同氏は死刑判決を受け、2021年1月に死刑が執行された)の他にも、銀保監会やその地方支部から様々な行政処分を受けてきた。違反行為には適切な融資組成またはデューデリジェンスの欠如が含まれていた。他のAMC3社と比較し、華融の行政処分の件数も際立っていることはない。

AMC各社の信用の質は、他社との比較ではなく単独ベースで評価する

以上見てきたように、華融と他のAMC3社は似通っているため、真の違いは中国の謎めいたいわゆる規制サイクルに関わるのかもしれない。4社すべてが伝統的な不良債権処理事業から重心を移し、シャドーバンキングのエクスポージャーを積み上げた。そしていずれもその資産の質は不透明であり、規制違反で処分も受けている。

結局のところ、投資家がとるべき賢明な対応策は、まずAMC各社の信用の質を他社との比較ではなく単独ベースで評価することだ。そして最も重要なのは、国策金融コングロマリットである4大AMCが享受しているはずの政府の支援を見極めるべきであろう。

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