経済指標を読み解く 1~3月期実質GDP、個人消費動向の違いから、米国はプラス成長、日本はマイナス成長か
日米とも、GDPの中で最大の支出項目は個人消費
GDP(国内総生産)の需要項目で、シェアが一番大きいのは個人消費だ。米国でのシェアは7割弱で、日本でのシェアは55%程度だ。米国ではGDPの実質個人消費とピッタリ一致する月次統計がある。
米国の2020年10~12月期の実質GDP(季節調整済み年率)は18兆7944億ドルで、うち個人消費は12兆9991億ドルだ。10~12月期GDP最終推定値は商務省から2021年3月25日に発表されたが、翌営業日の3月26日には同じ商務省から「個人所得・個人消費」という統計の2月分の月次統計が公表された。
そこには月次の実質個人消費(季節調整済み年率)が記載されている。そして2020年10~12月分の月次のデータ(13兆956億ドル、13兆110億ドル、12兆8907億ドル)を平均すると、前日に発表された四半期データである10~12月期の実質個人消費の数字とピッタリと重なる。
月次の実質個人消費は、2021年1月分13兆2819億ドル、2月分13兆1192億ドルと政策効果もあってしっかりした数字で発表されている。4月29日公表予定の1~3月期の実質GDPのうち、実質個人消費の2カ月分がすでにわかっている。
3月分・小売売上高の前月比は雇用の増加、経済対策による新たな直接給付などに後押しされプラス9.8%の大幅増加となった。仮に実質個人消費の3月分をプラス3.6%と置くと、1~3月期の実質個人消費は前期比プラス2.6%程度、前期比年率プラス10.6%程度となる。ここに実質個人消費のシェアの約0.7を掛けてみると、実質個人消費が実質GDPを押し上げる前期比年率寄与度はプラス7.3%程度と計算できる。過去の数字が若干修正される可能性があるものの、1~3月期の実質GDPでは個人消費の前期比年率寄与度が強めの数字になることがわかる。
アトランタ連銀がリアルタイムに実質GDP を予測することを目的に発表しているGDPナウは、最新4月16日時点で前期比年率プラス8.3%である。また同時点のニューヨーク連銀のナウキャスト指数はプラス6.8%とプラス成長が予測されている。
日本の1~3月期実質GDPの個人消費はかなりのマイナス寄与に
日本には米国のように3カ月分を足して3で割るとピッタリGDPの個人消費に重なるという月次の統計はないが、かなり近い数字になるものはある。それは内閣府が「月例経済報告」の個人消費の総合的な基調判断材料として作成している消費総合指数である。厳密には、個人消費から対家計民間非営利団体最終消費支出を引いた家計最終消費支出(全体の97%)に合わせたものだ。2021年1月分が92.6で、10~12月平均は95.8である。1月分対10~12月平均比はマイナス3.3%で、年率換算するとマイナス12.7%になる。55%程度のシェアとして実質GDPに対する前期比年率寄与度を計算するとマイナス7.0%程度である。
同様の月次データをみると、家計最終消費支出の推移を様々な月次データによる時系列回帰モデルによって推測している総務省の総消費動向指数の1~2月平均の対10~12月平均比はマイナス2.7%、年率換算するとマイナス10.2%だ。実質GDPに対する前期比年率寄与度はマイナス5.6%程度となる。
また、財とサービスに関する各種の販売・供給統計の月次データから算出している日銀の実質消費活動指数(旅行収支調整済)の1~2月平均の対10~12月平均比はマイナス3.0%、年率換算するとマイナス11.4%だ。実質GDPに対する前期比年率寄与度はマイナス6.3%程度となる。
いずれにしても緊急事態宣言が再発令された1~3月期の日本の個人消費はかなりのマイナスになり、5月18日に公表される1~3月期GDPの押し下げ要因になることが予想される。
他の需要項目の動向、外需マイナス寄与、設備投資はプラスか
実質輸出入の動向をみると、輸出の1~3月期・前期比はプラス1.9%の増加になった。控除項目の輸入は同プラス1.9%の増加になっている。財のデータでみると、1~3月期の外需・財貨の前期比寄与度は若干のプラスになる可能性がありそうだ。
設備投資は前期比プラスになりそうである。関連データである投資財出荷指数(除.輸送機械)の1~2月平均の対10~12月平均比はプラス6.6%の増加である。なお、このデータは2月分確報値発表時に年間補正が実施された。供給サイドから推計される1~3月期(第1次速報値)の実質設備投資は前期比増加になる可能性が大きいだろう。
以上のようなデータをもとに総合的に判断すると、5月18日に発表される1~3月期の実質GDP第1次速報値は個人消費の寄与が大きくマイナス成長になる可能性が大きそうだ。
ちなみに、4月のESP フォーキャスト調査によると、1~3月期の実質GDP前期比年率はマイナス6.09%のマイナスになるというのが予測平均値だ。
【図表】日米・実質GDP成長率(前期比年率推移)
日米の1~3月期の実質GDP成長率が逆方向を向く理由は、最大の需要項目である個人消費がプラス・マイナス逆方向に大きく動くことが主因である。