第3の伝統資産?

大浦 裕一郎
ラッセル・インベストメント
コンサルティング部
コンサルタント
大浦 裕一郎

2000年から適用された退職給付会計や複数の市場危機(IT<情報通信>バブル崩壊や金融危機)の影響から、企業年金においては株式リスク回避とインカム選好の流れが加速した。しかし、継続的な金融緩和による金利低下で、インカムに対する期待は、それまで企業年金が基本的な投資対象としてきた投資適格債券のみでは満たせなくなってきた。そこでポートフォリオの一部において相対的にクレジットリスクの高い債券戦略(以下、高クレジットリスク債券)を特化型で採用する動きが拡がった。

利回りと金利上昇リスク回避の両立を意識

投資対象の検討に当たっては、利回りの大きさのほか、将来的な金利上昇による債券価格下落リスク回避も重要な要素になってきた。ハイイールド債券では、短期ハイイールド戦略がデュレーションリスクやリスク対比の期待リターンの点で好感されてきた印象だ。変動金利や有担保といった特性を持つバンクローン戦略採用の動きもあった。

これからの債券投資を考える

各戦略とも、債券ポートフォリオの一部を担うサテライト的位置付けであるからといってリスクの高い戦略が選ばれるのではなく、むしろ戦略単体として安定的なものが選好されてきたことが特徴だ。複数の債券種別に対し投資を行う債券アンコンストレインド戦略(マルチクレジット戦略)も、基本的にデュレーションを抑制し、企業年金には難しい機動的な資産配分変更を期待された戦略として浸透してきた。金利がそれほど上昇してこなかったため、通常のアクティブ運用対比運用実績としては振るわないようにみえるケースもある。新興国債券への配分も増えたが、この点は次回取り上げる。

上記以外にも、インフレシナリオやリターン安定性を検討材料として、国内外のインフレ連動債や社債の持ち切り運用、CLO(ローン担保証券)などが検討されてきたが、高クレジットリスク債券ほど広く浸透していない。

景気サイクルへの対応には引き続き課題

もう一つ意識しなければいけない要素が株式との相関だ。高クレジットリスク債券は、2020年前半改めて意識されたように投資適格債と比べ景気サイクルの影響を受けやすい。

またスプレッドが過去長期平均よりも低下したり、仮にデフォルト率上昇の観測が強まったりすれば、従来よりリスクリターン効率の見通しは落ちることになる。インカム期待を満たす運営には、下方リスクを抑えるために、分散をはじめとしてリスク管理を積極的に行う必要がある。

既存の高クレジットリスク債券内で採用する運用機関を増やすよりは、既存とは異なる信用リスク主体(例えば、借り手を企業<社債>から個人、不動産などへ。地域を米国から欧州へ……など)へリターンサイクルの分散を図ることがポートフォリオの安定性には寄与する可能性があるだろう。

【図表】高クレジットリスク債券戦略 分散の視点

【図表】高クレジットリスク債券戦略 分散の視点
出所:ラッセル・インベストメント