米コンサルティング企業のマッキンゼーアンド・カンパニー日本支社は2020年11月27日、報道関係者を対象に「日本における脱炭素に向けたシナリオ」と題したメディアラウンドテーブルをオンライン配信形式で開催した。

山田唯人,生田義貴氏
当日登壇したパートナーの山田唯人氏(左)と、アソシエイトパートナーの瓜生田義貴氏(右)

世界中で二酸化炭素の排出量をゼロ、あるいは排出と同じ量の吸収で排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」にする取り組みが加速している。

メディアラウンドテーブルに登壇したマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社パートナーの山田唯人氏は、「現状の排出ペースが継続すれば今後50年間で異常気象の発生リスクが約75倍になる」と語り、こうした気候リスクによって社会が被る負のインパクトの大きさに警鐘を鳴らす。「当社の試算では、グローバルに見て相対的にアジア圏が被るインパクトが大きい。日本企業も菅義偉政権の『2050年までにカーボンニュートラルを実現』するという目標に積極的に向き合う必要がある」(山田氏)。

とはいえ、高い目標に対し何から手をつけたらいいか混乱しているのが日本の実情だろう。当日は、同社のまとめた脱炭素に関するレポートに基づき、日本がクリーンな成長を遂げるための道すじについての説明が主題となった。その中で同社アソシエイトパートナーの瓜生田義貴氏は、「脱炭素が比較的難しいとされる『産業』セクターの割合が高く、目標達成のハードルが高くなっている」と日本固有の課題に言及した。

課題解消のアプローチについて山田氏は、金融セクターの果たす役割の大きさを強調する。「海外ではアクティビストの影響から、一定程度の環境対策を融資の条件として開示する金融機関が増えている。日本でも融資条件に脱炭素に向けた施策を盛り込むことで、金融機関が目標達成に大きな存在感を示すと考えている」(山田氏)。

そもそも気候変動は、金融業界にとってもリーマン・ショックのようなリスク伝播を引き起こしかねない懸念事項だ。海外ではすでに気候リスク不安から不動産価格の下落が始まっている地域もあるという。事業会社が中心だと思われがちな脱炭素推進だが、金融機関もドライバーとして最前線に立つ必要があるだろう。