二宮 雅也
損害保険ジャパン 取締役会長
一般社団法人 日本経済団体連合会 企業行動・SDGs委員長
一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA) 理事長
二宮 雅也

新型コロナウイルス感染拡大が社会や金融市場にも大きな影響を与えており、このような先の見通せない不確実な時代において重要な価値観となるのが「持続可能性(サステナビリティ)」である。

国際社会では、サステナビリティの観点から様々な取り組みが進んでいる。中でもSDGs(持続可能な開発目標)は、人類の英知の集大成であり世界が一致して取り組むべき唯一の方策であると考える。

我が国はSociety 5.0 という未来の人類社会のコンセプトを打ち出し、様々な制約から解放され、誰もが、いつでも、どこでも、安心して、自然と共生しながら、生き生きと、快適に暮らすことのできる人間中心の社会を目指している。一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)はそのための戦略としてSociety 5.0 for SDGsを打ち出し、デジタル革新を推進力に、多様な人々のイマジネーションの「想像力」とクリエイティビティの「創造力」の融合により、社会課題を解決し、価値創造する社会の実現をめざしている。

2020年3月に経団連は、東京大学、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とともにSociety 5.0 for SDGsの実現に向けた共同研究報告書を公表した。Society 5.0の実現を目指すことにより2030年までに250兆円の成長機会が生まれると試算し、そのことによるSDGsの実現にチャレンジする企業の取り組みを後押しするために、6600兆円以上と言われている資金の投資環境を整備することが重要であると提言している。ESG(環境・社会・企業統治)投資の進化こそがイノベーションとSociety 5.0、さらにはSDGsの実現をもたらすのである。

また国内では新たな動きとして、休眠預金等活用法のもと国民の資産である休眠預金を「若者を含む子どもの支援」や「日常生活を営むうえで困難を有するものへの支援」、「地域活性化等の支援」の3分野の社会的課題の解決に活用する取り組みが始まっている。この壮大な社会実験ともいえる法律に基づいた事業の具現化を使命として、オールジャパン体制で設立されたのが一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(通称:JANPIA)である。政府、自治体、産業界、NPO(非営利組織)などが連携し、休眠預金を活用して、社会的に脆弱な人々と地域の支援を行う実行団体を支えることを通じてSDGs達成にも貢献していくという、日本らしいユニークな取り組みにつながると確信している。

2030年へ向けて、人間中心の未来社会を創り上げていくためには、ESG投資の進化や休眠預金の活用など、社会を変える意思をもった新たな投資の拡大が決め手になると考えている。