足元20年で20倍超に拡大したというプライベートエクイティ(PE)のセカンダリー市場。キャピタル・ダイナミックスのジョセフ・マークス氏は2026年4月9日、東京都内で開催されたJ-MONEYカンファレンス(主催:J-MONEY)で、そのPEセカンダリー投資のメリットや市場トレンド、小規模案件に特化した同社の投資戦略を語った。

第三の流動化手段へ

ジョセフ・マークス氏
キャピタル・ダイナミックス
セカンダリー投資部門ヘッド
シニア・マネージング・ディレクター
ジョセフ・マークス

今日皆様に知っていただきたいのは、PEセカンダリー、つまり流通市場におけるPEの投資機会だ。PE市場の発展や流動性ニーズの拡大を追い風に急拡大を遂げたPEセカンダリー市場は、2025年には2,260億ドル規模まで成長(※1)。過去の成長トレンドや市場構造の変化を踏まえると、今後10年で年間1兆ドル市場になる可能性がある。PEセカンダリーはいまや、M&A(合併・買収)、IPO(新規株式公開)に続くPE市場の「第三の恒久的な流動化手段」になりつつある。

※1 出所:「2025 Secondary Market Report」 Evercore PCA, 2026年2月

本題に入る前に、少しキャピタル・ダイナミックスについて紹介したい。当社はPEとクリーンエネルギー・インフラ投資を主に手掛けるオルタナティブ運用会社だ。運用・助言資産は150億ドル超で、グローバルに13拠点を構える(※2)。30年以上の投資経験を有し、プラットフォーム全体で7,000社超のポートフォリオ企業をフォローしながら、世界中のGP(ファンド運用者)との関係を深めてきた。

※2 2025年12月31日現在。運用資産はコミットメント総額に基づく。助言資産にはモニタリング・管理等を行う資産を含む。

PEセカンダリー投資では、このような広範な企業へのカバレッジと、GPとの関係性が重要な競争力となる。流通市場におけるPE取引は、買い手が売り手に取得価格を支払い、売り手のLP(ファンド投資家)持分を譲り受ける。ただしLP持分の移転にはGPの承認が必要なため、GPが拒否すると取引できない。したがって、世界中のファンドマネージャーとの関係構築が不可欠となる。

分散が下方リスクを抑制

PEセカンダリーの投資妙味は多様だ。まず、機動的に取引を行うことで、ディスカウントされた価格で質の高い案件を取得できる可能性が高い。それに、投資対象の多くはすでに投資が進んだLP持分であるので、プライマリー市場でPE投資するときにありがちな、投資対象の価値や実態がよく分からない「ブラインドプール」状態が解消されていることが多い。

私はよく、PEセカンダリー投資を、「3分の2ほどコースを走って、勝ち馬がだんだん見えてきたところで馬券を買う」ようなものだと例えている。同様に、投資から資金回収までのタイムラグ、いわばJカーブも、成熟した段階にある案件に投資できるPEセカンダリーでは緩和できる。

さらに言えば、ビンテージ・セクター・戦略・マネージャーなどの分散が投資開始と同時に図れる点もメリットになる。とりわけビンテージ分散は、タイミングをずらして新規投資を行わなくとも、古いビンテージを持つ案件をセカンダリー市場で取得すれば、過去に遡る形で分散を拡大できる。

こうした分散構造の強さから下方リスクが抑制でき、優れたリスク対比リターンが期待できる点もPEセカンダリー投資の大きな利点だ。

小型案件に残る投資機会

魅力多いPEセカンダリー投資だが、市場のどこに注目するかは重要だ。Evercoreによれば、2025年時点で同市場の利用可能資本、つまりドライパウダー(待機資金)は2,160億ドル規模に達したが、その半分以上が上位10社程度の巨大ファンドの資金だ(※3)。そうしたファンドの投資先となる大型案件は、取引に仲介業者が深く関与し、買い手となるファンド間で取得価格・スピードの競争が激しく、投資妙味が薄くなりつつある。

※3 出所:「2025 Secondary Market Report」 Evercore PCA, 2026年2月

他方、“大型オークション”案件以外の部分、特に案件規模5,000万ドル未満の小規模PEセカンダリー市場には、低い競争率と大きな非効率性が残り、投資機会に繋がっている。小規模案件は、取引額ベースでは全体の4分の1程度であるものの、案件数では大型案件を凌駕する。資本量がモノを言う大型案件と異なり、小規模案件では売り手との関係性、分析力、ストラクチャリング力が価格規律を保つうえで競争力になる。そこに優位性を持つ当社は、小規模案件に特化したPEセカンダリー投資を手掛けている。

■買い手のドライパウダー別 取引金額内訳
■買い手のドライパウダー別 取引金額内訳
出所:「Secondary Market Overview Report, Full Year 2025」Campbell Lutyens

例えば、小規模案件の場合は、比較的小規模なLPを売り手とする相対取引が多く、売り手の動機や制約を把握し交渉することで柔軟に条件を組み立てられる。そうした交渉力に、厳格かつ価値重視の分析・意思決定を掛け合わせることで、当社のセカンダリー投資では、市場平均を下回る価格で投資できる機会を見出してきた。

多くの場合、セカンダリー市場ではGPのポートフォリオ評価が取引価格の参考とされるが、大半のGP評価は楽観的だ。当社はその上方バイアスをそのまま受け入れず、評価手法の検証などを通じて、ポートフォリオを独自に再審査する。

こうした堅実な投資判断に立てば、PEセカンダリー投資は市場サイクルを通じて価値を生む。特に市場の下落局面でしっかりディスカウント価格で案件取得ができれば、①取得価格のディスカウント分、②市場回復局面におけるマークダウン(価値低下)分の回復、③その後の成長局面でのさらなるアップサイド―の3つがリターン源泉として狙えるメリットがある。

「GP主導型」を組み合わせる

せっかくなので、PEセカンダリー市場のトレンドについても触れたい。まず最近耳にする、PEセカンダリーの売り手が「価値を見出せないPEだから売っている」との誤解について。実際には、短期的な売却は規制圧力、中期的には主要GPへの投資集中の解消や戦略の方針変更、長期的には資産配分のリバランス目的といった、健全な理由で売っているケースがほとんどだ。上場株式ポートフォリオを入れ替えるのと同じく、PE持分の入れ替え・売却はいまや当たり前の選択肢だ。

最近拡大している、GPが自ら保有する資産を新たなファンド(継続ファンド)に切り出す「GP主導型」のPEセカンダリー取引も、正しく理解しておきたい。かつては問題資産の先送り策と見なされていた向きが確かにあったが、現在は、成熟した優良PE案件をファンド満期を超えて保有し、価値創造を継続するための手段として活用されている。

GP主導型の対象となる優良PEには、比較的高いマルチプルが期待できる特徴がある。そこで、市場の下落・調整局面では通常のPEセカンダリー投資である「LP主導型」中心にポートフォリオを構築し、先述の市場回復期~成長期におけるリターン成長を享受しながら、段階的にGP主導型にポートフォリオをシフトしていくなど、市場サイクルを睨みながら両者を組み合わせたい。

最後になるが、PEセカンダリー領域でも、一定の流動性を謳うエバーグリーン型ファンドが急拡大している。こうしたファンドは四半期ごとに成果を出す圧力に押されて案件獲得するケースも多いため、運用コストが高くなる傾向がある。長期目線の機関投資家の選択肢としては、当社のPEセカンダリー投資のように、クローズドエンド型で、適切な時間をかけてIRR(内部収益率)を高めていくアプローチが合理的だと考えている。

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