財政リスクに備えておく
世界の債務水準は2030年にGDP比100%に達する見込み

グローバルマーケット統括本部 副会長
チーフクレジットストラテジスト
チーフESGストラテジスト
中空 麻奈
過去10年間、世界の政府債務は持続的に拡大し、対GDP(国内総生産)債務比率は新型コロナのパンデミック以降、新たに急上昇している。IMF(国際通貨基金)は2024年の世界の債務が過去最大となる世界GDPの92.3%相当に達し、2030年までには100%近くへ拡大すると推計している(図表1)。
もっとも、IMFの債務リスク評価の枠組みによると、基本シナリオとショック・シナリオの間で今後3年間にわたり対GDP債務比率が20%ポイント乖離すると推定される。つまりは、望ましくない代替シナリオになれば、各国の債務動向が大幅に悪化する可能性があるということであり、その場合、財政リスクがさらに大きくなるかもしれない。
財政問題は懸念材料にはなるが、それが理由で突発的にマーケットが大混乱に陥るということはないであろう。しかし、だ。2025年の下期にはなくとも2026年の下期や2027年上期には、世界の債務問題が蓄積増大化する公算は否定できない。財政リスクに備える意味でもどの国に注意を払う必要があるか、見ておくことは有益であろう。

※地域はIMF分類
世界の債務問題
世界の債務拡大の大部分が先進国や主要新興国によるものである点は懸念すべき状況と考えられる。これは国内外からの資金調達能力をある程度反映するものだが、そうした国々の大規模な資金調達ニーズや支出削減の難しさが財政の一層の脆弱性を物語っている。また、それは大国であれ小国であれ、新興国による資金調達リスクの増大をも示唆するものである。
実際、過去3年間には、従来のような新興諸国ではなく先進諸国の財政動向に関連したある種のリスクオフが見られた。たとえば、英国の2022年のトラス・ショック、米国の債務上限を巡る持続的な対立や、財政見直しや債務を巡る昨年のフランスの緊張など、上げれば枚挙に暇がない。これらはすべて債務の拡大に絡んでリスクが高まっている状況を反映するものである。
多面的な債務問題を見ていくため、BNPパリバ証券では独自の指標を用いて、債務の懸念状況を見ていくことにした。まずは脆弱性ヒートマップを参考にする。先進国と新興国について、それぞれまとめたのが図表2、3である。
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