「関税引き上げを含む保護主義の高まり」、「米国の景気悪化」が7月調査現在の2大リスク要因

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
宅森 昭吉

ESPフォーキャスト7月調査(回答期間:2025年6月26日~7月3日、回答者37名)で、2025年4~6月期の実質GDP成長率(前期比年率)は+0.01%、前回6月調査(+0.04%)からわずかに下方修正された。設備投資や輸出は上方修正されたが、輸入も上振れ、外需寄与度が下方修正となった。4~6月期の成長率について、プラス成長予測19名、マイナス成長予測15名、横這い予測3名と見方が分かれている。その後は27年1~3月期まで前期比年率+0%台での成長が続くというのが平均的予測だ。

消費者物価(生鮮食品除く)の前年比上昇率は、2025年4~6月期+3.37%と6月調査+3.18%を0.19%ポイント上回った。その後は低下が続き、26年1~3月期に+2%を割り込み、その後は1%台後半で推移するとみるのが平均的予測だ。

日本銀行の金融政策については、2025年12月末の日本の政策金利(現行0.5%程度)については、「0.5~0.6%」が最多となり、回答者の6割超が年内の金利据え置きを予測する。2026年6月末、12月末は「0.7~0.8%」の回答が最も多い。米国の政策金利(現行4.25~4.50%)については、2025年12月末に「3.75~4.00%」、2026年6月末に「3.5~3.75%」、12月末に「3.25~3.5%」低下するという予測が最も多い。

半年から1年後の景気リスク(3カ月ごとに調査、3つまで複数回答)は、7月調査では、「関税引き上げを含む保護主義の高まり」が30名で、4月調査の31名から減少したものの、2位から1位に上昇した。「米国の景気悪化」が28名で4月調査の32名から減少し4月調査の1位から2位に後退した。この2つが4月調査に続き7月調査でも最大のリスク要因であり、注視していくことが肝要だ。

■「ESPフォーキャスト調査」特別調査結果
ESPフォーキャスト調査結果
出所:日本経済研究センター
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6月「景気ウォッチャー調査」では暑さによる夏物消費好調、トランプ関税の悪影響緩和などで、現状、先行きとも判断DIは2カ月連続改善。

2025年6月の景気ウォッチャー調査で、現状判断DI(季節調整値)は、現状判断DI(季節調整値)は前月差0.6ポイント上昇し、45.0になった。北海道のコンビニ店長の「気温の上昇もあって、アイスや飲料などの暑い日に売れる商材の販売量が増加している。特に、ボーナス支給日とみられる6月15日以降の動きが良くなっている。そのため、景気は3カ月前よりも良くなっている」というコメントに代表されるように、暑さによる夏物消費の効果やボーナスの影響で家計動向関連DIは44.4と前月から0.3ポイント上昇した。企業動向関連DIは1.9ポイント上昇し46.1になった。6月の全体の現状判断DIは45.0に2カ月連続上昇。家計動向現状判断DIも2カ月連続上昇。企業動向現状判断DIは5カ月ぶりに上昇だ。

先行き判断DI(季節調整値)は、前月差1.1ポイント上昇し、45.9になった。こちらも2カ月連続の上昇だ。なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差0.3ポイント上昇の45.1となり、先行き判断DIは前月差0.8ポイント上昇の46.9になった。

内閣府の6月の現状に関する基調判断は、「景気は、このところ回復に弱さがみられる」で5月と同じだった。一方、先行きについて、6月は「夏のボーナス及び賃上げへの期待がある一方、引き続き価格上昇や米国の通商政策の影響への懸念がみられる」と、こちらも5月と同じだった。

6月「価格or物価」関連判断DIは、40.4で5月から3.9ポイント上昇し、2024年12月の42.8以来の40台に戻った。6月の現状判断コメント数は261名と2カ月連続減少し、今年最少になった。幾分落ち着いた動きになったのは、高止まりしていたコメの販売価格が低下してきたことが大きいだろう。6月「価格or物価」関連先行き判断DIは40.9で2カ月連続40台になった。コメント数は332名で2月の400名から4カ月連続減少、2024年11月298名以来の低水準になった。

6月もトランプ関税に振り回されが、悪影響度は幾分和らいだ。5月まで「関税」関連DIは現状、先行きともに3カ月連続30台の低水準だったが、6月は各々41.1、43.0と40台になった。4月のコメント数が現状判断104名、先行き判断249名と直近のピークだったが、2カ月連続減少し、6月は現状判断45名、先行き判断は115名になった。

なお、トランプ大統領は4月2日に「相互関税」を公表。大半の国に一律10%の基本税率を課し、さらに国・地域別に税率を上乗せするとし、その後、上乗せ分は7月9日まで適用を一時停止するとしていた。7月に入るとトランプ大統領は貿易相手国に8月1日からの新たな課税措置を書簡で通知した。日本からの輸入品に対しては25%の関税を課すと通知した。日本に対する関税は、4月に発表された24%から引き上げた。トランプ大統領は交渉期限を8月1日まで延長していて、日米通商協議がどう決着するか予断を許さない状況だ。

■2024年12月~2025年6月調査:「関税」関連コメント集計表
(注)◎「良」、○「やや良」□「不変」、▲「やや悪」、×「悪」
出所:内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成
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