株式 トランプ2.0の「トリセツ」─減速・緩和・分断
国防は豊かさよりもはるかに重要

ウェルスマネジメントリサーチ部
部長・GIC議長
チーフ・グローバル投資ストラテジスト
宮本 諭
米国トランプ政権の関税政策の発表を契機に下落したS&P500株価指数は、その後の通商交渉の進展もあり、下落前の水準を取り戻した(執筆時点)。
関税による米国の財政・貿易赤字の削減と外国製品の締め出しは、景気の大幅な悪化なくしては実現困難なジレンマ的アジェンダであり、上手くいかなければ関税軽減という撤退戦が始まるのは自然な流れだった。同時に、今回の関税問題を巡り、トランプ大統領の「ビジネスマン」としての柔軟な側面が改めて見られたことも市場は好感したと考えられる。
とはいえ、トランプ氏の「ビジネスマン」に期待しすぎるのも禁物だろう。トランプ氏は短期的な経済や市場のロジックに囚(とら)われすぎて、アダム・スミスも述べた、より優先度が高い安全保障の確保という目標を犠牲にするつもりはないと考えられるからだ。
トランプ氏のこれまでの言動からは、国防の観点も含め「米国の再工業化」は堅い信念であることが推察される。グローバリゼーションのもとで進んだ米国製造業の空洞化への危機感は強く、足元の関税交渉で多少妥協したとしても、大きな方向性は変わらないだろう。
加えて米国が、米国にとっても経済的な利益が大きかったとみられる国際協調主義から距離を置きつつあることも、国防重視のあらわれとみることが可能だろう。相対的な国力の低下に自覚的な米国は、国際機関を介した多国間交渉よりも、二国間交渉に傾斜している。
また、同盟国にも防衛力の向上を求めるなど、重武装化による平和維持を重視する方向だ。結果として、国際政治はパワーポリティクス中心の構造へと傾斜し、米中ロの戦略トライアングルは、勢力均衡の計算に基づいた安定が模索されるだろう。
米大手ハイテクは引き続き有望
では、このようなトランプ2.0の世界の中で株式投資戦略は如何にあるべきか。
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