J-MONEYカンファレンス「『超分散』時代へ突入したプライベートアセット投資」 【特別講演】トランプ2.0と世界経済「トランプ関税」が映し出す日本経済の弱点。「常識人」? 政権内のバランスに腐心
J-MONEYカンファレンス「『超分散』時代へ突入したプライベートアセット投資〜新たな投資機会へのアプローチと運用戦略を探る〜」が2025年4月11日、東京・日本橋のベルサール東京日本橋で開催された。当日のプログラムから、ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏による「特別講演」の内容をダイジェストでお伝えする。
世界経済の成長率が3%を割ると過去には危機的状況が発生

ニッセイ基礎研究所
総合政策研究部
専務理事 エグゼクティブ・フェロー
本日お手元に配付した資料は1週間ほど前に作成したものだが、もう使えない。それほどトランプ大統領が日夜発信する政策が世界中を振り回し続けている。
今、私たちのチームで今年2025年の世界経済見通しを議論している。これが、とても悩ましい。
私自身はトランプ大統領を「常識人」と見ており、アメリカも世界も壊さないと考えてきた。したがって今年は昨年並みの低成長が続くと判断していたが、ここ1、2 週間の関税措置の大混乱で状況は変わってきた。メインシナリオをどれくらい下方修正するか、という話になっている。
悩ましいポイントが2点ある。1つはトランプ政権の中で、関税引き上げを強硬に主張してきたナバロ通商・製造業上級顧問と、穏健派のベッセント財務長官との関係だ。ナバロ氏はトランプ第1次政権の時も上級顧問で「トランプ絶対主義」の人物。相互関税などの強硬策を採り入れてきたのは、トランプ氏のナバロ氏への配慮という部分もある。
ところが直近、米国債の金利が急上昇し、住宅ローン金利などに連動する事態となり、ベッセント氏が「これはまずい」とトランプ氏に進言した。トランプ氏の中核的な支持層である労働者に悪影響を及ぼしかねないからだ。
おそらくトランプ氏は今後、ナバロ氏の顔を立てながら、株や債券価格が下がるような事態になると、関税などの政策をコントロールしていくのではないか。それがどの程度か現時点では測れない。
2つ目は関税発動の規模がどの程度か、という点。【図表1】を見てほしい。これはIMF(国際通貨基金)が出した世界経済の成長率の見通しだ。
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