外国為替 トリプルレッドでドル高は続くか。米国債は格下げの公算大
「悪い金利上昇」と英国の例
米国では、大統領と上下両院の過半数勢力をすべて共和党がおさえるトリプルレッドが少なくとも次の中間選挙まで続く見通しだ。今後、トランプ氏の掲げる財政拡張策により、長期金利の上昇とドル高が広く見込まれている。
しかし、近年の英国で観察された通り、金利上昇が仮に「悪い金利上昇」とみなされれば、逆に通貨安へと波及する恐れもある。実際、米国は英国と同じく経常赤字国であり、政府部門の債務を国内の民間貯蓄だけでは賄うことができない。その上、IMF(国際通貨基金)によれば、対名目GDP(国民総生産)比でみた経常赤字、公的債務残高(グロス、ネット)のいずれも2024年末では英国に劣る見込みだ。
こうした状況下、ムーディーズ・レーティングスも2024年9月のレポートで、財政悪化が続く場合の米国債の格下げを示唆した。米国債の格付けを巡っては、既にS&Pグローバル・レーティングスが2011年8月に、フィッチ・レーティングスも2023年8月にそれぞれトリプルAからダブルAプラスへ格下げしている。
近い将来、欧米の主要格付け3社の格付けがダブルAで並ぶ可能性が高い状況だ。そうなれば、海外の投資家は米国債の信用リスクへの対価(プレミアム)として、利回りの上昇(債券価格の下落)and/orドル安を求めていくことが合理的となる。
他方、ドルは基軸通貨であり、ポンドなど他通貨と同列に語ることも好ましくない。事実、2023年8月、フィッチ・レーティングスが米国債を格下げした際、米国の長期金利の上昇はタームプレミアムの上昇を伴う「悪い金利上昇」だったとみられるが、素直にドル高が進んだことからも明らかだ(図表)。
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