中国の再成長は重力に逆らうようなもの

アリシア・ガルシア・ヘレーロナティクシス、アジア太平洋地域チーフエコノミスト兼香港科技大学教授
ナティクシス
アジア太平洋地域チーフエコノミスト 兼 香港科技大学教授
アリシア・ガルシア・ヘレーロ

この質問を10 年前にされたなら、明確に「不可能」と答えたであろう。中国経済の規模はインドの5倍から6倍大きいが、インドの経済成長率は、とりわけ2022年以降は中国のそれよりも明らかに高く、その状況が近い将来に変わるとの見通しもない。このことは、大きなショックがインド経済を襲うことが無ければ、今後少なくとも30年間インドが都市化のプロセスを完了するまで、インドの経済規模が中国のそれに肉薄し続けることを意味する。

このことがインド経済を中国経済より大きくするかどうかを述べることは難しい。というのも、それは中国経済がどの程度のスピードで減速するかだけでなく、インドが都市化や人口増加、極めて有利な外部環境(欧米はインドを中国に対する最も明白なヘッジ先と捉えている)といった現在容易に入手できる、成長を生み出すための果実の恩恵をどれだけ長く受けられるかにも依存しているからだ。

そうした不透明要因の中で、最も予測が易しいと言えるのは、恐らく中国経済の構造的な減速スピードではないだろうか。中国の経済成長率は2010年以降、それまでの10%超から現在の辛うじて5%という水準にまで低下している。2019年に中国の1人当たりGDP(国内総生産)が1万ドルに達して以降、新型コロナウイルス禍による成長率の極めて大きな変動によって隠されたとはいえ、成長率は減速スピードを増している。

1人当たりGDPが1万ドルを超える中国経済が5%の成長を実現したことは極めて優秀な実績であり、それを凌駕することは極めて難しいと思われる。1人当たりGDPが1万ドルを超えた後、10年間にわたり平均5%超(具体的には5.5%)の成長を達成した国は韓国のみである。

換言すれば、中国のように成長率が構造的に減速することは、どの経済にとっても正常な現象ということだ。つまり、成長率を今一度加速することは重力に逆らうようなものであることを意味している。

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