【特別インタビュー】野村アセットマネジメント パイロットファンドで商品開発力に磨き。特色ある「アジア」の資産運用会社へ
「つみたてNISA」の投資総額は今後20年間で11兆円の可能性
資産運用会社の合併が続くなか、競争力の源泉であるAUM(運用資産残高)をいかに増やしていくか。
渡邊 当社は1960年には公募投資信託を、1995年にはETF(上場投資信託)を国内で初めて設定した。ETFの国内シェアは現在45%程度だが、個人投資家にはまだ浸透の余地がある。「先進性」は当社が重視している経営スタンスであり、どのような経済環境下でも新しい商品・分野にチャレンジしていきたい。当社ならではの先進性を生み出す仕組みの一つが、「パイロットファンド」を効果的に活用した新しい運用手法の開発だ。
パイロットファンドは、金融環境の分析や営業サイドの要望などを踏まえて立ち上げた社内用の研究ファンドで、運用は比較的若いファンドマネージャーが担当する。常時25本程度あり、パフォーマンスに優れたファンドは公募商品として実際に販売される。パイロットファンドをそのまま商品化するケースのほか、「AI (人工知能)」などコンセプトの一部を切り離して世に送り出す場合もある。当然、パイロットファンドのうちは収益を生まない。しかし、先進的な商品開発体制の維持とファンドマネージャー育成には欠かせない制度だ。
2018年からは「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」が始まる。
渡邊 当社の調査では「つみたてNISA」の潜在的利用者は365万人と推計しており、このすべてが利用した場合、投資総額は今後20年間で11兆円となる可能性がある。2014年にスタートしている一般NISAの非稼働口座においても、3割程度が「つみたてNISA」には関心を示していることから、投資未経験者といった新しい顧客を開拓するチャンスだ。
──個人向けの公募投資信託ではインド債券ファンドが人気を集めている。
渡邊 多様化する顧客の運用ニーズに合わせて、証券会社や銀行などに幅広いラインアップの商品を提供した結果、投資信託の運用資産残高は大きく伸びている。 米国のアメリカン・センチュリー・インベストメンツ(ACI)社との戦略的提携においては、2016年5月に同社の経済的株式持分の約41%の取得を完了。同11月には『米国バリュー・ストラテジー・ファンド』を国内のリテール顧客向けに設定するなど、協業を進めていく方針だ。
「イノベーション・ラボ」でAIなどの技術基盤を整備
2017年10月には社内に資産運用先端技術研究室「イノベーション・ラボ」を設置した。
渡邊 2017年4月に様々な分野に精通した高度な専門人材を集めたイノベーション・ラボ準備室を立ち上げ、AI (人工知能)やビッグデータ処理といた先端技術の資産運用への応用について検討を進めてきた。
今回の同研究室は10人体制でスタート。イノベーション・ラボ準備室での活動を継承し、AIが自ら銘柄選択を行って市場平均を上回る運用成績をあげるといった技術基盤を整備する。大学やフィンテック企業などとも連携を進めていきたい。
今後の目標を。
渡邊 2017年9月末時点の投資信託と投資顧問契約を合わせた運用資産残高は、当社を中核とする部門全体で過去最高の約48兆円となった。これからもお客様から資産運用を託されるプロフェッショナルとして、運用と営業が一体となってソリューション提案の拡張を図っていく。国内外の投資信託および投資顧問のビジネス拡大を通じて、2020年3月期までに税引前当期純利益500億円、運用資産残高55兆円を目指している。
■図表 野村アセットマネジメントの運用資産残高の推移