【特別インタビュー】東京金融取引所 代表取締役社長 太田省三氏 2013年度末での取引量倍増をめざす。LIBOR金利先物の“復活”も
「証拠金の共通化」を申し入れ
「くりっく365」は他の所得と切り離して税金を計算する申告分離課税が適用され、税率は一律20%。一方、店頭FXは他の所得と合算したうえで課税額を決める総合課税で、特に高所得者は「くりっく365」を選択する傾向がありました。しかし、2011年度の税制改正により、2012年からは店頭FXにも申告分離課税が適用される方向です。「くりっく365」の優位性に影響はありませんか?
太田 「くりっく365」が20%の申告分離課税であるのは、商品や証券の取引所取引では申告分離課税が適用されていたため、当時の“税の論理”に従って為替の取引所取引にも同じルールが適用されたものであり、「くりっく365」が特別扱いされたのではありません。
今回、税務当局が、「同種の金融商品には同一の税制を適用する」ということでFXも税制が一本化されるということでしょう。
税制は税の論理に基づくもので、取引所ビジネスは、それを所与として、投資家に信頼できる商品を提供するということです。
2008年度に策定した向こう3年間の中期経営計画では「2011年中の株式上場」をめざしていましたが、リーマン・ショック後の2010年4月発表の業務計画では「2012年以降」とされました。株式上場の時期の目安は?
太田 株式上場には2つの前提条件があると考えます。まず第一に、株式会社として収益が安定した事業基盤を確立すること。現在は「金利」「為替」「株価指数」の3つのエンジンのうち、「為替」のエンジンのみ活発に動いている状況です。3つのエンジンが順調に稼働するようにならない限り、投資家に「ウチの株を保有してください」とは申し上げ難い。
もう一つが株式マーケットの環境です。株式の需給が悪いときに無理して上場することは適切とは言えません。第一条件で指摘したように「金利」や「株価指数」の商品で相応の取引が行われ、かつ株式マーケットが上向くのは、私が見るところ2013年以降ではないでしょうか。東京金融取引所の株式上場も、現実には、同年以降になると思います。
今後の取引量の目標は?
太田 2008年度策定の中期経営計画では、全取引量を2010年度までに1億5000万枚にする目標を掲げていました。現時点では1億3500万枚程度で、同計画がリーマン・ショック前にまとめられた点を考慮すると、ほぼ達成したといえるでしょう。
今後は、2013年度末までの3年間で、取引量を3億枚にまで増やすのが目標です。現在「くりっく365」の取引量は年間1億枚を超える程度。これを倍増させ、同時に「金利先物」と「株価指数」が伸びれば無理な数字ではないと思います。
株価指数証拠金取引の「くりっく株365」は、いわば「くりっく365」にもう一つ通貨が加わったようなものですから、証拠金取引に慣れた方には受け入れやすいのではないでしょうか。将来的には、米国や新興国の株価指数を加えることも考えており、商品の拡張性にも優れているのが特徴です。
課題はやはり金利でしょう。金利先物商品の取引が増えれば、「全体取引量を倍増させる」目標の達成に近づくはずです。
「くりっく」ブランドの発展も取引量拡大のポイントですね。
太田 現在、当局には「証拠金の共通化」を申し入れています。「くりっく365」と「くりっく株365」の証拠金を共通化することで、同一の投資家が同じ証拠金で為替と株価指数の取引が可能になり、利便性が大幅に向上します。
金融庁も必要性は理解してくれているものの、法改正が必要となるため、実現はもうしばらく先になると思います。証拠金が共通化できれば、「くりっく株365」の取引量はさらに拡大するのではと期待しています。