「ESG投資という言葉は使わない」と言われたとて…
隕石が迫る中で隣人と枯葉を押し付け合う
米ブラックロックのラリー・フィンクCEOは「ESG」という用語を「もう使わない」という。理由は保守派と左派の双方から誤解されたまま、攻撃に使われてしまうから。ESG(環境・社会・企業統治)投資は、地球全体で見た問題にどう対応するか、という話であり、本来は人類共通の課題であるにも関わらず、つばぜり合いが起こってしまうのが現状でもあり、悩ましい。
そもそも反ESGという考えは、ESG投資の推進の重要性と比較すると次元が違っている。隕石が降ってくるかもしれないと皆で恐れをなさねばならない時に、お隣との間の庭の枯れ葉を押し付けあうことに忙しい、と言えば言い過ぎか。
現実と折り合いをつけること(ここではお隣との諍いを収めること)は重要だが、それに手間取っていてはもっと大きな出来事(同じく隕石が降ってくるかもしれないこと)に対応ができなくなる。
しかし、そうした現実問題が膨張しすぎた末に政治問題化すれば、現在の米国のいくつかの州がそうであるように、収束の仕様がなくなる。結果、ラリー・フィンクCEOのように、ESGという用語を使わない、との判断になってしまう。ESG投資という名称には何も問題がないのに、だ。
もちろん、ESG投資の定義が漠然としていること、具体的に何をするのか、進むべきベクトルを示せていないこと、ESG投資が本源的なリターンに繋がる点に確信を持てずにいること、などは訂正していかねばならない。それが残る限り、いつまでも反ESGという考え方は残ることになる。
こうした動きが今後どうなるのか、今回は考えてみることにする。
米国における反ESGの動き
米国のさまざまな州では、反ESGの動きが顕著になっている。ESG投資の禁止およびESG志向の企業との取引停止などを決めた反ESG法案が通過している州が増えるにつけ、ESG投資に対する不安感が台頭している。
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