米国金融機関第3四半決算から垣間見るリスクとは
米国金融機関の決算をチェックする意味

エグゼクティブ・フェロー
中空 麻奈氏
米国金融機関の決算発表は注目に値する。私見では定点観測的に見ておくことが望ましいと考えているチェック対象である。
米国金融機関決算は、いくつかの意味を持つ。第一に、発表されるのはたいてい四半期決算の出始めであり、そのスタートがうまく切れるかはその先の株価動向を占う。
第二に、米国金融機関がどこで利益をあげ、どこで損失を出すかは他の金融機関の利益動向にも影響を与える。どういう利益の上げ方が主流になっていくのかなど、金融機関の収益構造を牽引する意味合いがある。
第三に、CEO(最高経営責任者)、CFO(最高財務責任者)などのコメントに、毎回ではないが懸念など本音が垣間見られることがある。その観点で、AI(人工知能)やプライベートクレジットなどのリスク要因がどの程度まで来ているのか、どの分野にリスクがありそうかといった現場感を察知することが可能になる。
2026年Q3はどうだったか
2026年7~9月期に当たる第3四半期の米国金融機関決算(ゴールドマン・サックス=GS、バンク・オブ・アメリカ=BAC、モルガン・スタンレー=MS、シティ=C、ウェルズ・ファーゴ=WFC、JPモルガン・チェース=JPM)は全般に好調であった(図表1)。
金融市場が全般に好調だったこともあり、M&A(合併・買収)やIPO(新規株式公開)などディールが増えたこと、株式トレーディング収入が安定して得られたことなどが大きかった。さらに金利上昇については債券価格の下落を招いたものの、マージンの改善が効いて、収入増に貢献した。増収増益が達せられ、金融機関決算の好調を受け、第3四半期の決算は大丈夫とばかりに好調な滑り出しとなった。
しかし、金利上昇が与える銀行収益の増加ぶりがピークアウトした感もあり、株価は全般に難調。一部は将来収益への懸念が含まれている公算もある。
また、一部金融機関(JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、シティ)はリテールを中心に9月後半から顧客の活動が急減速したとコメントしているが、これは商業銀行業務を行なっている企業特有の動きに見える。
個人は金利上昇に対する感応度が高く、行動を抑制する傾向があったが、法人にはそれが見られなかったためで、投資銀行が主たるものとなっているゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーは相変わらず強気であるのに対し、商業銀行を主とするBACを含めた各行動は若干の変調を見たことになる。
それもあり、不良債権残高にはばらつきがある。不良債権残高に対する貸倒引当によるカバー率(貸倒引当金繰入額/不良債権高)を見ても大きく異なっている。もっとも、どの銀行も十分なカバーをしていることは見て取れ、不良債権による財務内容の悪化が目立つ段階ではない。
なお、シティの同率が他行比、桁外れで高いのはクレジットカードなどに対しては引当を積む必要があるため、である。またゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーは投資銀行が主であるがゆえ、不良債権残高が相対的に低めであり、カバー率も低い。このように債権内容の違いが影響しているだけであり、ある程度のカバー率が確認できれば、カバー率の差そのものには大きな意味がないと見てよいであろう。
| (単位:百万$) | GS | BAC | MS | C | WFC | JPM |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 総収益 | 18,679 | 29,958 | 20,338 | 23,845 | 21,870 | 50,172 |
| 営業費用 | 11,308 | 19,722 | 13,712 | 13,952 | 13,743 | 27,295 |
| 純利益 | 5,294 | 6,933 | 4,909 | 5,245 | 5,951 | 15,305 |
| 貸倒引当金繰入額 | 368 | 1,269 | 148 | 2,586 | 1,029 | 2,743 |
| 不良債権高 | 3,387 | 5,544 | 1,240 | 3,254 | 7,060 | 9,366 |
| 不良債権カバー率 | 10.9% | 22.9% | 11.9% | 79.5% | 14.6% | 29.3% |
| 不良債権率(※1) | 1.23% | 0.44% | 0.38% | 0.40% | 0.67% | 0.59% |
| CET1比率 | 12.4% | 10.9% | 14.9% | 12.8% | 10.0% | 13.9% |
| S&P | BBB+ | A- | A- | BBB+ | BBB+(POS) | A |
| MDY | A2 | A1 | A1 | A3 | A1 | A1 |
出所: 各行資料、かんぽ経済研究所
※1:各行公表のTotal loansを基にかんぽ経済研究所が算出
テーマごとのポイント
(1)マクロ見通し(マクロ環境、金利・地政学リスク、顧客活動)
ここからは、決算発表時における各行のCEO、CFOによるコメントを見ていこう。まずマクロ経済に関するコメントは図表2にまとめた通りだ。基本的には世界を含めた経済の安定が評価されている。
※図表2~図表4において、緑字はポジティブ、赤字はネガティブと判断したコメントである。
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