近年、米国プライベートクレジットに偏重していた投資家が、相対価値と分散効果を求めて欧州プライベートクレジットへの配分を増やしている。なかでもプライベートエクイティ(PE)ファンドが介在しない「ノンスポンサー型」のダイレクトレンディング(DL)市場の可能性に注目が集まりつつある。欧州ノンスポンサー型DLの草分けで、20年以上のトラックレコードを持つPキャピタル・パートナーズ(PCP)を傘下に擁するM&Gに、その魅力を聞いた。

M&G
M&G Investments Japan
代表取締役 藤田 学氏(左)
プロダクト・スペシャリスト 宮田 亨氏(右)

発展前夜にある欧州DL市場のスイートスポット

M&G Investments Japan(以下、M&Gジャパン)代表取締役の藤田学氏は、欧州DL市場が米国とは構造的に異なると指摘する。「米国は銀行以外の貸し手が企業向け資金供給の約8割を担うが、欧州はいまだに銀行融資が約7割(※1)。欧州DL市場は米国のような発展の“前夜”と言える状況だ」。

ただ、欧州市場の特筆すべき特徴に、企業の約7割がファミリービジネスや起業家が立ち上げた中堅企業である点が挙げられる(※2)。「彼らは企業統治の観点で、PEスポンサーの出資を受けるなどして株式が希薄化するのを嫌がる。そうした企業は、米国で主流のPEスポンサー付き取引である『スポンサー型』DLとは親和性が低く、歴史的に銀行融資に依存してきた」(藤田氏)

だが足元で欧州では、自己資本規制強化を背景に、銀行が中堅・中小企業向けの貸付を絞り込む動きが続く。そのため、資金調達手段を失った優良企業が増加傾向にあると藤田氏は指摘する。その大きな需給ギャップを埋める存在として借り手・投資家の双方から注目が高まってきているのが、PEスポンサーが介在しない「ノンスポンサー型」のDLだ。

ノンスポンサー型DLとは、運用会社が借り手企業と直接交渉して融資を実行するDLを指す。スポンサー型では、調達資金がPEファンドによるLBOの買収対価として企業内に留まらないケースが多いのに対し、ノンスポンサー型では資金が借り手企業の設備投資や事業拡大といった「本質的な成長原資」として企業内に残るのが特徴だ。借り手はファミリービジネスや創業者主導の中堅企業が中心で、レバレッジは低く、担保にキャッシュフローと実物資産が組み合わされる傾向がある。

「ノンスポンサー型DLの規模はいまだ欧州DL市場の1割程度にとどまり(※1)、貸し手側のプレーヤーも限定的だ。今後の市場拡大が期待される欧州DL市場の“スイートスポット”と言える。これこそ、当社グループの運用会社PCPが見据える投資機会だ」(藤田氏)

※1 出所:Pitchbook LCD。銀行融資額を資金調達額全体で除して算出。2025年6月末時点
※2 出所:KPMG、EFB、meti, “Bridging the mid-cap gap”

融資への対応能力と柔軟性がマージンに繋がる

投資家目線で見れば、ノンスポンサー型DLの最大の特徴は、「低水準のレバレッジ×魅力的なマージン」にある。M&Gジャパンのプロダクト・スペシャリスト 宮田亨氏は、とりわけPCPのノンスポンサー型DL投資がこの2つのメリットを両立できる背景には、先述した「ファミリービジネスとの高い親和性」と「参入障壁の高さ」「銀行の貸出姿勢後退」のほかに、2つの構造的要因があるという。

1つ目が、複雑な案件への対応能力の高さ。「銀行の標準的な審査では対応できないようなグローバル展開企業や複雑なビジネスモデルを持つ企業に対し、PCPは独自のリサーチ・チームによるオーダーメイド型の分析で貸付を実行できる」(宮田氏)

そして2つ目が、柔軟な融資形態だ。銀行融資の多くがクレジットラインの70%程度を融資上限とするアモチローンであるのに対し、PCPは審査基準を満たせばクレジットラインの100%まで融資可能で、さらに融資期間中に元本の返済が不要なブレットローンを提供する。「企業内のキャッシュフローを成長投資に振り向けられる柔軟性が借り手にとっての価値となり、結果として高水準のマージンにつながっている」(宮田氏)

実際、PCPの直近戦略の平均ネット債務/ EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は4倍弱と、スポンサー型DL市場の平均5倍を下回る一方で、ディスカウント・マージンは200bps程度上回る(※3)。

PCPはコベナンツも厳格に管理している。欧州レバレッジド・ローン市場の約9割は財務コベナンツのない「コブライト」であるなか、PCPの1案件あたりのコベナンツ設定は中央値で約2件。直近2戦略のローンの50%以上で実物資産を担保とする。

加えて、早期償還によるリターン毀損を防ぐためのノンコール期間も、平均3年とスポンサー型の1~1.5年を大きく上回る。さらにPCPは投資先42社中32社で取締役会に「オブザーバー」として参加する権利を得ており、エクイティ投資家のような緊密なモニタリング体制を構築している点もユニークだ。

※3 出所:Pitchbook LCD、PCP。2025年の平均値を基に算出

■ノンスポンサー型ダイレクト・レンディングの6つの優位性
ノンスポンサー型ダイレクト・レンディングの6つの優位性
出所:PCP、M&G Investments

圧倒的優位性を発揮する市場の先行者「PCP」

PCPは2002年の創立時からノンスポンサー型DLを主軸とした運用を行ってきたパイオニアであり、同市場で長期の実績を持つ。北欧、DACH(ドイツ・オーストリア・スイス)、オランダ、英国、アイルランドの中堅企業を中心に、これまで170件以上、累計53億ユーロ超の投資を実行してきた。設定来の代表的なクレジット戦略の実績は、平均グロスIRRが10%、クーポン利回りが年率7%となっている(※4)。

注目すべきは、投資先選定の厳格さだ。「例えば、直近の貸付機会が約250件あったうち、実際に投資を実行したのは約4%。新しいヴィンテージでもこの選別比率は変わらない。95%超を却下する規律こそ、20年以上の経験で磨かれたPCPのパフォーマンスの源泉だ」(藤田氏)

なお魅力的な投資領域ゆえ、欧州ノンスポンサー型DL市場には年々新規マネージャーの参入も相次ぐが、藤田氏は余裕を見せる。「スポンサー型DLの投資判断は、経営に深く関わるPEファンドによる情報提供があるなど、データが整っていることが多くある。ただ、ノンスポンサー型DLの対象企業は初めて銀行以外から融資を受ける企業も多く、貸し手はまったくのゼロから信用審査を組み立てる必要がある。20年以上蓄積してきたPCPのデータは圧倒的な優位性だ」(藤田氏)

宮田氏も次のように補足する。「PCPが長年積み重ねてきた信頼と実績も、創業者ビジネスへのアクセスでは重要な決め手になる。新規参入者がこの市場でポジションを築くのは容易ではない。PCPの創業者ダニエル・サックス自身が、欧州における実質的な競合は『銀行のみ』と語っている」

※4 出所:PCP。代表的な社債戦略の実績。2025年6月末時点

欧州ノンスポンサー型DLへの投資意義

藤田氏と宮田氏は、日本の機関投資家がPCPによるノンスポンサー型DL戦略組み入れを検討すべき意義を3点にまとめる。第1は分散効果だ。

「欧州・北欧への地理的分散、ノンスポンサー型のセグメント分散が図れるだけでなく、スポンサー型DLの『PE市場と連動しがち』なエコシステムからの分散を加えた3つの軸で、ポートフォリオの下方リスク耐性を強化できる。また、米国で問題視されているソフトウェア・セクターのウエイトも欧州では相対的に低い」(宮田氏)

第2に元本毀損への保守的な備えだ。先述の通り、PCPは長期のノンコール期間、低レバレッジ、厳格なコベナンツ、実物資産担保、緊密なモニタリングなど、ダウンサイドへの備えを多層的に組み込んでいる。

そして第3に高いマージンの獲得だ。様々な構造要因がスポンサー型を200bps程度上回るマージンを支え、レバレッジ対比のリターン水準は「スポンサー型ディールのおおむね倍に達する」という(宮田氏)。

「米国からの分散ニーズが高まる現在こそ、日本の機関投資家にこの市場を知っていただきたい」と藤田氏は結ぶ。米国プライベートクレジット市場の不透明感も増していることからも、欧州ノンスポンサー型DLの戦略的意義はかつてなく大きくなっていると言えるだろう。

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