• 現実味を帯びる1ドル=200円超の円安
  • 円安の構造的要因は日本の低成長
  • 肥大する公的部門が日本の経済成長を抑制
  • クラウディングアウトとスタグフレーション
  • サッチャリズムに倣え

現実味を帯びる1ドル=200円超の円安

梅本徹
J-MONEY論説委員
梅本 徹

2025年12月に実施された日銀の利上げにもかかわらず、円安の勢いには一向に陰りがみられない。これは、円安の表面的な理由は確かに日本の低金利にあるが、日銀がこれまで長年にわたり緩和的な金融政策を強いられてきた根本的な背景である日本の低成長が一向に是正されそうにないからである。

高市政権が、現行の拡大的な財政政策運営を継続すれば、ドル円相場は200円を超えて上昇するであろう。

円安の構造的要因は日本の低成長

下の図表は、固定相場下にあった1955年から2024年までのGDP(国内総生産)デフレーターで実質化したドル円相場と日米相対実質GDPの推移を示すものである。

■実質ドル円相場と日米実質成長率格差の推移
実質ドル円相場と日米実質成長率格差の推移
出所:内閣府、BEA、Fed

1955年から1995年の間、日本の実質成長率が米国を凌駕する過程で継続的な実質ドル円相場の下落が起こり、それ以降2024年までの間、日米成長率格差が逆転した過程で継続的な実質ドル円相場の上昇が生じている。中長期的な円安の構造的原因は日銀の金融緩和ではなく日本の低成長にあることがわかる。

肥大する公的部門が日本の経済成長を抑制

1990年代以降の日本の低成長の第一の背景には、少子高齢化等による労働力制約、設備投資不足や技術革新の欠如による低生産性上昇率がある。これに、公的部門の肥大による民間部門の圧迫(クラウディングアウト)が拍車をかけたと考えられる。

1990年代のバブル経済崩壊による金融不況下に繰り返された総合経済対策によって、財政投融資会計を含めた中央政府の債務残高は、1999年末に対GDP比151%まで急増した。2000年以降の財投改革下でも経済対策は引き続き繰り返し実施され、中央政府の債務残高は2020年6月末に同205%まで拡大、量的金融緩和によってそのうち同104%の国債が日銀によって保有された。

クラウディングアウトとスタグフレーション

このようなG7(先進7か国)中最悪の財政ポジションにもかかわらず、2025年10月の発足した2025年度補正予算と2026年度当初予算によって、さらなる財政支出の拡大による景気浮揚を試みている。一時的な成長率の上昇期待と財政破綻を懸念した円安によってインフレ率はさらに上昇しよう。

また、長期金利の上昇はクラウディングアウトに拍車をかけ、早晩1970年代に世界経済が経験したスタグフレーション(景気停滞と物価上昇の同時発生)が再来するであろう。当時を振り返るなら、財政支出や名目賃金引き上げではなく、緊縮財政と生産性上昇率の引き上げこそが、実質賃金上昇率プラス化への近道であることがわかる。

サッチャリズムに倣え

1990年以降の暗黒の35年をあえて日本病と呼ぶなら、高市政権による経済処方箋(サナエノミクス)は間違っており、日本経済の病状をさらに悪化させてしまう公算が高い。1980年代にサッチャー英首相(当時)が英国病を克服した緊縮財政や国営企業の民営化等による新古典派的な経済政策運営(サッチャリズム)こそが現在の日本経済には必要と考えられる。