10月「IMF世界経済見通し」の2025年の世界経済の成長率見通しは+3.2%で、米国大統領選挙前と同じ予測値に戻る

宅森 昭吉
2025年10月時点のIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しで、2025年の世界経済の成長率見通しは+3.2%と、前回7月時点から0.2ポイント上方修正された。米国と世界各国との貿易交渉が進展し、トランプ関税の影響が当初の想定より小さいと見込まれたことが主因のようだ。
2025年の世界経済の成長率見通しは、米国大統領選挙前の2024年10月時点では+3.2%と今回と同じ予測値だった。その後、2025年1月時点では+3.3%だったが、トランプ関税の影響が懸念された4月時点の予測では+2.8%に0.5ポイントと大幅に低下した。7月時点は+3.0%、そして今回10月時点は+3.2%と2四半期連続で合計0.4ポイント改善した。
2025年10月時点では、米国は7月時点から0.1ポイント高い+2.0%になった。ユーロ圏は0.2ポイント高い+1.2%、日本は0.4ポイント高い+1.1%となった。EU(欧州連合)や日本は7月以降に米国と関税交渉で合意に至った。IMFは10月時点の予測で、これまでのところトランプ関税が経済や物価に与える影響は限定的と判断したようだ。中国の成長率は、2024年の+5.0%から2025年+4.8%、2026年+4.2%まで減速するという7月時点の見通しと変わらなかった。IMFは先行きの下押しリスクには関税政策などのほか「AIブームの崩壊」を指摘した。

出所:IMF
「ESPフォーキャスト調査」景気リスク10月調査、「関税引き上げを含む保護主義の高まり」が20名、7月30名から大幅に減少
「ESPフォーキャスト調査」10月調査(回答期間:2025年9月26日~10月3日、回答者38名)で、2025年度の実質GDP(国内総生産)成長率・予測平均値は+0.82%で7月調査+0.48%から0.34ポイント上方修正された。2026年度の実質GDP成長率・予測平均値は+0.69%だ。
消費者物価指数(生鮮食品除く)前年比の2025年度の予測値平均は+2.75%で、7月調査の+2.51%から0.24ポイント高まった。食品の値上げなどの影響が思ったより大きかったことを反映しているようだ。2025年度の消費者物価指数(生鮮食品除く)前年比・予測値平均は+1.80%に鈍化する見込みだ。
特別調査では日銀の金融政策を聞いている。10月調査(回答数38名)で25年12月末の日本の政策金利(現行0.5%程度)については、「0.5以上~0.6%未満」の回答が16名で7月調査(回答数38名)の24名から減少、「0.7以上~0.8%未満」の回答が22名で7月調査12名から増加、年内の利上げを予想する回答者が7月調査に比べて増えている。10月調査での26年6月末の見通しは「0.7以上~0.8%未満」の回答が21名で最も多い。
半年から1年後の景気リスク(3カ月ごとの特別調査、3つまで複数回答)は、10月調査では、「米国の景気悪化」が34名で7月調査の28名から増加し2位だった7月調査から1位に躍り出た。「関税引き上げを含む保護主義の高まり」が20名で、7月調査の30名から大幅に減少し1位から2位に低下した。トランプ関税の影響は限定的とみるフォーキャスターが増え、他の項目を選択したようだ。
「中国景気の悪化」が15名で、7月調査の11名から増加し、4位から3位に上昇した。なお、IT部門(電子部品など)の悪化は10月調査では2名にとどまっている。
ー半年から1年後にかけて景気上昇を抑える(あるいは景気を反転させる)可能性がある要因ー
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