シリーズ第3回は、プライベート・デット(PD)を採り上げます。プライベート・エクイティ(PE)に続くプライベートアセットの代表的資産について、ラッセル・インベストメントの山浦厚能さんに解説していただきます。

PD経営者が米財務長官の候補の1人

第2回の冒頭では、米トランプ政権による市場ボラティティの高まりと関連付けて、プライベート・エクイティの話が出てきましたね。

山浦 今回も引き続き、トランプ政権ネタからプライベートデットの話に結び付けますよ。

現在の財務長官であるスコット・ベッセント氏は、ヘッジファンド業界の出身者です。そして、その対抗馬として最後まで名前が挙がっていたのがアポロ・グローバル・マネジメントのマーク・ローワン最高経営責任者(CEO)でした。アポロと言えば、世界最大のプライベートデットの会社の1つです。つまり、最終候補に2名のオルタナティブ業界の出身者が残っていたということになります。オルタナティブ(伝統的ではないという意味)という呼称で呼ばれていますが、米国では政権の中枢に食い込む人材を輩出する業界に育っていると言えるでしょう。

銀行システムの外側で「融資」

私たちは「オルタナティブ」、「プライベートデット」といった言葉にすっかり慣らされましたが、こうした横文字あるいはカタカナ用語には今でも違和感が残ります。

山浦 プライベート「デット」は、広義の「融資」と捉えましょう。融資自体はメソポタミア時代から始まっていると言われており、ルネサンス時期に簿記の発明と共に銀行制度が確立された歴史があります。融資業務には確たる利益の源泉が存在し、営々と現在まで続いている投資行為だと言えます。初期の株式投資は1602年にオランダに設立された東インド会社ですので、株式投資よりも古くから発達していました。

融資業務はこれまで、銀行を中心に発展してきました。今回ご説明するプライベートデットは、銀行を中心とした金融システムの外側で行われている融資業務のことを指しています。

リーマン・ショック以降に発展

ところで、日本の機関投資家がプライベートデットに投資するようになったのは、いつごろからですか。

山浦 実は意外と最近で、2008年に起きたリーマン・ショック以降のことです。リーマン・ショック発生の一因は、金融システムの脆弱性でした。金融システムは、社会インフラとして必要不可欠ですので、リーマン・ショック後に、銀行の破綻リスクを減らすために自己資本強化を促す新たな規制が導入されました。

この規制の結果、銀行は融資のボリュームを追うことができなくなったわけです。しかし、それで困るのは融資を受ける側。特に、大企業と違って市場で債券発行による資金調達が困難な中小・中堅企業にとっては死活問題でした。しかし、「上に政策あり、下に対策あり」とはよく言ったもの。銀行の役割を補完するために、プライベートデットが成長してきたわけです。

一方、投資家にとってもポートフォリオの分散強化、安定したインカム収入というのは大きなテーマです。そうした、ニーズを満たす投資対象としてプライベートデット市場が成長してきたという側面があります。【図表1】で、プライベートデットのグローバルな年間コミットメント金額(募集残高)の推移を示しました。

【図表1】プライベートデットの年間のコミットメント金額(単位:10億ドル)の推移(2005年以降)
プライベートデットの年間のコミットメント金額
出所:Pitchbookを基にラッセル・インベストメント作成
※クリックすると拡大します

PEへの「スポンサー融資」が過半

プライベートデットの戦略には、どういった種類があるのですか。

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