GDP、個人消費。7~9月期の名目・実額はともに史上最高だが、実質は…
2024年12月9日に内閣府が発表した7〜9月期のGDP第2次速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比+0.3%、前期比年率で+1.2%の増加だった。2023年度実質GDPが確報値になり、それまでの+0.8%から+0.7%に下方修正されるなど、過去に遡ってGDPの数字が更新された。品質不正問題による自動車の生産・出荷停止の影響で個人消費や設備投資が落ち込んだ24年1〜3月期の実質GDPの減少率は、前期比▲0.6%、前期比年率で▲2.2%になった。増加に転じた4〜6月期の実質GDP(国内総生産)は前期比+0.5%、前期比年率で+2.2%で、7〜9月期で2四半期連続の増加になった。
GDPの半分を超えるウエイトがある実質個人消費は1〜3月期・前期比▲0.6%と減少のあと、4〜6月期・前期比+0.6%、7〜9月期・前期比+0.7%とこちらも2四半期連続の増加である。
7~9月期の名目GDPは前期比+0.5%、前期比年率で+1.8%の増加で、実額は610.2兆円と過去最高を更新した。名目個人消費は前期比+0.8%の増加で、実額は298.4兆円とこちらも過去最高を更新した。これらの数字では、緩やかながら順調に経済成長が続いていることを示している。
しかし、実質の実額をみると、問題点が見えてくる。7~9月期・実質GDPの実額は年換算で557.1兆円だったがこれは、これまでの最高だった2023年1~3月期の557.6兆円にわずかに届いていない。その理由はGDPの半分以上を占める最大の需要項目である個人消費の24年7~9月期の実質の実額は298.4兆円である。
2023年1~3月期の300.5兆円に届いていないのはもとより、消費税が8%に引き上げられる直前の四半期のため駆け込み需要が出て過去最高の水準だった2014年1~3月期の310.5兆円に対し24年7~9月期は10兆円以上低い水準にある。
特に最近は物価変動の影響により、名目と実質の乖離が目につく状況だ。2024年に入ってからの1~3月期、4~6月期7~9月期の個人消費・前期比は実質で▲0.6%、+0.6%、+0.7%と推移しているが、名目は+0.2%、+1.4%、+0.8%と3四半期とも実質を上回る増加率だった。
消費者物価指数で「食料」の前年比が5年連続「総合」と「生鮮食品除く総合」を上回る見通し
消費者物価指数では、「全国」「東京都区部中旬速報値」とも、消費者が毎日口にする「食料」の前年比が2020年以降5年連続で、「総合」と「生鮮食品除く総合」を上回る見通しだ。2024年の「全国」の「食料」の前年同月比は7月の+2.9%を除き10月まで+3%以上で、全て+2%台だった「総合」と「生鮮食品除く総合」の前年同月比を上回っている。
異常気象の影響で、代わる代わる何某かの食品が高騰するような状況だ。天候要因は一時的な要因ではなく、構造的な要因になり、食料価格を押し上げている。また、円安の影響や輸送コスト高止まりなど、その他の上昇要因の影響も大きい。
11月のデータがある「東京都区部」の食料の前年同月比は+5.1%上昇だ。11月の前年同月比は、ブロッコリー+84.1%、うるち米(コシヒカリを除く)+64.2%、牛肉(輸入品)+13.3%、チョコレート+28.5%、コーヒー豆+23.3%の上昇で、多岐にわたり高騰している。10月の家計調査でエンゲル係数が27.9%まで上昇し、39年ぶりの高水準になった。ここにも食料価格の継続的上昇が影響していよう。
実質賃金・前年同月比は11月ではデフレーターの上昇が見込まれ、プラスになりにくく、厳しい状況が続く見通し
実質賃金10月速報値は前年同月比0.0%だった。ボーナスが伸びた6月・7月だけは前年同月比プラスになったが、8月・9月はマイナスに戻っていた。実質賃金のデフレーターは全国消費者物価指数の持家の帰属家賃を除く総合で、食料を含む。「東京都区部」では10月の前年同月比+2.1%から11月は+3.0%に上昇している。12月20日に発表される「全国」でも同様に大幅な上昇が見込まれる。実質賃金・前年同月比は1月9日発表の11月速報値でもプラスになりにくい厳しい状況が続きそうだ。