ドイツに本社を置く運用会社メッツラー・アセット・マネジメントGmbHのマネージング・ダイレクターのライナー マテス氏が来日した。1674年に誕生したメッツラーの特徴や強みについて、マテス氏と日本法人で代表取締役を務める牧野浩人氏に聞いた。(取材日:2019年3月11日)

メッツラー・アセット・マネジメント
メッツラー・アセット・マネジメント 代表取締役社長
牧野 浩人氏(左)
メッツラー・アセット・マネジメントGmbH
マネージング・ダイレクター
チーフ・インベストメント・オフィサー
ライナー マテス氏(右)

金融サービスで長い歴史をもつ。

マテス 1674年、メッツラーは織物の貿易会社として創業した。貿易に欠かせない為替業務が発展する形で銀行業へと移行し、現在ではアセット・マネジメント、プライベート・バンキング、キャピタル・マーケッツ、コーポレート・ファイナンスの4つの事業会社に分かれている。従業員数は約900人で、2019年1月末の受託資産総額は765億ユーロだ。

メッツラー・アセット・マネジメントGmbHの特徴は。

マテス 当社は機関投資家にフォーカスした運用会社だ。預かり資産の約98%が機関投資家からの資金となっており、なかでも特徴的なのが教会からの受託資産が多い点だ。ドイツには教会税があるため教会に資産が集まりやすく、運用のニーズがある。

また、メッツラーでは、株式の100%を創業家が保有しており、長期的な視点での資産運用・経営が可能な点も特色といえる。2009年の北京オフィス設立がその一例だ。中国の将来性を見込んでの判断であったが、当時は現在ほど中国経済への注目が集まっておらず、短期的な視点のみでは難しい判断であった。

ESG投資にも早くから取り組み始めた。

マテス 当社は「ESG」という言葉がまだ存在しなかった1990年代後半から全ての運用にESGを取り入れている。教会の資産には倫理的な運用が求められたことが背景だ。単にESGを銘柄選定に用いるだけでなく、株主の立場を利用して投資先企業へより良い経営を行うよう働きかけることも多い。

当社ではESG投資の取入れ方に関するアドバイスも提供しているほか、ESGのみに焦点を絞ったレポーティングの作成も行っている。近年ではESGがパフォーマンス面からも評価され始めているだけでなく、欧州ではESG投資を後押しする形へと規制も変化しつつある。ESGに代表される非財務データを含めたあらゆる観点から投資判断を行うことで、ポートフォリオの長期的な成長維持が可能となるだろう。

リスク限定型の運用スタイルでも評価を得ている。

牧野 当社のリスク限定型戦略では、あらかじめ投資家に許容できるリスク水準をヒアリングし、元本毀損の下限であるフロアを定めてマルチアセットなどで運用を行う。今まで単年度でその下限を割ったことは一度もない。リスクを限定しつつマーケットの上昇による恩恵を享受できるため、これまで債券にしか投資してこなかったお客様にもご活用いただいている。

ほかにもお客様のニーズに合わせ、欧州のグロース株や中小型株、エマージング株や、欧州社債、グローバルのマルチアセット運用など、様々な資産への投資を行っている。受託資産の3分の2が年金資金ということもあり、いずれも長いスパンでの運用がメインだ。

最後に読者へのメッセージを。

マテス ESG投資は短期のトレンドに留まるものではなく、10年もすれば当たり前の考え方として定着するだろう。単なる排除基準として取り入れるのではなく、投資先企業に積極的にエンゲージしていくことで、長期的なパフォーマンス向上に寄与するはずだ。