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J-MONEY2016年春号 注目記事

Japan deals of the year

ディール・オブ・ザ・イヤー2015

2015年のベストディールを表彰する「ディール・オブ・ザ・イヤー」。金額規模や執行業務の鮮やかさ、資本市場に与えた影響、執行後のパフォーマンスといった点を基準に、全9部門からベストディールを選定した。
(J-MONEY編集部 ※データはディールロジック提供)
※ストラクチャード・ファイナンス部門は該当ディールなし

M&A部門

ベストM&Aディール(OUT-IN)

新関西国際空港による関空・伊丹空港の運営権売却

 オリックスと仏空港運営大手ヴァンシ・エアポートを中核企業とするコンソーシアムによる関西国際空港と大阪国際空港の運営権の取得(コンセッション)は、国内初の大型国有インフラに係るコンセッション案件であり、2015年に日本企業がかかわるM&Aの中では最大規模の案件となった。また安倍政権の日本再興戦略における注力分野でもあることから、規模・注目度ともにベストディールにふさわしい案件だった。

 世界25カ所の空港の開発と運営を行い、優れた実績を持つヴァンシグループの空港運営と、オリックスグループの商業施設開発などのノウハウが統合されたことで、効率的な空港経営が実現する。潜在的な航空需要の拡大と収益性の向上も見込まれるはずだ。

ベストM&Aディール(IN-OUT)

東京海上ホールディングスによる米保険会社HCCの買収

 東京海上ホールディングス(以下、東京海上HD)によるHCCインシュアランス・ホールディングス(以下、HCC)の買収は、日本の金融機関による海外M&Aとして過去最大級の案件となった。HCCは、航空保険や農業保険など一般の保険ではカバーされないような特定のリスクを対象とする「スペシャリティ保険」を販売する米国の大手保険会社。東京海上HDとの商品競合度は低く、事業領域と販売網の拡大による収益基盤の強化が期待される。

 人口減による国内市場の縮小や自然災害リスクの増大などを背景に、損害保険各社の海外展開が活発化している。損保ジャパン日本興亜ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングスとの三つ巴の競争を一歩リードする大型案件として、ベストディールに選出した。

ベストM&Aディール(IN-IN)

日本生命による三井生命の買収

 2015年の国内企業同士のM&Aで本誌が最も注目したのが、日本生命保険相互会社(以下、日本生命)による三井生命保険株式会社(以下、三井生命)の買収だ。国内生保同士のM&Aとしても、2004年に発足した明治安田生命保険相互会社以来、過去10年余りで最も大きな案件となった。

 日本生命は、2015年12月21日に三井生命の株式の公開買付けを終了。統合スケジュールでは、三井生命の完全子会社化と経営統合が完了した後、三井住友銀行をはじめとする三井グループ株主が、三井生命に再出資を行う予定となっている。

 日本生命にとって、三井住友銀行との長期的な関係を維持することで出遅れていた保険商品の窓口販売を強化し、国内の事業基盤をより強固なものにするねらいがある。経営統合により、年間約100億円(持分ベースでは83億円)の増益が見込まれている。

 国内生保をめぐっては、少子高齢化にともなう市場縮小への対応策として、企業の成長を海外に求めて欧米の保険会社を買収する事例が相次ぐ一方で、国内の大型再編は実現していなかった。国内のマーケットシェアを重視した日本生命のM&Aは、今後の国内生保業界に大きなインパクトを与えるだろう。

株式部門

ベストIPOディール

日本郵政グループ3社同時上場

 2015年11月4日に行われた、日本郵政グループの3社同時上場は、総額1.4兆円と過去最大級の規模となった。

 プライシングは、3社の予想PBRが同業界と比較し割安感を出すとともに、発行する株式の多くを販売する個人投資家の目線も意識して、配当利回りにも配慮し、投資妙味のある水準とした。

 世界的にも前例がない親子3社同時上場で、規模の大きさやストラクチャーの複雑さ、さらには国策として失敗が許されない案件のため、ディールは慎重を極めた。個人向けに初めてテレビCM放映などのリテールマーケティングを行ったり、機関投資家へのマーケティングでも3社が効果的に周るような日程にするなどさまざまな施策が講じられた。

 個人投資家は3銘柄セットの申し込みが多く、需要倍率は国内外全体で5倍を超えるなど、旺盛な需要を獲得した。一人当たりの割当株数が抑制された結果、3案件合計で延べ180万人近い個人に広く割り当てられた。上場初日の終値は15 ~ 56%高で引け、翌日の株価も高値を更新。休眠口座を呼び戻すにも手頃感のある郵政株は、貯蓄から投資への流れに弾みをつける、重要な役割を果たしたといえる。

ベスト株式公募・売出しディール

ソニーのグローバル公募増資

 2015年で最大規模のグローバル公募増資を行ったソニー。同時に発行した国内CBも投資家の需要に広く応える結果となった。2010年度以降の事業会社によるエクイティ・ファイナンスでは国際石油開発帝石(5071億円)に次いで、公募増資とCB(転換社債)の総額で4347億円と2番目の規模となった。

 同社は、2014年度にエレクトロニクス事業において大幅な赤字を計上したが、PC事業の収束やTV事業の分社化など、さまざまな構造改革を実施した。TV事業では11年ぶりの黒字化が達成されるなど、改革に成果が見られるなか、さらなる事業の拡大と財務基盤の強化を図るため、今回の増資が行われることとなった。

 増資の発表当初から、成長局面への転換を迎えるうえで期待のできる資金調達との評価が寄せられる一方、増資は時期尚早ではないかとの声もあがったが、主要な資金使途であるCMOSイメージセンサーの成長性を訴求して投資家の需要喚起に成功、CBを同時に発行して希薄化にも配慮した。

ベスト株式リンク・ディール

トヨタ自動車の種類株式

 2015年はトヨタ自動車の「AA型種類株式」による資金調達に注目が集まった。同社は中長期保有を志向する新たな株主層を開拓し、次世代技術の開発やインフラ投資などへ中長期の投資資金を充てるべく今回、非上場の「議決権のある譲渡制限付き種類株式」を発行するに至った。

 同株式は普通株式と同等の議決権を有しながら全期間に譲渡制限が設けられている。保有から5年以降は種類株式のまま保有し続けることもできるが、普通株式への転換や発行価格での換金も可能なのが特徴だ。普通株式に比べて配当利回りは低く、0.5%から始まり、長期保有のインセンティブとして毎年0.5%ずつ上乗し、最終的に2.5%で固定される。

 発行価格は7月2日の普通株式の終値の129.99%の価格となる1万598円と時価より高く設定された。しかし、国内でもトップクラスの信用力を持つ企業による発行だったこともあり投資家からの需要は高く、発行額上限5000億円に相当する4710万株の発行となった。

 発行済み株式の価値の希薄化を避けるべく、発行株数と同等の普通株式の自社株買いを行うなど、同案件は先進的でありながら既存株主への配慮も十分になされた案件となった。

債券部門

ベスト円建てディール

パナソニック

 2015年の国内債券市場は全般に、金利の先高観の後退などに伴い厳しい環境にあった。機関投資家向け社債の大型案件が少なくなるなかで、総額4000億円に及ぶパナソニックの無担保社債は大きな注目を集めたディールとなった。

 同社にとっては2011年以来の約4年ぶりとなる大型起債。前回の起債以降、業績の悪化と格下げが相まってセカンダリー市場のスプレッドはワイド化していたが、リストラの一巡を機に、2015年度に到来する社債償還2400億円の前倒しと合わせて、成長への舵を切るための資金調達として起債した。

 トランシェのなかで最大の調達資金を目指した5年債は、投資家の目線を勘案して国債+26~32bpでマーケティングを開始した。最終的には国債+30bpで条件決定し、金額も投資家の旺盛な需要に応じて大幅に増額。丁寧な起債運営が好感され、大型の調達に成功した。

ベスト・インターナショナル・ボンド・ディール

ソフトバンクのユーロ建て・ドル建てシニア債

 海外展開を進める日本企業の外貨獲得手段の1つとして注目を集めているのが、海外市場で発行する外貨建て社債だ。2015年は、超低金利環境を生かすべく、大手企業を中心に起債への積極姿勢が目についた。

 ソフトバンクは7月、期間7年、10年、12年のユーロ建てシニア債22.5億ユーロと、期間7年と10年の米ドル建てシニア債20億ドルを発行した。5本の合計額は、日本の事業会社が一度に発行する外貨建て社債としては過去最大規模になった。

 同社は、7月13日のユーロ圏首脳会談でのギリシャ救済合意を受けて市場環境が改善した点に着目。機動的にマンデート・アナウンスを実施し、さらにシンガポール、香港、ロンドン、パリ、フランクフルトにおいてロードショーを行った。本ディールは狙い通り旺盛な投資家需要をとらえ、最終的な需要額は、ユーロ建てで75億ユーロ超、ドル建て50億ドル超に達した。

◆ベスト・サムライ債・ディール

クレディ・アグリコルのシニア債・劣後債

 フランス大手金融機関クレディ・アグリコルは、2016年6月にシニアサムライ債と、Tier2サムライ債(B3T2劣後債)の同時起債に踏み切った。シニア債と劣後債を同時に発行したのは、サムライ債市場では初めてのこと。発行規模は6本建てで計1399億円と、同社最大の起債額となった。

 このうちシニア債は4年変動が111億円、5年固定が846億円、10年固定が43億円の3本建てで計1000億円を発行。一方、国際的な自己資本規制であるバーゼルⅢに対応したB3T2劣後債は、10年固定が176億円、10NC5(10年満期、ただし5年後に償還可)が121億円、10年変動が102億円の合計399億円の起債となった。

 ギリシャ問題を発端にマーケットは荒れ模様だったものの、サムライ債を継続的に発行している同社の姿勢に加えて、B3T2劣後債が日本の投資家に浸透してきたことから、投資家の需要をバランスよく集めた。シニア債は都銀や地銀、信金などから120件超、B3T2劣後債は生保や信託銀行などから約100件のオーダーが入った。