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スカイマークは5年以内の再上場目指す

J-MONEY2015年夏号 注目記事

TOPインタビュー

投資先の意向を汲む日本型バイアウト
スカイマークは5年以内の再上場目指す

クラウン・リーシングの破たん処理、東ハトの買収、阪急ホールディングスと阪神電鉄の経営統合など、これまで数々の企業再生を手がけてきた佐山展生氏。2007年9月に立ち上げたインテグラルの代表として現在、業績不振に陥ったスカイマークの経営再建に取り組む。会社側の再生計画案に対して大口債権者の米リース会社イントレピッドが対案を提出するなど、視界の悪い状況が続く。スカイマークは再び大空に飛び立つことはできるのだろか。

従業員のモチベーション維持
中長期的に企業価値向上

──「ユニゾン・キャピタル」「GCAサヴィアン」に続き、2007年9月に「インテグラル」を立ち上げた。同社を創業した理由は何か。
佐山
 元々は三井銀行でM&Aアドバイザーをしていた。10年以上にわたるM&Aアドバイザリー業務を通じて、日本でバイアウトの機運が高まっていることを感じ、1998年にユニゾン・キャピタルを共同設立した。ユニゾンの第1号ファンドは1999年に設定。最終的に380億円の資金が集まり、自動車部品メーカーの「キリウ」やIT関連出版の「アスキー」、菓子メーカーの「東ハト」など計7社に投資することができた。しかし、ある投資候補先企業の方にいわれた「投資してくれても3、4年後に売却していなくなるんでしょ」という一言が胸に突き刺さった。確かに一般的なバイアウトは、ある期間、投資先の企業価値を高めるべく努力する。だが、長期的に強い会社を作ろうと言っても、投資後数年すれば、売却してそこの会社とは関係がなくなってしまうという避けられない事実を突きつけられたからだ。

 米国から持ち込まれたバイアウトのモデルは、そのままでは日本人のカルチャーには合わないと考え、インテグラルの共同創業者の山本礼二郎と一緒に日本型バイアウト手法を考え、ユニゾンの2号ファンドの立ち上げには参加せずに2004年9月に同社代表を退任した。しかし、競業避止契約があり、すぐに起業できないため、その間にM&Aアドバイザー会社「GCA(現・GCAサヴィアン)」を山本礼二郎、渡辺章博、加藤裕康各氏と共同で設立した。同社では阪急と阪神の経営統合などの案件を手がけ、2006年10月6日にはM&Aアドバイザー会社としては日本初の上場(東証マザーズ)も実現した。

 その後、日本型バイアウトの実現に向けて2007年9月にインテグラルを創業。それから5年ほどGCAサヴィアンとの二束のわらじ状態が続いたものの、2014年1月からは完全にインテグラルの業務に集中できるようになった。日本型バイアウトを思い立ってからおよそ10年後のことだ。

── 従来のバイアウトと日本型バイアウトの大きな違いは。
佐山
 前者は売却時、一番高いプライスを提示したところに売却する。1件の投資案件だけで利益を追求する前提であれば、その手法が最もシンプルだ。しかし、この手法には、投資先企業の気持ちが反映されない。例えば、売られる企業にとって意に沿わない競合他社に買収された場合、経営陣は駆逐され、従業員も冷や飯を食わされる可能性があり、そうなれば、売却したファンドとその元投資先企業との関係は悪化する。

 対する日本型バイアウトは、目先の利益より投資先企業の希望を最優先するので、対象会社の経営陣や従業員に歓迎される。その案件だけ見れば、得られる利益が減るが、投資先との関係を良好なまま維持できるので、そのファンドに対する安心感が増し、投資案件の紹介も増え、中長期的にファンドの投資家に大きな利益を還元することができる。

投資先企業にメンバーを常駐
超長期的な資金支援も実施

──日本型バイアウトとしてどのような支援を行っているのか。事例を交えて教えてほしい。
佐山
 かつて上場している広告制作会社「ティー・ワイ・オー」の第三者割当増資を引き受け、売却する際、いい会社になったので複数の買い手が名乗りをあげた。44.4%をどこかに売却すれば、実質経営権が取得できるのでプレミアムをつけて売却できる。

 しかし、同社の吉田博昭社長をはじめ幹部の意向は「特定企業の傘下には入りたくない」だったので、株式市場に売り出しして1日でばらばらに売却した。この際の株価は時価より安い価格になり手数料もかかった。我々にとっては利益も減ったが、同社とはいまだに非常に良好な関係が続いている。この投資先との長期の信頼関係構築こそが、「日本型バイアウト」であり将来的に次の投資案件にもつながる。

 中堅クラスの企業というのは何かとやることが多いが、なかなか思ったように人材が採用できない。海外の取引先との交渉や上場準備など、専門的な業務も増えるので、当社では投資先からの要望があればだが、経営支援チーム「i-Engine」のメンバーを常駐させている。

 現在は11名の人材を各投資先企業に派遣。なかには3年近く常駐し海外の営業責任者にまでなっているスタッフもいる。メンバーを長期常駐させる効果は、投資先との信頼関係の強化と、常駐するメンバーの成長だ。さらに当社では、ファンド資金だけではなく、要望があれば超長期の自己資金も投資するという、投資先ととことん超長期にお付き合いする日本で初めての「ハイブリッド型投資」も実施している。

──バイアウトに対するイメージは変わったか。
佐山
 我々は口だけでなく投資先を最も大切にすることを実行している。日本型バイアウトに対する理解は進んでおり、ありがたいことに投資先企業も含め多方面から新しいお客さまを紹介してもらう件数が増えている。

単独支援もやむなしと覚悟
過大機リース解消でCF大幅改善

── 業績不振に陥っていたスカイマークの支援企業として名乗りをあげた。
佐山
 我々は当初、他の航空会社の協力を前提条件に支援すると表明していた。だが、他の航空会社を含め、どこも支援を見送ったようだった。スカイマークの経営陣は、どのような判断を下すのか気になった2015年1月23日(金)の夜に連絡をとると、スカイマークの井手隆司会長から「明日から破産手続きをする」という思いもよらぬ話が返ってきた。我々はスカイマークの経営悪化の原因は、リース料や燃料費などがかさむ大きな航空機を借り過ぎていたことにあり、この問題を解消すればキャッシュフローは大幅に改善する余地があるInterviewと見ていた。しかも、破産したら国内航空の競争を促してきた第3極がなくなり、スカイマークで働く約2300人の従業員も職を失う。そこで我々は航空会社なしの単独での支援もやむなしと腹をくくり、「民事再生の望みもあるかもしれない。大至急検討しましょう」と答えた。

 民事再生を実行するなら1月29日(木)が資金ショートの期限でそれまでに申立を完了する必要があったので、早速、23日(金)の夜に井手会長らと会議をし、翌24日(土)には5名のスタッフが羽田本社に常駐。膨大な伝票をチェックし、どのぐらいの資金があれば余裕をもって資金が回るか調査した。週明けまでの4日間で合計数時間しか寝なかった突貫工事だった。その結果、90億円あれば余裕で資金繰りができる見通しが立ち、予定を1日前倒しして、1月28日(水)に民事再生手続開始の申し立てを行った。

── 一時は共同スポンサーとしてANAを推していたイントレピッドが態度を一変させるなど、状況が二転三転している。次の山場である8月5日の債権者集会は乗り越えられそうか。
佐山
 我々は、ANAと日本政策投資銀行、三井住友銀行の両行が組成したファンドとの間で、スポンサー契約を締結している。別の案が出されても、すでにスポンサー契約を締結しており、その遂行に全力を尽くしたいと思っている。万一、その案が否決されれば、そのときに別の案を考えればいい。いずれにせよ、民事再生手続きである以上、債権者集会の賛成を得られる案で再生していくしかない。ただ、民事再生が決定した後に90億円の融資枠のなかの45億円を融資しただけで一切追加融資を必要としていない。通常の民事再生とは違って、資金面は潤沢で二次破綻懸念はまったくないので、仮に手続きに予想以上の時間を要してもじっくり構えて取り組めるのは助かる。

── 5年以内の再上場を目指すと表明している。
佐山
 スカイマークの持続的な成長には株式上場するのが一番だと思う。「5年以内の再上場」という目標達成に至るまで、共同スポンサーと社員の皆さんと全力で頑張っていきたい。

──スカイマークの案件に関して現時点での手応えは。
佐山
 野球でいえばまだ5回の裏。これからが本番になるが、1月23日以来、頭の中はスカイマーク再建のことで一杯。こんな状況になったのは、9年前の2006年に担当した阪神電鉄と阪急ホールディングスの案件以来だ。その前が1997年のクラウン・リーシングの案件になるので、9年ごとにスカイマークのような全力投球大型案件と巡り合っている(笑)。

 現時点は、まだ再生の方向性が定まっていないので具体的な方策は難しいが、これからもスカイマークの社員の皆さんが楽しく働き、安いだけではなく、他社にないサービスを提供でき、お客さまが気持ちよくまた乗りたいと思う航空会社にできるよう頑張りたい。お客さま、社員など関係者みんながハッピーになるような会社を目指して、ベストを尽くしていきたい。

機動力の高い投資委員会
3号ファンドの設定を検討

──インテグラルの今後の展望はどうか。
佐山
 今の私はスカイマークに集中しているが、インテグラルとしては引き続きさまざまな案件を検討している。大体、年間80件ぐらいの案件があり、このうち2、3件に投資している。依頼の多くは多方面からの紹介案件だ。入札でなく相対の案件のご紹介が多いのは、我々のビジネスが信頼されたという面もあるが、他方では時間が取れず営業活動ができていない面もある。今後は我々の方から見込みのある企業にMBO(経営陣による買収)の提案をするなど、営業活動にもっと力を入れていかなければならない。

 一般にバイアウトファンドは、投資委員会という場でどこに投資するかなど、重要事項を決定するが、なかなか機動的に委員を集めることができず、スピーディーな投資判断が難しい。しかし、当社の投資委員会のメンバーは私を含めて創業の5名という少数体制になっている。いつでもすぐに投資委員会のメンバーがそろい、超特急案件でも迅速に対応できる。スカイマークの際も、早朝、深夜も含め毎日何度も投資委員会を開くことができたから、わずか5日後に民事再生手続開始の申し立てができた。この機動力の高さは他にはないだろう。

 2013年秋にスタートした442億円の2号ファンドも過半をすでに投資完了し、2016年早々にも3号ファンドの設定を検討している。さらにi-Engineのメンバーを投資対象企業に常駐させていることもあり、引き続き人材補強も進めていきたい。一層、優秀な人材を確保し、陣容を強化したうえで、今後も投資先を大切にする「日本型バイアウト」で、日本のバイアウト市場の活性化に貢献できるように社員一丸となって頑張っていきたいと思う。ぜひみなさまのご支援をお願いしたい。