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「債券代替」か「株式比率上げ」で対応

J-MONEY2013年秋号 注目記事

機関投資家のポートフォリオ戦略

金利上昇リスクには
「債券代替」か「株式比率上げ」で対応

「QE(量的緩和)3の縮小観測」や「債務上限引き上げ問題」など、機関投資家の運用環境が目まぐるしく変わっている。機関投資家はどのような動きに着目し、それに対する効果的な解決策は何か。関係者に話をうかがった。(工藤晋也)

緩和マネーが債券市場に 主要国国債は歴史的低金利

 2008年のリーマン・ショック後、これまでの常識が覆され、新たな定説がスタンダードになったことを意味する「ニューノーマル(新たな標準)」という言葉が広まった。定説というのは、言葉ほどには絶対的ではないのだろう。運用の世界でも、かつて定説だった国内外の株式や債券に分散投資するだけの手法に代わり、オルタナティブ投資と呼ばれるヘッジファンドやプライベート・エクイティなどをポートフォリオに加える手法が主流になっている。

 オルタナティブ投資に続く次のニューノーマルは何か――。機関投資家の考えを探るべく関係者に取材したところ、「金利上昇リスク」というキーワードが最も多く挙がった。

 リーマン・ショックなど発生確率は低いものの、一度起きると多大な損失をもたらすテールイベントの頻発やマーケット環境の悪化により、安定的なインカムに期待できる債券をポートフォリオの中核にする動きが広がったものの、各国の緩和政策による緩和マネーが債券市場に流れ込んだことで主要先進国国債の金利が歴史的な水準にまで低下。いつ金利上昇に転じてもおかしくない状況が続いているため、多くの機関投資家が金利上昇リスクを危惧している。

債券代替の「バンクローン」 リスクオンへの転換も目立つ

 東京海上アセットマネジメント投信のエンゲージメント運用部長の小林研氏は、金利上昇リスクが最も気にされている理由として「米国の金利動向」を挙げる。

 FRB(米連邦準備理事会)のバーナンキ議長が2013年5月にQE3縮小の可能性に言及したことで米国の長期金利が上昇したことから、「米国の金利が上がっているのに日本の金利だけ下がることは考えられない。また米国の金利と日本株は相関性が極めて高い。9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)ではQE3の減額を見送ったが、今後もQE3縮小の実施による米国金利の動向には注意が必要だ」と指摘する。

 同じく「機関投資家は金利上昇リスクを最も注視している」と話すのはBFCアセットマネジメント代表取締役社長、最高投資責任者の津森信良氏だ。

 バーナンキ発言による金利上昇でリスクが顕在化しつつあり、債券投資の見直しが図られている。「株式投資はボラティリティの高さが懸念されているため、債券代替としてバンクローンのような変動金利もの、金利・クレジットのロングショート戦略、さらに安定的な将来キャッシュフローが見込めそうなミドルリスク・ミドルリターンのメザニン債も注目度が高い」と解説する。

 リーマン・ショック後に各国が政策金利を抑えたことからヘッジコストが下がり、ヘッジ付き外国債券が人気を集めた。その後、欧州債務問題を受けて先進国国債にもクレジットリスクがあることが改めて認識され、先進国国債以外の債券としてエマージング債券やハイ・イールド債券がクローズアップされたが、マニュライフ・アセット・マネジメントのセールス・顧客サービス部長の平畠秀典氏も「今後はいずれの債券も金利上昇リスクに留意する必要がある」と警鐘を鳴らす。

 株式よりボラティリティが落ち着いており、安定的なインカムゲインが期待できるアセットクラスであるはずの債券の信頼が揺らいでいることを受け、アバディーン・グループの株式運用ヘッドを務めるヒュー・ヤング氏は、金利上昇リスクに対する懸念を発端としたグレートローテーションの動きが見られると打ち明ける。

 「2013年1月頃から“債券から株式へ” の流れが鮮明になっている。実際に債券の比率を減らし、株式の比率を増やす動きもある。債券から株式へのトレンド転換はまだ始まったばかりで、本格化するのはこれからだろう」

 東京海上アセットマネジメント投信のエンゲージメント運用部シニアファンドマネージャーの久保健一氏も債券から株式へのトレンド変化を感じている一人だ。「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は6月に基本ポートフォリオの変更を発表。国内債券の比率を減らし、国内外の株式の比率を増やすなど、徐々にだがグレートローテーションは起きている」

 2013年9月に来日したアクサ・インベストメント・マネージャーズ・パリでヘッド・オブ・グローバル・クレジットを務めるニコル・モントーヤ氏は欧州の機関投資家限定の動きながら、「リスクオンへの転換を図っている機関投資家が目立ち始めた。最近は株式や、ユーロ圏中心国よりリスクの高いスペインなどの周辺国の国債や社債に投資する機関投資家が増えている」と明かす。

ときどきの市場環境に応じて機動的に債券の中身を変更

 金利上昇リスクに対する解決策には、主に2通りの考え方がある。1つは債券というアセットクラスをポートフォリオの中核に置く戦略は変えず、前述した債券代替といわれるバンクローンなどに振り向ける方法と、もう1つは株式の投資比率を増す方法だ。

 このうち前者の方法として、マニュライフ・アセット・マネジメントでは「マルチ債券セクター戦略」を提案する。同社の平畠氏は「この戦略はそのときどきの市場環境に応じて債券セクターの“中身” の配分をベンチマークなどの基準に固定せず、柔軟に変更していくもので、先進国債券や新興国国債、ハイ・イールド債券、モーゲージ債など多様な債券を投資対象にする。『金利上昇リスク』や『QE3の縮小』といったイベントリスクに対する有力な手立てになるだろう」と力を込める。

 もう1つはボラティリティが低く、一定のリターンが得られる「キャリー・ロールダウン要因」を取り入れた日本債券ファンドの「アクティブ・コア」と「ストラテジック・アクティブ」だ。

 マニュライフ・アセット・マネジメント取締役 債券運用部長の津本啓介氏は「日銀が国債買い入れを増額してからイールドカーブのゆがみが大きくなっており、キャリー・ロールダウン要因の収益機会が高まっている。財政リスクも消費税率の引き上げや企業業績の改善による税収増で当面はそれほど顕在化しないと見る」と語る。

 対する後者の方法としては、単純に株式比率を引き上げるのではなく、成長性のある企業への集中投資をすすめるのが東京海上アセットマネジメント投信の小林氏だ。「『米国の長期金利動向』だけでなく、『新興国の景気』やシリア問題をはじめとした『地政学リスク』など、世界では不確実性が高まっている。ポートフォリオの株式比率を引き上げるにしても、パッシブファンドなど市場全体に投資するのではなく、地政学リスクなどの外部要因に振り回されず、自助努力で成長できる企業に厳選投資していくべきだ」と主張する。

 東京海上アセットマネジメント投信の久保氏は「アベノミクスの成長戦略の1つとして『日本版スチュワートシップ・コード』に関する検討会が8月からスタートし、年内の取りまとめを目指している。これは長期的な企業価値の向上を目指し、機関投資家に投資先企業との対話(エンゲージメント)を促す取り組みで、海外では広く普及している考え方だ。当社では外部環境に過度に影響されない企業に集中投資し、エンゲージメントを通じて企業価値の向上をサポートしていくことでリターンを得る『日本株エンゲージメントファンド』の運用を行っている」と話す。

 金利上昇リスクの対策は債券に着目するコンセプトは継続しつつ、債券代替と呼ばれる投資対象で代用する方法と、株式投資を見直す方法に大別された。果たしてどの方法が次のニューノーマルになるのか。これからの動向に注視していきたい。