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J-MONEY2013年冬号 注目記事

ディール・オブ・ザ・イヤー2012

M&A、株式、債券、ストラクチャード・ファイナンス部門の受賞ディールを発表

J-MONEYでは、2012年のベストディールとして「ディール・オブ・ザ・イヤー」を決定した。金額規模や執行業務の鮮やかさ、資本市場に与えた影響、執行後のパフォーマンスといった点を基準に選ばれた各ベストディールを紹介する。 
(J-MONEY編集部 ※ディールロジックのデータをもとに編集部作成)

M&A部門

ベストM&Aディール(OUT-IN)
マイクロン・テクノロジーによるエルピーダメモリ買収

 コンピュータの記憶装置に使われる半導体であるDRAM。技術革新が急激に進むこの分野で業界再編を伴う画期的な案件となったのが、マイクロン・テクノロジーによるエルピーダメモリの買収だ。

 発表は2012年2月27日。マイクロンがスポンサーとなり、会社更生手続き中のエルピーダメモリを取得・支援することに合意した。総支援額は約25億ドルとなっており、内訳は、エルピーダメモリの発行済株式100%の取得対価としてスポンサー契約の実行時に支払われる現金が約7.5億ドル。残りの約17.5億ドルは、マイクロンの完全子会社となるエルピーダメモリが今後創出するキャッシュフローを原資として、2019年までに毎年分割で支払われることになっている。

 このスポンサー契約に関連してマイクロンは、パワーチップ・テクノロジー社との別途の合意により、パワーチップが保有するレックスチップ・エレクトロニクス社の株式を取得することも併せて発表した。エルピーダメモリの資産に含まれる株式も併せると、レックスチップの株式を約89%保有することになる。これによりマイクロンは、自前で事業拡大する場合の3分の1のコストで、グローバルの生産能力を約50%増強することに成功した。

 マイクロンはネットワーキングやサーバーといった企業向けのDRAMソリューションとフラッシュメモリー、エルピーダメモリは携帯電話やタブレットPC向けモバイルDRAMと、両社それぞれに異なる強みを持っていることもポイントとなっている。統合後は顧客に対して幅広い製品ポートフォリオを提案するなどのシナジー効果が期待できる。

 規模の拡大にとどまらず、今後、新たなソリューションを提案するなど、業界をリードするメモリー専門会社になっていく可能性が高いとして、ベストディールに選んだ。

ベストM&Aディール(IN-OUT)
ソフトバンクによるスプリント・ネクステル(Sprint Nextel)の買収

 日本企業によるIN-OUT型M&A市場は急拡大を続けている。ディールロジックによると、2012年のIN-OUT型M&A規模は12月14日時点で約1090億ドルに達し、2011年の836億ドルより30%近く増加している。ソフトバンクによる米携帯電話会社3位のスプリント・ネクステル(以下スプリント)買収は、日本企業が買収側のクロスボーダーM&Aとしては過去最大となった。顧客基盤は日米市場通じて最大級、売上高は世界3位という巨大通信会社が誕生した。

 今回の買収でソフトバンクは約201億ドル※を投じ、スプリントの株式の約70%を取得した。スプリントが保有する米国の顧客基盤と通信ネットワーク網を得たことで、アップルの世界最大顧客としての地位も獲得し、今後のスマートフォン戦略で優位に立つ。

 市場に衝撃を与えた今回の買収で株式交換などは行わず、転換社債の引き受けや合併子会社などを絡めた複雑な手法を用いた。最終的に、ソフトバンクはスプリントの転換社債31億ドルを引き受け、新株49億ドルに出資。スプリントの既存株主に対しては、買収の対価として約121億ドルを支払い、新スプリント株の約30%を交付した。スプリントはソフトバンクの米国持株会社唯一の子会社として存続する形だ。価格がつり上がるリスクのある競争入札ではなく、友好的な交渉によって妥当な価格でスプリント買収に成功した点も大きなポイントとなった。

 この買収は、スプリントにも利点がある。買収によって計80億ドルの豊富な資金を手に入れたため、財務基盤を強化し、モバイルネットワークの拡充など戦略的投資に取り組むことが可能となった。スプリントの純負債は、2012年第2四半期時には145億ドルに上っていたが、今回の買収終了時には65億ドルにまで減少している。

 日本企業のM&A市場での存在感を高め、世界の通信業界に新たな可能性を生み出した案件として、2012年のベストディールに選出した。

※有利子負債を除いた金額

ベストM&Aディール(IN-IN)
ソフトバンクによるイー・アクセスの買収

 2012年の日本企業によるM&Aの金額上位は、IN-OUT型が過半を占めるなか、IN-IN型で突出したのがソフトバンクによるイー・アクセスの買収だった。ソフトバンクは株式交換方式でイー・アクセスの全株式を取得し、2013年2月に完全子会社化する。ソフトバンクは株式交換に向けて新株発行を実施の予定。ディールバリューは3398億円となった。

 発表日(2012年10月1日)時点の株式交換比率は、イー・アクセスの普通株式の評価額を1株5万2000円とし、これを契約日前日までのソフトバンクの過去3カ月の株価(終値)の平均値3108円で除した16.74とした。その後、ソフトバンクの株式の評価を2012年10月17日から11月2日までの株価(終値)の平均値2589円に変更したため、11月2日付で交換比率を20.09に変更。

 移動体通信サービスのネットワークを相互活用することにより、両社のサービス拡充が期待できることや、基地局ロケーションの効率的運用が設備投資額と維持費の削減につながるなど、経営統合によるシナジー効果の大きさが金額規模とともに注目を集めた。買収後は携帯電話契約数で2位のKDDIを抜き、首位狙いも視野に入った。

株式部門

ベストIPOディール
日本航空によるグローバルIPO

 日本航空(JAL)のIPOは、2012年に実施されたエクイティファイナンスにおいて最大規模の約6633億円となった。IPOとしては、NTTドコモ(約2兆1300億円)、第一生命(約1兆100億円)に次ぐ規模。航空業界史上最大規模であったこともあり、投資家の注目度が高まっていた。上場廃止から約2年半での再上場である。

 JALは、稲盛和夫名誉会長が指揮する新経営陣のもとで改革を進めてきた。人員の整理解雇・年金債務の削減などにより、破綻の要因となった高コスト構造を劇的に改善し、バランスシートの健全化にも成功している。2012年3月期には過去最高益を計上した。

 上場にあたっては、日本、北米、欧州、アジアで幅広い投資家に対してミーティングを実施。高い収益力や強固な財務基盤をはじめ、羽田発着便の拡大、LCC(格安航空会社)の活用促進をアピールした。海外の大手優良機関投資家に長期保有を促すための措置もとられ、欧米の同業他社のバリュエーション水準を意識した想定売出価格と仮条件を設定するなどの対策が行われた。

 これらが功を奏し、大規模なオファリングかつ航空業界の業績のボラティリティリスクを指摘する見方もあったが、国内リテール投資家から1倍台半ば、国内機関投資家から3倍強、海外機関投資家から6倍強の需要を喚起した。最終的には日本株ファンドのほか、欧米のエアライン株式を保有する投資家や大手グローバルファンドなどの大口需要家が名を連ねた。

 上場日の値動きは、公開価格を20円(0.5%)上回る3810円で初値を付けたのちにボックス圏で推移し、終値3830円。売買代金は1555億円と東証一部で首位となった。

ベスト株式公募・売り出しディール
全日本空輸によるグローバルオファリング

 航空セクターでは2000年以降のグローバルで最大、アジアに限れば史上最大の公募増資である。

 全日本空輸(ANA)は、徹底してコストを削減することで経営基盤を強化し、2012年3月期に過去最高となる営業利益970億円を達成した。2014年には羽田空港・成田空港での発着枠拡大を控えており、LCC事業への参入や、省燃費機材などへの投資を予定。さらに、成長著しいアジア市場でのマルチブランド戦略も推進している。

 今回の公募増資は、過去6年間で3回目であったが、100回以上もミーティングを実施するなどのマーケティングにより、潤沢な需要が創出された。その結果、マーケティング期間中のTOPIXが-4.7%と軟調に推移したうえ、約30%もの希薄化を伴うオファリングだったにも関わらず、ANAの株価は、決議から条件決定日までの間で1円の下落にとどまる底堅さを見せた。

 株式市場に不透明感が漂うなか、航空セクター全体にインパクトを与えるディールだった。

ベスト株式リンク・ディール
ソニーのCB発行

 ソニーが2017年満期ユーロ円CB(5年債)を発行した。オファリング総額1500億円は、2012年、国内で最大規模のCBオファリングであり、自己株式取得以外を資金使途とする案件としてもリーマン・ショック後、最大規模となった。

 ソニーは2012年4月、新経営体制のもとコア事業の強化やテレビ事業の再建、新興国事業の拡大、経営のさらなる健全化などを目指した経営方針を発表。成長戦略の迅速かつ確実な遂行、堅実な財務戦略の強化を目的としてCBを発行した。

 調達資金の使途は、画像センサーの増産を目的とした設備投資(約600億円)、オリンパスへの出資(約500億円)、ソニー・コンピュータエンタテインメントによる米国Gaikai,Inc.の買収(約100億円)、社債の償還(約300億円)としている。

 2012年第2四半期の決算発表では、通期の黒字予想を維持するなど同業他社対比で底堅いとの声が一部投資家から聞かれた。その後、民生エレクトロニクスセクターのさらなる業績不透明感やシャープのCB価格の大幅下落を受けて、市場心理が停滞するなかでのCB発行となった。

 ソニーのCDS水準が450bp程度に達するなか、主幹事がディールサイズの75%について、クレジット部分を190bp相当で外したワラントを組成し、アセットスワップに代えて投資家に提供したことが好感され、円滑な販売を実現した。

債券部門

ベスト円建てディール
関西電力

 2012年7月に発行された関西電力の5年債は、停滞していた電力債復活に道筋をつけるディールとなった。同社の起債は1年7カ月ぶり。東日本大震災以降、電力各社の経営環境は不透明な情勢が続き、原発を保有しない沖縄電力、震災からの復旧費用が必要だった東北電力の2社を除く起債は途絶えていた。2012年は順風な起債環境ではなかったが、7月の5年債では投資家の意向を丁寧にヒアリングし、市場実勢に応じた機敏な対応を図ることで、1000億円の需要を集めた。

 電力債は震災前まで国内社債市場の約2割を占めた大型銘柄。高格付けに加えて、電力事業法によって一般担保(他の債権者よりも優先して債務が返済される制度)が保証されている点でも信頼性が高く、国債に次ぐ安全資産の一つと見なされてきた。株式市場が低調な状況で、投資マネーの受け皿として社債へのニーズは高く、電力債の再開は国内社債市場の大きな課題だった。

 起債に向け、同社や主幹事は具体的な起債プロセスに移る前からデットIRなどの機会を通じて投資家と対話を重ね、起債への需要を確認。大飯原発(福井県おおい町)3、4号機の再稼動が前進し、市場に安心感が広がった時期を捉え、7月上旬にマーケティングを開始した。

 年限は最も参加投資家層が厚い5年債を選択。一部の投資家の要望に応える形で、社債管理者の設置や、社債券面の金額を100万円に設定するなど、これまでになかった仕掛けを盛り込んだ。丁寧なマーケティングと条件設定が奏功し、1000億円超という幅広い需要の創出に成功した。

 対国債のスプレッドは+58bp~+70bpまでの幅広いレンジを設け、市場実勢と投資家の声の双方を織り込む形で+63bpに設定。後続案件のメルクマールとしての役割も果たした。関西電力の起債の後、東京電力を除く電力債は市場に復帰しつつある。ディールロジックによると、11月までに21案件6000億円(ホールセールのみ)の電力債が発行された。

ベスト・インターナショナル・ボンド・ディール
武田薬品工業

 2012年は日本企業によるドル建て社債の発行が活発化した年だった。日本企業の海外進出が加速化するにつれ、現地通貨建ての資金ニーズが高まっている。歴史的な水準にまでマイナス幅が拡大したドル円ベーシススワップ環境も、ドル建て債発行を後押しした。

 なかでも武田薬品工業のグローバル・ドル債には大手投資顧問やアジアの政府系機関などから強い需要が寄せられ、日本企業に対する期待の高さを市場に示す案件となった。

 同社にとって初のドル建て社債だったが、発行額は3年債、5年債の2本計30億ドルと、日本企業が一度に発行したドル建て社債としては過去最高規模を記録。発行に先駆けて、シンガポールや香港、北京、米国などの主要機関投資家向けにノンディール・ロードショーを実施。公表後はネットロードショーを実施し、広く投資家との接点を設けた。

 対米国債スプレッドを3年債+75bp程度、5年債+105bp程度でアナウンスを開始した。アジアや米国の大手機関投資家から1億ドルを超える大口需要が相次ぎ、最終的なオーダーブックは総額70億ドルに達した。おう盛な需要を背景に、最終的なスプレッドは3年債+68bp、5年債+100bpとタイトサイドにまとまった。今回の起債による調達資金は、2011年に実施したスイスの製薬企業、ナイコメッド社の買収に伴う短期借入金返却の一部に充当する予定だ。

ベスト・サムライ債・ディール
ラボバンク・ネダーランド

 オランダの協同組合金融機関であるラボバンクが、「3年固定」「3年変動」「5年固定」「5年変動」「10年固定」の5本のサムライ債総額1618億円を起債した。

 本件は2012年のサムライ債市場における最高発行額を記録しただけでなく、ラボバンクによるサムライ債としては、2008年6月のデビュー債1603億円を超える最大の発行額となった。ラボバンクに対する国内投資家の認知度と高い信用力により、マーケティングの開始と同時に投資家から旺盛な需要が寄せられた。なかでも643億円の「5年固定利付債」は、全業態の投資家から需要が確認された全員参加型の案件となった。

ストラクチャード・ファイナンス部門

ベスト・ストラクチャード・プロダクト
明治安田生命

 2012年の証券化市場は、長引く欧州債務問題や世界主要国の相次ぐ利下げなどが影響し、金利は低下基調にあった。大型案件を消化できたのは、投資家に対する丁寧なマーケティングの結実といえるだろう。今回ベスト・ディールに選出した明治安田生命の基金債も、地方の個人投資家まで含めた幅広い投資家との対話が、1000億円の大型起債成功に結びついた。

 明治安田生命は2011年、機関投資家向けの基金債500億円で証券化市場にデビュー。2012年は「投資家基盤の強化」を目標に掲げ、前回需要のあった機関投資家に加えて、新たに個人投資家にも募集を拡大し、需要の創出に尽力した。リテール債、ホール債を合わせた発行総額は1000億円と、前年から倍増。基金債マーケットの厚みを増し、市場活性化の基礎を築くディールと評価できる。