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J-MONEY2012年冬号 注目記事

ディール・オブ・ザ・イヤー2011

M&A、株式、債券、ストラクチャード・ファイナンス部門の受賞ディールを発表

2011年のディールからJ -MONEYがベストディールを決定する「ディール・オブ・ザ・イヤー」。受賞対象ディールは、金額規模や執行業務の鮮やかさ、資本市場に与えた影響、執行後のパフォーマンスといった点を基準に選考した。(J-MONEY編集部 ※ディールロジックのデータをもとに編集部作成)

M&A部門

ベストM&Aディール(OUT-IN)
テバファーマスーティカル・インダストリーズによる大洋薬品工業の買収

 欧州危機の深刻化や長期化の懸念などから、海外の事業会社が日本企業を買収する動きは2010年に引き続きあまり活発ではなかった。このような時期に遂行されたM&Aは、将来を見据えた明確な事業戦略に基づいた案件といえるだろう。

 その象徴が、テバファーマスーティカル・インダストリーズによる大洋薬品工業の買収である。2011年5月に、非上場企業である大洋薬品工業の発行済株式の57%を4億6000万ドルで取得することで合意。同7月には発行済株式の事実上100%を取得した。

 現在の医療・製薬業界は、世界レベルのパラダイムシフトの真っただ中にある。アジアをはじめとした新興国においては経済成長による医療支出の増加、一方の先進国では財政悪化による医療費削減が急務の課題として浮上している。この双方のニーズに対する“処方せん”として注目を集めているのが、ジェネリック医薬品(先発医薬品の特許満了後に、同じ成分・効能として製造・販売される安価な医薬品)だ。

 テバファーマスーティカル・インダストリーズはイスラエルが本社の世界最大のジェネリック医薬品企業で、1450以上の成分からなる製品ポートフォリオを持ち、約60カ国に拠点を有している。世界各地でM&Aを繰り返して経営規模を拡大しており、新薬ビジネスにも乗り出した。被買収側の大洋薬品工業は、愛知県に本社を置く国内第3位のジェネリック医薬品企業で、主要生産拠点である岐阜県の高山工場は注射剤の高い生産能力で知られている。

 日本のジェネリック医薬品の数量シェアは2割程度。厚生労働省では患者負担の軽減、医療保険財政の改善のため、2012年度までに同シェアを3割以上にする目標を掲げている。欧米主要国の市場シェアが6~ 7割台であることを踏まえると、日本市場のポテンシャルは大きい。医療・製薬業界のグローバルトレンドを体現し、かつ国内業界へのインパクトが強かったとして、ベストディールに選んだ。

ベストM&Aディール(IN-OUT)
武田薬品工業によるナイコメッド(Nycomed A/S)社の買収

 長らく続く円高を背景に、2011年の日本企業の海外M&Aは急増した。1年間の買収金額は857億ドル、件数は676件となり、過去最高を記録している。

 2011年最大のIN-OUT案件で、史上2番目のビッグディールとなったのが、武田薬品工業によるスイス製薬大手ナイコメッド社の買収(米国皮膚薬事業を除く)だ。買収金額は日本円で約1兆650億円となり、うち約5000億円を手元資金で賄った。

 買収の意義は、欧州および新興国の販路拡大にある。このM&Aにより武田薬品工業の販路は28カ国から70カ国以上になった。欧州での売上高は29位から18位にBRICsでは14位に、全世界では16位から12位に浮上する。

 同社の2010年の地域別シェアでは、アジア/エマージングはわずか3%に過ぎないが、買収により2015年に21%へ上昇する見込みだ。今後、高い成長が期待できる新興国市場の取り込みを行い、日本や米国に偏る売上構成を大きく転換する。

 しかし本買収案件のために営業利益の下方修正を余儀なくされた。ナイコメッド社の営業利益でプラス120億円になるが、無形資産やのれんの償却でマイナス200億円、在庫の時価評価でマイナス570億円となり、合計で650億円のマイナスだ。2011年11月には一時1997年6月以来の安値となる3020円まで株が売られる場面もあった。

 ただし買収による利益の下振れは織り込み済みで売られ過ぎとの見方もある。2011年12月26日時点では3300円台まで株価は持ち直している。

 武田薬品工業では、ナイコメッド社の年間売上高28億ユーロ(2010年実績)が加わり、2013年度には売上高が30%増、営業利益が40%増になると想定している。今後、重複している拠点の整理が進めば、シナジー効果が発揮できるだろう。日本企業がグローバル企業へと脱皮し、長期的な成長が期待できる布石を打ったディールではないか。

ベストM&Aディール(IN-IN)
新日本製鉄と住友金属工業の経営統合

 かつて国内M&A案件の主役を務めていたIN-IN。近年は景気の失速によりその座を受け渡したものの、グローバル化の進展を背景に国内トップクラスの企業が手を結び、国際競争力の向上を目指すケースが増えている。

 2011年も同業種同士の大型M&Aが行われ、そのなかで最もインパクトが強かったのが鉄鋼最大手の新日鉄と同3位の住友金属工業の経営統合だ。国内非金融分野としては過去最大規模となる。新日鉄を存続会社として新たな商号を「新日鉄住金」と変更し、合併比率は新日鉄の1に対して、住友金属は0.735となった。

 この経営統合により、新会社の売上高は世界第2位、粗鋼生産量では世界第3位へ浮上。世界トップクラスのグローバル鉄鋼メーカーとしてアルセロール・ミタルや韓国ポスコなどのグローバル企業と対等に渡り合える体制を整えた。

 懸念材料だった公正取引委員会の合併審査も、審査期間の短縮化や判断基準の柔軟化を求める経済界のニーズに応える形で、わずか2カ月間で承認という異例の早期決着となった。

株式部門

ベストIPOディール
ネクソン

 日経平均株価が8200円台を割り込むなど、危機感が漂うマーケットにあって、活気を見せたのがIPO(新規株式公開)市場だ。東日本大震災後は一時的に上場を見送る動きが出たものの年間を通じて活発で、前年比14社増の36社に達した。

 なかでも2011年12月14日に東証1部に上場した韓国系オンラインゲーム大手、ネクソンのIPOは市場関係者の耳目を集めた。公募・売り出し額は約900億円と、2010年の大塚ホールディングスに次ぐ大型案件。2011年最大のディールとして注目を集めた。日本のインターネット業界でみても、過去最大のIPO案件となった。

 オンラインゲーム産業は、近年目覚しい成長を遂げている。日本勢ではソーシャル・ゲーム大手のグリーやDeNAが伸びている。今回上場したネクソンは、アジアを中心に世界104カ国で事業展開するオンラインゲームのグローバル・リーダーの1つ。韓国や日本、北米で人気のロールプレイングゲーム「メイプルストーリー」など、優良タイトルを開発した実績を有する。

 上場への期待は高く、欧州債務危機を背景にした不安定な市場環境にあっても、12月14日の上場では初値が公募価格(1300円)から0.5%高い1307 円をつける堅調な滑り出しを切った。ジョイント・グローバル・コーディネーター3社のもと、海外では公募以外に売り出しを併用。オンラインゲーム産業への成長期待、グローバル展開するネクソンの将来性、そして主幹事による市場へのアプローチが奏功した結果であろう。

 韓国創業のグローバル企業が東証で上場した点でも意義深い案件だ。上場からの期間は短いが、復調の兆しを見せている本邦IPO市場の活性化に資する案件としてベストディールに選んだ。

ベスト株式公募・売り出しディール
ユナイテッド・アーバン投資法人

 J-REIT案件としては2008年以降最大規模で、約3年7カ月ぶりのグローバル・オファリング案件がユナイテッド・アーバン投資法人である。

 ユナイテッド・アーバン投資法人は対象不動産の用途・地域を分散した総合型J-REITで、メインスポンサーは丸紅。2010年12月に日本コマーシャル投資法人(NCI)と合併し、資産規模で国内最大級の総合型REITとなった。

 本案件は、NCIとの合併に伴う負ののれん(約122億円=見込み)を活用することで、公募・売り出しによる1口あたりの分配金の希薄化を抑える方針をアピールした。調達資金は物件の新規取得と借入金返済に充当。NCIとの合併により56.3%まで上昇したLTV(有利子負債比率)を約45%に引き下げる予定など、財務体質の強化を図る。

 本グローバル・オファリングは2011年3月1日に発表したものの、プライシング直前に東日本大震災が発生し同15日に中止。その後ほぼ同様の内容で実施した。

 国内のリテールおよび機関投資家から2倍程度、海外機関投資家から8倍強の旺盛な需要を集めたという。前述の案件スキームにおける工夫とともに、大震災による中止の判断と震災後の開示姿勢を含めたマネジメント力の高さが国内外で評価を得た点を踏まえ、本案件をベストディールとした。

ベスト株式リンク・ディール
積水ハウスのCB発行

 2011年は株式市場の低迷に伴い、新株発行を伴う資金調達が急減した。市場環境が良くないなかで、東日本大震災以降、海外市場で日本株CBを発行したのが積水ハウスだ。復興の先駆けとなり、2011年で最大規模の案件となった。

 ユーロ円建てCBで500億円を発行。資金使途は約300億円を中国での宅地開発事業に、約100億円を国内外の工場建設などの設備投資に、残り約100億円を長期借入金の返済原資とする予定だ。

 希薄化懸念から株が売り込まれる場面もあったが、2011年6月16日の発行決議時点の発行済株式総数を前提とした潜在希薄化率は6.9%と、そう高くはない。ゼロクーポン、5年債、3年後のプット可能条項、一般的なコール条件の付与に加え、4年間の転換制限を設定するなど、希薄化抑制に努めた商品設計になっている。

 発行時期が難しい環境下にあったが、CB投資家をはじめ、ソブリン・ウエルス・ファンド(政府系ファンド)ほか、幅広い投資家需要を喚起した。発行総額の2倍近い需要を伴い、条件決定された。

 積水ハウスは2010年中期経営計画で国際事業の展開を掲げており、本ディールの資金使途にもなっている中国の開発事業もその一環。蘇州市および瀋陽市で大型都市開発を計画しており、全体で7000戸、売上規模2000億円程度を見込んでいる。

債券部門

ベスト円建てディール
パナソニック

 景気の減速によって魅力が低下していた株式市場に代わり、投資マネーの受け皿となっていた普通社債市場。日本銀行の社債買い入れや低金利が社債市場の活性化を後押しした。ところが、東日本を中心に大きな傷跡を残した大震災によって状況は一変する。

 一時は起債の取りやめや延期が相次ぎ、国債利回りに対するスプレッドは急拡大するなど、東日本大震災は普通社債市場にも打撃を与えた。その後、市場は落ち着きを取り戻し、現在は国債利回りに対するスプレッドも安定推移している。

 激動した2011年のなかで最もクローズアップされた案件がパナソニックだ。パナソニック電工や三洋電機の完全子会社化に伴うTOBなどによって増えた負債の長短バランスを是正し、財務基盤の安定化を目的に起債。2009年の4000億円を上回る5000億円と、事業債としては過去最大の起債という金額に加えて、社債では珍しい2年債や7年債にも挑んでいる。

 社債の目安とされる国債利回りに対するスプレッドは、2年債は0.14%、5年債は0.19%、7年債は0.22%。丁寧な起債運営を展開した結果、幅広い投資家層からの需要喚起に成功し、5000億円の発行額の1.4倍に相当する7000億円という大幅な超過需要を創出した。

ベスト・インターナショナル・ボンド・ディール
日本政策金融公庫(国際協力銀行)

 国際協力銀行は、2011年に5年債のグローバル・ドル債を計3回発行した。発行総額は約55億ドルに上った。

 1月に発行された5年債15億ドル分は、欧州国債の相次ぐ格下げなどソブリンリスクへの懸念が高まる状況での発行にもかかわらず、アジアの中央銀行をはじめ幅広い投資家の需要を集めた。起債ラッシュの落ち着く1月第2週のタイミングで発表した点も市場に好感された。

 さらに5月に発行した5年債は、3月の東日本大震災後初めての政府保証外債として注目を集めた。発行額は20億ドルと、5年ドル建て政府保証外債としては過去最大。東日本大震災や、日本のソブリン債の格下げ・格付け見通しの変更を受けて、海外投資家が日本クレジットに対して慎重姿勢を示すなか、週初に起債アナウンスを行うなど投資家の関心を高めるマーケティング戦略を実施。当初は4月の起債が検討されていたが、欧州債務危機などで市場の不透明感が増している環境を踏まえて発行時期を見直した。

 最終的に、イースターやゴールデンウィーク明けの起債に踏み切り、100件を超える投資家から50億ドル程度の需要を集めることに成功した。既存のアジア主要中央銀行や公的機関に加え、欧州や東アジアの需要も呼び込んだ。

 7月にも、5年債20億ドルという大規模な起債を実現。MS(ミッドスプレッド)+34bpと5月発行時のMS + 45bpよりも11bpタイトな条件設定に成功。中東、欧州の中央銀行から多くの需要を獲得し、投資家層の開拓につなげた。

ベスト・サムライ債・ディール
トルコ共和国

 欧州債務危機の波及が懸念されることから、欧州勢のサムライ債発行は急減している。2011年11月には、ノルウェー政府がノルウェー輸出金融公社の事業縮小計画を発表。同社債の格付けを一気に7段階引き下げる格付機関もあり、債券価格が急落した。デフォルト懸念までささやかれ始め、市場関係者に衝撃が走った。

 厳しい情勢下で、2011年最大の1800億円の起債をしたのがトルコ共和国だ。国際協力銀行の保証付きで発行金利は1.87%。今回の起債は10年ぶりの発行で、発行体にとっては米ドル以外で過去最大の外債となった。

 トルコは2011年12月期までの直近7四半期で平均8%の経済成長を遂げるなど、新興国において注目度が高い国の1つ。以前問題となっていたインフレ率は数%水準と落ち着いてきている。発行時期が東日本大震災直後の不安定な時期だったにもかかわらず、期待の新興国ゆえ円滑に資金を集めた。

ストラクチャード・ファイナンス部門

ベスト・ストラクチャード・プロダクト
住宅金融支援機構

 2011年の証券化市場はソフトバンク劣後保証付SFJ優先出資証券や、明治安田生命公募特定社債などの大型案件があったものの、MBS(資産担保証券)のみならず、国債を除いた公募債として過去最大規模の案件となった住宅金融支援機構のRMBS(住宅ローン担保証券)がベスト・ストラクチャード・プロダクトに輝いた。

 住宅金融支援機構のRMBSは、長期固定金利の住宅ローン「フラット35」を証券化したもの。国の金利優遇幅拡大措置による住宅ローン債権買取額の増加に伴って発行額が拡大し、2010年度の発行額は約1.8兆円に達した。

 5月発行の第48回債は、東日本大震災の影響で減額して起債した第47回債の未発行分(約1600億円)を上乗せした。国内公募債史上最大の5143億円という大型起債となった。中央・地方双方の投資家が参加し、5000億円超の大型案件でありながら、大幅な超過需要を集めて円滑な起債に成功した同案件。証券化市場の健在ぶりや投資家需要の高さをマーケットに広く示す象徴的なディールだった。