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ショックに強い組み合わせは?

ユーロマネー日本語版2011年冬号 注目記事

機関投資家のポートフォリオ戦略

見直されるオルタナティブ投資
ショックに強い組み合わせは?

リーマン・ショックは機関投資家のポートフォリオ戦略を大きく狂わせた。伝統的資産だけでなく、分散効果の機能として期待されたオルタナティブ投資までもがリカップリング(再連動)し、その役割を果たせなかった。しかし今、オルタナティブ投資を見直す動きが広がってきている。投資対象や運用方法が多様化し、機関投資家の選択肢は増えている。
新たなショックが起きるとの予測もあるなか、果たして機関投資家はどのようにポートフォリオ戦略を考えるべきなのか。オルタナティブ投資をどう活用すべきか。関係者に話を聞いた。 (笠原崇寛)

流動性が高いものほど危機ではリスクになる

金融危機後、世界各国の度重なるマネー供給策、特に米国のQE2 (量的金融緩和第2弾)により、市場に過剰流動性が生まれ、新たなバブルとその崩壊が起きるのではないかと懸念する声もある。2007年サブプライム危機、2008年リーマン・ショック、2010年ギリシャ危機など、何度となくショックが起き、その度に株価が下落。今後、新たなショックがいつ起きてもおかしくはない状況において、機関投資家が何に投資すべきなのかは悩ましい問題だ。

リーマン・ショックで問題となったのは流動性が枯渇するリスクだ。しかし「流動性が高いものにもリスクがある」と、野村證券フィデューシャリー・サービス研究センターのフィデューシャリー・マネジメント部長、荻島誠治氏は語る。

 「経済がノーマルな状況での流動性リスクとは、流通市場が発達しておらず、発行規模も少ないアセットクラス固有の流動性枯渇リスクのことを指す。しかし経済が危機的な状況の際には、逆に流動性が高いものがリスクになる。なぜなら危機に対応するため、世界中の投資家がすぐにキャッシュ化できる流動性が高いものから売っていくからだ。このため大型株などは危機の際に暴落リスクを抱え込んでいることになる」

また荻島氏は、市場のグローバル化により、今後もバブルが生成されやすく、かつ崩壊しやすい市場環境にあると指摘する。「人気のあるアセットクラスや銘柄が一気に高騰し、誰かが売りに回った途端、一斉に売り浴びせるといったハーディング現象(群集行動)が近年、多くなっている。ファンダメンタルズとは関係のない、パニック的な市場の値動きが起きやすい」

危機が起きやすい環境で、機関投資家はどのようにポートフォリオ戦略を考えるべきなのか。荻島氏は、「一つは、ショックが起きた際にもリスクを軽減できるポートフォリオを構築すること。ただし、リターンが稼ぎにくく、しかもヘッジコストがかかる、ノーマルな経済状況が続けばパフォーマンスがマイナスに作用する可能性もあり、デメリットも多い。もう一つは、ショックが起きたら下がらないリスク資産はないと考え、ショック後も保有し続けていればいずれ上がるのだから、できるだけリスク資産の分散を図ったポートフォリオを目指す方法。後者の方がより現実的な対応ではないか。

リスク許容度がそれなりにあり、長期投資が基本の投資家なら、ショックの際にリターンを上げられるアセットクラスを取り入れることばかりに気を取られてはいけない」と分析する。

ポートフォリオ戦略で重要になるのは、ショック時にも負けが小さく、ショック後にリカバリーが早いアセットクラスを取り入れたポートフォリオを構築することにありそうだ。

日本株式と米ドルだけ見るから悲観論になる

ただ日本の投資家の心情は未だ金融危機の後遺症を引きずっており、何も動けない状況が続いている。「日経平均株価が1万5000円ぐらいまで回復しないと株式には投資できない」といった投資家の声もあるほどだ。金融危機後のヒーリング(治癒)モードな投資家は、リターンを得ること以上に、リスクを抑えることを意識している。十分なリターンを得られないことはわかっていながら、株式のウエイトを下げて債券の割合を増やしている。オルタナティブ投資への懐疑も根強いものがある。

 「今の機関投資家の状態を一言で表すなら“市場への信頼喪失”だ」。JPモルガン・アセット・マネジメントの投資戦略ソリューション室長、鈴木英典氏はこう表現する。「リーマン・ショックは今までの枠組みをぶち壊してしまった。このため機関投資家は、先進国株式からのリターン獲得を信頼できない。アルファを信頼できない。キャピタルゲインを信頼できない。ヘッジファンドを信頼できない。不動産を信頼できない……といった心境に陥ってしまっている」と鈴木氏は分析する。

日本の機関投資家に漂う悲観論、閉塞感の原因について、野村證券の荻島氏は、「日本人は日本株式とドル円レートばかり見ているから、極端な悲観論になりやすい。例えば2010年第2四半期のアセットクラス別インデックス・リターンを見ればわかるが、日本株式と米ドル以外はすべてプラスに転じている。ショック後からの回復が目覚しいアセットクラスは多く、ポートフォリオを見直す絶好の時期ではないか」と指摘する。

危機から2年以上が過ぎ、市場は最悪期を脱しており、そろそろリスク資産に資金を振り向けるべきではないかと考えている投資家も多い。JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木氏は、「伝統的4資産(日本株式・海外株式・日本債券・海外債券)に投資していればいいという時代は終わり、多様なオルタナティブ商品をいかに組み合わせるかが、ショックに強いポートフォリオの構築につながると思う。投資家のニーズに応えるべく、運用会社はさまざまなオルタナティブ商品を提供し始めている。今後はますますポートフォリオの分散化・細分化が進むだろう。投資家もコンサルタント会社もオルタナティブ商品の選択肢が増えた分、それについて研究する必要がある」と話す。

さらに鈴木氏は、「過去に痛い目にあったアセットクラスだからといって、すべての商品が悪いわけではないし、投資する意義がなくなったわけでもない。リーマン・ショック、金融危機という大きなショックを受けたことによって、過熱感のあった市場が逆に一旦過度な割安状態に置かれ、その後ファンダメンタルズを反映する形で正常な価格形成がなされている市場もある。こうした市場は絶好の投資機会を投資家に提供している可能性があり、条件反射で特定のアセットクラスに拒否反応を示さず、商品の中身をしっかり確認して投資判断すべきだ」とアドバイスする。

今、どんなアセットクラスが注目されているのか。JPモルガン・アセット・マネジメントの常務執行役員、三浦英二氏はこう分析する。「第一に、オルタナティブ投資。インフラ投資、プライベート・エクイティ(PE)、ローン商品、船舶など、関心は多様化している。第二に、債券でリターンを稼げるもの。ハイイールド債券やエマージング債券など、インカムゲインを稼げるものが人気が高い。第三に、エマージング株式。これまでの日本株式、海外株式というアセットクラス分類を見直し、日本を含むグローバル株式として捉えて、エマージング株式を増やす動きが顕著になっている」

今まで日本の機関投資家が積極的に取り入れてこなかった新たなアセットクラスが注目を集めているといえよう。

機関投資家の関心高まるインフラ投資、CATボンド

これまで投資家が積極的にポートフォリオに組み込んでおらず、かつ、伝統的資産との相関性が低いものとして注目を集めているのが、インフラ投資とCATボンドだ。どちらの商品も提供しているアクサ・ローゼンバーグ証券投信投資顧問の証券営業部部長、大津博道氏はこのように説明する。「1年前はインフラ投資のニーズは少なかったが、この半年間、急激に投資家の関心が高まっている。株式市場の値動きが荒く、市場の動きが見通せないなか、実物投資で相関性が低いことが理由ではないか」

 やや過熱したブームになっていることもあり、各運用会社がインフラ投資商品に注力している。「ただしインフラ投資は10年以上のものが多く、流動性はないため、長期投資ができない投資家には向かない。またインフラ投資がすべて安定的とは限らないので注意が必要だ。投資資産、投資地域、運用者がどこで利益を得ようとしているのか、内容を見極めたい。インフラ投資のなかにはPE投資的発想で、長期の値上がり益を狙うものもある」と大津氏は話す。

アクサ・ローゼンバーグ証券投信投資顧問の関連会社であるアクサ・プライベート・エクイティ社では、2005年からインフラ投資商品を提供。現在3号ファンドの募集を行っているが、投資地域はヨーロッパ先進国に限定している。「エマージングは規制が変わるので恐くて手が出せない。また我々はキャピタルゲインを狙うのではなく、安定的なインカムゲインを確保のために投資を行っているので、安定的なキャッシュフローが見込みやすい先進国に地域を絞っている」(大津氏)

インフラ投資にはデータやトラックレコードが少ないため、投資判断が難しい対象ではあるものの、伝統的資産との相関性の低さから、今後、ポートフォリオに取り入れていく投資家が増えていきそうだ。

もう1つ、相関性が低く、安定的なインカムゲインが狙える商品として注目されているのがCATボンドだ。CATボンドとは、損害保険会社が大規模な自然災害の際、補償による損失発生を避けるために売り出す債券のこと。自然災害が発生した場合には元本が減少する仕組みとなっている。大津氏によると、「市場規模はまだ3兆円程度だが、最近、機関投資家の問い合わせが増えている。自然災害が起こればリスクになるという商品設計のわかりやすさと、株式市場との相関性のなさが受けている理由ではないか」と解説する。

ヘッジファンド投資の意義はダウンサイドリスク軽減にあり

金融危機で分散効果が発揮できず、ややもすると悪玉にされたヘッジファンドだが、最近、見直し機運が高まっている。金融危機後の運用状況は、株式に比べてパフォーマンスも良く、相関性も低いことから、再び資金が集まり始めている。

 ゲートキーパーとしてさまざまなヘッジファンドを紹介しているBFCアセットマネジメントの代表取締役会長、川名教之氏は、「金融危機後、株は緩やかに回復していたが、2010年5月のギリシャ危機で再び株は下落した。市場ものだけではダメだという投資家の意識が急速に高まっていると感じる。市場に連動するベータものだけでは、変動リスクを抱え込むことになりリスクが高い。ベータだけでなく、アルファの必要性が高まるなか、ヘッジファンドをポートフォリオに取り入れる意義が見直されている。確かに金融危機時には株との相関が高まり、分散効果の機能を十分に果たせなかった。ただ、ショックが起きた時のダウンサイドリスクの軽減効果や、ショック後のリカバリーの早さを考えれば、ヘッジファンドをポートフォリオに組み込む意義は大きい」と解説する。

BFCアセットマネジメントの代表取締役専務・最高投資責任者、津森信良氏は、「先進国の成長の限界が明らかになり、伝統的資産のアロケーションではリスクに見合ったリターンがとれなくなっていることから、ヘッジファンドが再び注目を集めている。リーマン・ショック前はヘッジファンドが多すぎたが、ショックによって淘汰が進み、健全かつ質の高いもののみが生き残った。流動性や透明性を気に掛けるヘッジファンドも多くなり、以前よりもディスクロージャー面では改善され、投資がしやすいのではないか。ヘッジファンドは株式や債券の代替ではなく第5の独立したアセットクラスとして考えるべきだ」と分析する。

ヘッジファンドの選び方について、川名氏は「コンサルティングファームのなかにはヘッジファンドの特性をあまり理解せず、投資家のニーズとはかけ離れたものを紹介しているケースも見られる。投資家自身が投資の中身や運用方法がわからないものには投資すべきではない」とアドバイスする。

機動的なポートフォリオ構築を実現するETFの活用

これまで日本の機関投資家のポートフォリオにおいてはファンドによる運用の外部委託が主な割合を占めてきた。しかし市場環境がめまぐるしく変わるなか、ポートフォリオをその都度、機動的に変えることができるETFへの関心が高まりつつある。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの証券営業部長、中岡寛晶氏は、「ETFの先進国アメリカでは、個人投資家、機関投資家を問わずETFの利用がかなり進んでいるが、日本でも徐々に機関投資家によるETFの活用が始まりつつある。多くのETFは、金融危機後、特に機関投資家から要求の高まっている流動性と透明性を満たしており、そのシンプルな商品性が評価されている。ETFは、投資家自身が機動的にポートフォリオを変えることのできる、運用効率向上のための道具」と説明する。

 同社の運営する金ETF「SPDRゴールド・シェア」に投資家の資金が集まっているが、金ETFをポートフォリオに組み込む意義とは何か。

「金投資を行うにあたり、キャピタルゲインを狙う方法もあるが、他の資産との相関性の低さに注目し、ポートフォリオ全体を安定化させる目的で取り入れることをお勧めしている。また、来るべきインフレに備えるという意味でも金投資は有効な手段の一つ。最近の金価格の上昇は、金自体の価格上昇というよりは、各国の量的緩和政策や通貨安競争により通貨価値が下がっていることが背景にあると見る向きが多い。特にポートフォリオに債券の占める割合の高い日本の機関投資家は、インフレへの問題意識を強く感じており、景気変動に関わらず、現在価値の貯蔵手段として金を捉える投資家は少なくない。金ETFの活用により、有価証券の形で実物資産を効率的に取引できる、この利便性が世界の投資家から『SPDRゴールド・シェア』が評価される理由だと思う」

「また、金はコモディティというくくり方をされるのが一般的だが、その価格形成要因は他のコモディティとは異なる点が多い。独自のアセットクラスとして、一定程度、金をポートフォリオに組み込む余地は十分ある」と中岡氏は話す。

透明性、流動性、コスト競争力を兼ね備えた投資可能インデックス

リターンも当然求めたい。しかしできるだけリスクを抑えつつ、ポートフォリオ全体でのパフォーマンスを向上させたい。それから流動性も重要だ。こうした投資家ニーズに応える商品として注目されているのがインデックスだ。バークレイズ・キャピタル証券では、株式、コモディティ、為替、金利、インフレ、クレジット、新興市場など、アセットクラス別にさまざまな投資可能インデックスを提供している。

バークレイズ・キャピタル証券インデックス・ポートフォリオ・リスク・ソリューション部門の多湖理氏は、インデックス投資の意義をこのように説明する。「ヘッジファンドが行ってきた運用手法の多くはインデックスでも複製可能だ。インデックス投資の優位性は、(1)あらかじめ定めたインデックス・ルールに基づいて運用を行うので透明性が高い、(2)先物など流動性の高い資産に投資するため、インデックス自体も中途解約や積み増しに柔軟に対応できる、(3)流動性の高い資産にシステマティック投資するため、一般に投資にかかる費用が少なくて済むことなどが挙げられる」

ヘッジファンドの大きな問題点は、透明性、流動性がないことだった。ヘッジファンドのデメリットを投資可能インデックスで置き換えれば、ヘッジファンド的なアセットクラスをポートフォリオに組み入れられる可能性もある。

機関投資家から特に問い合わせが多いのは、わかりやすい内容のインデックス商品だという。金利では、複数の通貨の金利先物を用い、市場シグナルを考慮してターム・プレミアムを獲得する『Global Target Exceed』。コモディティでは、主要な商品先物で限月間のロングとショートを組み合わせることで安定的な収益獲得をねらう『ComBATS』。為替では、為替先物予約を使って主な資源国通貨のバスケットについてエクスポージャーを保有した時のパフォーマンスを示す『CPCI』などが人気だという。

 「投資可能インデックスを活用することで、これまで投資が困難であった資産クラスを投資対象とすることが可能となる。さらに既存ポートフォリオと相関の小さいインデックスを組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを低減し、リスクリターンを向上させることが可能である。単体での提供だけでなく、機関投資家の既存ポートフォリオと投資制約を考慮したうえで、どのような商品を追加することが有効かをアドバイスするとともに、複数の投資可能インデックスをパッケージにした商品の提供もしていきたい」と多湖氏は話す。

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金融危機以降、オルタナティブ投資を中心に、運用商品や運用手法のラインナップが多様化している。機関投資家にとって選択肢が増えたことはうれしい半面、自身のニーズに合った商品を選ぶのは大変な作業となっている。

運用会社各社から異口同音に聞かれた言葉は、「プロダクトを売る時代は終わった。機関投資家のニーズに合ったソリューションを提供しなければならない」ということだった。さらなる危機があるかどうかはともかく、今のままのポートフォリオではいけないと危機意識を持つ投資家は多い。トレンドや過去のパフォーマンスに捉われず、フラットな視線でアセットクラスを見直すことが、新たな危機が起きた際にもショックを和らげることができるポートフォリオの構築につながるのではないだろうか。